『幸せの村』
小さな村がありました。
それはそれは小さな村でした。
みんながみんな優しくて、
みんながみんな幸せでした。
ある日、ひとりの旅人が
ふらりと迷い込んできました。
たいそうお腹をすかせて、
たいそう疲れた様子でした。
「久しぶりのお客様だ!」
村のみんなはたいそう喜びました。
さっそく宴の準備を始めました。
旅人がぐっすり眠っている間、
出来る限りのおもてなしを用意しました。
米屋は一番出来のいい米を、
酒屋は一番値段の張る酒を。
みんながみんなの一番を、
みんながみんな用意しました。
そして、朝露が光り出し
ようやく目を覚ました旅人に、
それはそれは大きな声で、
村のみんなが言いました。
「ようこそ私たちの村へ!」
旅人は初めは戸惑ったように、
しかし自然に笑顔になっていきました。
次々とやってくる御馳走に、
出来る限りの感謝の気持ちを伝えながら。
それはそれは楽しい宴でした。
時間を忘れ、何もかも忘れ、
それは丑三つ時を越えても
終わることはありませんでした。
最初からここの村の仲間だった、
そんな錯覚さえ覚える程に
その幸せな村の小さな宴は
終わることはありませんでした。
いつまでも いつまでも、
いつまでも いつまでも。
小さな村がありました。
それはそれは小さな村でした。
みんながみんな優しくて、
みんながみんな幸せでした。
子供は新しい玩具を手にし、
いつもと同じ笑顔の中にいます。
それは全く変わることのない、
今まで通りの風景でした。
「また村が豊かになったのう。」
ブラック★おとぎばなし
無糖です。フィクションです。
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