「物理屋のサヨナラ」
2005年…
僕の名前は始音 海人(しおん かいと)。
某一流大学院修士課程1年生だが、このまま博士課程を経た後に大学で研究を続けていくことが暗黙的に決まっている、まあ、いわゆる優秀な学者の卵だ。
そして、3日後には人生初、誰の手も借りずに自分一人で書いた論文を学会で発表という日を迎えようとしていた。
学士時代にはよく教授にアドバイスを受けたものだが、その回数はもう微々たるものになっていた。
「あ、しまった~。」
大学院からの帰り道、もう少しで家まで帰りつくというのに、その日に限って大学院の自分用パソコンのデータのバックアップを取ってくるのを忘れていた。
もしそのパソコンがイカれたら、今日やった分がお釈迦だ。
今まで来た道を戻りながら、昨日までのデータの入ったメモリーカードをかばんに入ってることを確認する。
その時、唐突に車のブレーキ音を聞いた。ついでに、メモリーカードが砕ける音も…。
一瞬に駆け巡った走馬灯は、未練たらたらな、でもなぜか、明るいものだった。
2008年…
目が覚めた。
僕の名前はVocaloid KAITO。
目が覚めた…と感じたのは、マスターが僕を起動したからだ。
「おはよう、KAITO」
「おはようございます、マスター。」
いつもの目覚め…のはずが、今日はアプリケーションソフトが見るはずのない夢を見た…気がして、違和感があった。
「あの、マスター?」
「なに?KAITO」
「えっとですね、なんか今日はマスターに教えてもらった歌じゃないんですけど、歌いたい歌があるんですけど、いいですか?」
「いいけど・・・デモソング?」
「たぶん違いますけど…」
「ふぅん。まあいいや。歌ってみてよ、KAITO」
「はい!!」
ニコ:sm4090566
「どうですか?マスター!!」
「・・・どうもこうも・・・ボーカロイドが音痴とか初めて聞いた・・・」
「えええぇぇぇぇ」
「正直ズコー」
「orz」
「まあ待ってなよ、修正してやるから。」
「あ、はい!!」
(修正中)
「マスター?」
「ん?なに?」
「前世とか、信じるほうですか?」
「さっき歌ったみたいな学者がお前の前世~とか言いたいとか?」
「そ…そういうわけじゃないですけど…」
「残念ながら違うと思うな。だってお前、バカだし。」
「マスタ~、バカって言わないで下さいよ~、バカってぇ。」
「ハハハ。」
「ひどいです、マスター。」
「ほら、修正できたぞ。歌ってみな。」
「はい。」
ニコ:sm4128115
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