漆烏の投稿作品一覧
-
ぎらつく電灯の白い血を浴びて
赤と、青と、黒の影産まれる
黒の影はそして逃げ出すが
同じ色はない
やがて形を持ち 生きはじめる
形は形を持ち 光るものは形を決める
色は何によって決まる?
分割のすがたたちと仲良くやる
本当に同じだろうか?
白い血を浴びて産まれたということ...影に色がある。
-
空には何もないのに
透過できないわたしがいる
本当は翼も要らないはずで
翔べば自由に わかっているけど
歩く背中についてまわるよ
底なき海 溺れてしまいたい透明
あの人の暖かさが肩をつかみ
冷たい風を浴びる気になれない
空と海に挟まれて息もできない
苦しみと、憧れの永いはざま...水面る子
-
それさえあれば、人を魅了できるというもの
経験からくる説得力 絶対的な根拠
喪失、それこそが僕の頭をまた スパークさせ
閃きと情熱に満ち溢れさせるだろう
なれるものなら、僕もなりたい
心を引き裂かれる、とびきり悲しい出来事に遭い
溢れて止まらない蛇口のように、
きっと詩が湧いて出る
執念が身体を動か...詩人じゃなくてもいい
-
燃え朽ちる西の地の青の上で人は輝く
ひとつ積まれた枯れ草の青の上で人は輝く
題名は私の中に
憧れたものは地の底へ
尊厳なき屍の青の上で人は輝く
動き出さない現実の青の上で人は輝く
翼は夢の中に
新しい詞は冬のあとで
輝き続ける それ自体で
答えはなくとも その道が光...青
-
白黒の人だかりに狼がいた
速くすぎる影の中に狼がいた
焦げた赤茶色の狼
血を浴びたように暗い
車の蟠りの中をするりと抜けていった
すぐに消え行く狼
今はここに無い速さ
笑っていた
獲物をくわえている
黒い血を点点と撒いて狂喜する狼...狼の速さ
-
海区、海区に出掛け込んで。
泳い日に低く飛んで。
それで それで迷うだけ。
静か仮死になるだけ。
そして胚になるなら。
産んで。産んで。
盲目の子に産まれるなら。
選んで。選んで。
ええ。
桶遊び夢中でいてくれ。...泳い日
-
「約120秒で、あなたは海面に衝突します」
「意外と短いんですね」
「どう感じるかは様々です。でも、長いと感じる方が多いようです」
「みな、さっさと死にたいんでしょうか」
「どうでしょう。こんな死に方を選ぶくらいですから」
女は楽しげに息をつく。
「楽しそうですね」
「そう見えますか?」
「見えま...120秒
-
偏在してるはずさ 水分子ひとつ巡る
水を飲んだり出したりする時、それを思うよ
ameとか降って 赤い雲あつめて放射
通り道さ それは枠の中での話
スープとかワインとか、コーヒーとかが身体を巡り
汗とか涎とか、粘っこいあれとかになって
水は僕を通り道にしていく 川の流れのように…
僕もそうだったのさ ...ameとか降って
-
夜に生まれたように
ひとり鏡と語りあう
路のざわめきも月光のスープに溶けゆく
あの虹や星 光るものたち
街が繋がるところ 君は何処に居る?
波長の違う僕ら平行線
エンドレス描いて堂々巡り
身体を巡るは何かしらのデザイン
時が望むなら僕は続く
事実を主張したいならバランスになろう...夜に生まれたように
-
知らないひとが 落つ港
その腕ひとつ 腕ふたつ
ぼおん、と唸る さむ港
船は遠く どこか遠くへ
うわさに聴いた 刻は過ぎるがよ
黒髪は凛として動かぬ
真ッ白な灰となりカアと一鳴き
手向けに散るのだ濡れ煙草
潮に焚くのだ不知火を
カラスは死者を愛しているのか...運命の船
-
海が見えるという そのウオから
全貌を知っているらしい
低く飛ぶよ 白いウオ
青電気綻ぶ鱗から
氷粒吹き出す 大陸橋渡し
それはサカナであった 漂流が趣味
或いは目玉であった 渦巻き雨降らす
そこにね、少しかよわいものたち
星のエネルギ 飲んで水に溶けて飲む
波が見えるという そのウオから...海の見える魚
-
一羽のカラスがいました。
カラスはある日、人間たちに捕まり、動物実験の対象にされてしまいました。
カラスは奇妙な小屋に入れられたのでした。年中薄暗く、至る所に変な図形や模様が描かれています。どうやら殺されはしないようですが、カラスは窮屈で仕方ありませんでした。
カラスは毎日、同じような"図形...月を見た鳥
-
十四人目は風だった。大会が近いせいで、その日は部活の終わりが遅くなり、帰りも夜遅くになってしまっていた。暗い路地を歩いていると、唐突に背後から声が聞こえた。
「わすれものはないか?」
振り返っても誰もいなかった。歩いてきた路地が街路灯に照らされているだけだった。誰もいない空間に向かって、僕は言っ...記憶への欠落、それまでの忘却 2/2
-
start
{
「わすれものはないか?」
決して清潔とは言えない容姿の、皺の刻まれた顔が僕に尋ねた。僕はいつも通り、こう答えるのだ。
「ありません」
すると、やはりいつも通り、僕に声をかけたその人物は、寂しげに笑って頷くのだった。
「そうか、気をつけろよ…」
―――――――――
一人目は若い女...記憶への欠落、それまでの忘却 1/2
-
潮があふれるように
透明な風がやってくる
雲の群とともに 西の空から
月夜 満ちた月よ
するどい光はいつも
黄金の瞳へと
そうして現れる月の輪が
ぼやけた虹色を踊らせる
薄雲に映えた七つ光を
指先に絡めて...黒猫
-
あどけない学者は間違いに気付く
目先の黒いところが霧にフれる
星を縫いやる通路を 光の真実を踏み外す
いけない数式が怒りにフれる
脳に生えた忘れ草を摘み取る
脳に栄えた穏健 疑惑も洗い流す純朴
何かをワスれる
何に抗うべきだったかをワスれる
整然たる錯乱に喉を鳴らす
耳先の柔いところが雲にフれる...雲にフれる
-
添えられない数 もう居られないか
得られない風 造花にゃ慣れないか
数ある飾りや飾らぬ香月も
重なる月日に帰する傷月
映えない映画館 まあ見られないか
言えないが良いか ザマ無いがあるか
酌まない意なら習いに比喩れ
要らない槍やれ 嫌なら痒い
明るい霧から赤らむ秋日
絡まる在処で気楽に会うか...灯篠月
-
マルカは元気?
ハイララの絵は素敵だね
サッタは泥まみれ
イナには夕陽が似合う
僕は大人になった。
アイザの弟が帰ってきた
ウェトーは望遠鏡と睨めっこ
ミテアは空から降ってきた
シィジアは汽車の旅が好き
僕はこの丘にいる。...丘に唄う
-
0
夢を見ていた。
そこは夜の空。地上に敷かれた雲の海と、丸い月がひとつ浮かんだ宇宙の間、その空を、一羽の鳥が飛んでいた。
鳥は月光と戯れ、夜空を泳いだ。
冷たい空気が羽の上を滑っていく。意識が浮遊感を携え、遼遠へ拡散している。
まるで宇宙にいるようだ、と彼は思った。
いつから飛んでい...月と僕
-
脳が何度も傷ついたので 目眩がこんなに酷いのかもね
増殖した自我を吐くための 容器が壊れたあの日から
同じ言動を繰り返してる 壊れたレコードみたいだね
"お前はひねくれ者だ"って 彼はいつも哀れむから
"まっすぐ生きてるつもりだよ"って わたしは笑って言うのです
"お前は寂しい奴だ"って 彼はいつも...殴ると増える少女
-
この涙は何時も帯電していた
白波に 跳ねた泡を掴む様に
ふと触れた雲は翼の形をしていた
そうだ あれが最後で、初めての呼吸
いつか降り立った丘に
いつか還る場所の空に
別れの挨拶をしておこうか
さよなら雷 少しだけ
さよなら雷 いつまでも
鉄塔の余燼に手を翳し...さよなら雷Ⅲ
-
かみさまがおっこちた
かみさまがおっこちた
すいへいせんがへっこんで
はずんでころんでかぜがふく
てんしがわらうぞ けら けら けら
まっかでまっさお しろいよる
ぼくたちはふりむいた
ぼくたちはふりむいた
かいちゅうどけいがいきをやめ
とまってくずれてめをあける...シィジアとメテオ
-
乾燥肌 ちぎってすてる
剥いては捨てる ぼろぼろになったって
ぐずぐずになったって ぐしゃぐしゃになったって
やめられないんだ 要らない皮膚を
剥いては捨てる 乾燥肌
血が滲んだから舐めとった
味がしたんだ 乾いた鉄の
苦くて熱い 血の味が
乾燥肌 掻きだしてすてる
剥いては捨てる がさがさになった...乾燥肌
-
1
おおあめのふる すこしまえ
そらにはきっと うみがある
あふれるばかりの みずをかかえて
うみはこぼれる 淡水のうみが
おおあめのふる そのときに
みずのころもの すそをひいて
あのそらたかく ながれていくの
さかなもいない 淡水のうみが
おおあめのふる そのあとは...淡水の海
-
世界の地図 床にひろげて 大陸の沿岸に寝そべった
左手を太平洋につっこんでさ 指で鯨と戯れながら
爪をたててみる 海底 天国の首都に
オリンピックも終わったね きっと
地球中の地球儀がカラカラまわっただろ
綺麗なメダル みんな憧れて
夏なんてすぐ終わる ベランダの蝉に同情するかい そんな詩もあったけ...ENTOCHOLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLOGUE
-
青い炎が時を透き 冷たい町まで谺する
不可視の熱と光をたたえ 地下の水辺をふるわせる
掬ってみたならひとみのはざまに
蒸留水のひとしずく
割れたグラスのひとかけらまでも
水晶体のひとつぶに
過ぎしを追えぬはひとの世のつね
改札付近のひとだら...火爛水透
-
この夏の青さ 誰に伝えようって
思い立って濡れた手紙を書いただけ
梅雨明けさんの明後日には東日本も
お洒落感漂う青春に苛まれるのさ
時計が指したのは天秤座だって
水晶占いがドアを閉めて云った
"運ちゃん、白昼夢なお月様までどーぞ"
二階の窓の縁からもさ
ビターに火照る"わたし"とかが飛び立つ
隙間の...理不
-
黄金の瞳に夢を灯す 掠める時
まばたきのような 束の間の夜
触れないかかわりを風に渡して
星の表裏が一致する シンクロニシティ
望遠鏡はささやく 黒猫は眠る
音のない 月暈の狭間に
彼ら何百回 何千回も
互いの影を見せ合ったのだろう
太陽さんを照明係に
この銀河をくるくると...月蝕
-
昨日の友達だとか
今日の夕餉だとか
明日の旅行だとか
そんなことだ
空が遠いね、とか
帰りが遅いね、とか
おかしいね、とか
そんなこと、だ
優しくなったりして
涼しく笑って...スモールライト
-
青さが晴れる水の日に 空という星 偶然にみつけた
辿ると月の視線 あわせて夕陽がはずみ
息は曇る とおくの音が ゆれ動く
朝起きたら雨がふっていた プラス 日曜日
塗料はがれ 無色がむきだしの街をさまよう
ひとりひとりのコップに 冷たい雫 溜まらせ
太陽が見ている内に 地面に流していく
熱すら持たな...inosing
-
星をなぞる指が
遥か君に 触れただろうか
夜空 天の火か 歩く 歩く君は
星灯り
light,light...
オレンジの風船を「ぷくう」と膨らませ
あの夜空へ旅立つ船に
青いハンカチを振ってやる
金星は笑いが止まらない
私も笑いが止まらないな...星灯
-
ネコは水がきらい
ネコはイヌがきらい
ネコはうるさいのがきらい
タバコがきらい
辛いものがきらい
しっぽを触られるのがきらい
だから
ネコは貴方がきらい
大嫌いです
ネコは魚がすき...ネコのしっぽ
-
左隣の家の前を通るとき、私はいつもその家の二階の、小さな縦長の窓を見る。そこには窓の枠にぴたりと収まるようにして、灰色の猫が座っている。ガラス越しに、こちらを見下ろしているのだ。
その家は古い家だった。妻が、築五十年にはなるだろうとどこかで聞いたと言っていた。
最近は居住性やらエコやらで、つい...隣家の猫 (掌編小説)
-
手首に真っ白な包帯が巻かれている。ぐるぐるぐるぐると、厳重に、きつく巻かれている。
まるで、私をこの世界に繋ぎ止める手錠のようだ、と思った。
上げていた腕を落とし、息を吐いて天井を見つめた。貧血のせいか、まだ身体がだるい。明日からどうしようか、と考えていた。母は、泣いたり笑ったり怒ったりしなが...包帯 (掌編小説)
-
あるところに、一羽の鳥がいた。
そいつは黒い羽を持っていた。
そいつはカァと鳴いた。
次の日から、その鳥はカラスと呼ばれるようになったとさ。
めでたし、めでたし
空虚な烏
1
- 2