gatsutakaさん

ここpiaproには「冬至のパレード」一作だけですが、それ以外にも通算で20作以上のボカロSSをネットで公開しています。

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ここpiaproには「冬至のパレード」一作だけですが、それ以外にも通算で20作以上のボカロSSをネットで公開しています。
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2011/12/4 更新

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冬至のパレード (3) 了

 僕の方ももっと驚いていた。 「そんな。まさか」  僕は助手席の背もたれを乗り越えて後部座席に移った。 「ね。リンちゃん。もしかして、君。……死んだの?」 「えっ? 死んだって、私が?」 「うん」 「ううん。生きてるよ。どうして?」  リンはまだびっくりがおさまらない様子で、ゆっくり、小さな声で言った。 「よかった。リンちゃんも死んじゃったのかと思った」  リンとは小一から今までずっと同じクラスになっている。背が女の子の中で小さいほうから二番目で、学年一高い僕とは随分身長差がある。ちょっと大人しいけれど、かわいい子だ。 「ここ、どこなの?」 「どこって、ここはうちの車の中。お父さんがタバコ買いに出て行ってずっと待ってるんだけどまだ帰ってこないんだ。でも、リンちゃん、どうやってここに来たの?」 「私は家で宿題してて、ちょっと眠くなったからそのまま寝てたの。そのとき背中がぞわぞわってして、座っていた椅子が急になくなったみたいにお尻からストンと落ちて、気が付いたらここだった」  リンは車内を見回して、ふうと息をついた。 「ねえ。さっき私に死んだのって聞いたでしょう。あれどういう意味?」 「うん。あのね」  僕はさっきからこの車の中で起きていることを説明した。 「ええっ。メイコ先生が来たの。会いたかったなあ」 「ちょうど入れ違いでリンちゃんがここに来たんだ。だからもしかして君も死んだのかと思った」 「ううん。私生きてるよ。でも不思議ねえ」 「よかったあ」  リンは鼓笛隊で小太鼓をやっている。パレードの練習にもずっと出ていた。僕は女の子とあまり話をしないし、リンも大人しいので普段鼓笛隊でもクラスの中でも何かしゃべることはあまりない。 「ねえ。メイコ先生何か言ってた?」 「うん」  僕は先生が教えてくれたことをリンに話していいかどうか考えていた。たとえ考え事をしていたことが事故の直接の原因であるとしても、僕が先生を引きとめたからあの時間に事故現場を通りかかったことに変わりはなく、それでも先生がわざわざ教えに来てくれたのは僕のためであると思ったからだ。 「パレードは残念だったねって」 「それだけ?」  リンは僕の顔を覗き込むようにしてそう聞いた。その目を見ていると、リンにはあの話をしてもいいと思えるようになった。 「リンちゃんがここに来たっていうことは、この話をしてもいいと思うから話すけど、他の人には言わないで欲しんだ」 「うん」 「あの事故の日にね、練習が終わってみんなが帰り始めたときに僕は先生にお願いして家から持って行った楽譜の読み方を教わったんだ」 「楽譜って何の?」 「僕は隣の家のお兄さんにギターの弾き方を時々習っているんだけど、そのお兄さんが夏休みのクラブの合宿で家にいない間だけ貸してくれたんだ」 「ギターを?」 「うん。楽譜も借りて一人で弾いてみたけれど、読み方の分からないところがあって、それでメイコ先生に聞こうと思ったんだ。それで三〇分くらいかなあ、ピアノで弾いてもらって大体覚えるまで教えてもらって帰ったんだ」 「その後で先生は事故に遭ったということ?」 「うん。だから、僕があんなことお願いしなかったら先生はもっと早く帰っていて、事故に遭わなかったかもしれないんだ」 「そうだったんだ。それで先生何か言ってたの?」  僕は、先生が縁談があって悩んでいたこと、それで事故に遭ったと言ってくれたことを説明した。 「そういうことかあ。それを言うために来てくれたんだ。……いい先生だったね」 「うん」 「レン君、メイコ先生好きだった?」 「それはね」 「私も好きだったなあ。練習のときは厳しかったけどねえ」  それから僕らは暫く黙っていた。 「好きって言えば」  リンが唐突に話し出した。 「レン君クラスに好きな子いるの?」 「えっ。いや。あの。……いないけど」  いきなり言われて僕はそう答えるのがやっとだった。 「ふ~ん。そうなんだ」  リンはちょっと残念という顔をして話しを続けた。 「ねえ、知ってる? 六年の中で何人かカップルがいるの」 「えっ。そうなの? 全然知らない」 「私も全部知ってるわけじゃないけど、何組かあるみたいよ。そうかあ、知らないのかあ。みんな一応秘密にしてるからねえ」  そう言うと、リンは僕の方を向いた。 「実はね。私、好きな人がいるの」  僕は、胸がドキドキして膝が少し震えた。 「だから、レン君がその人が誰かと付き合ってるか知らないかなあと思って」 「それって、誰なの?」 「ごめんね。それは教えられない」 「いや。でも」 「う~ん。そうだね。元々話すつもりで切り出したんだし、メイコ先生のこと教えてもらったのに、これは言わないというわけにはいかないか。でも、その前に曾おじいさんのことを教えてくれる? その曾おじいさんは何をしに来たの?」  リンは前に向き直った。 「色々話をしていったよ。生まれた町のこととか、どうやって日本に来たかとか」 「ちょっと待って。日本に来たってどういうこと?」 「僕の曾おじいさんはイギリス人だったんだ。日本に来て、結婚して、日本に帰化したって」 「へえ~。それは知らなかった。名前は何て言うの?」 「オトヤマトビオ」 「ん? イギリス人なんでしょ」 「帰化して日本人になったからね。元の名前はカイト何とかだった。墓石の裏にそう彫ってあるよ」 「カイト……」 「どうしたの?」  リンは何か考えているように黙り込んだ。僕も黙っていたけれど、なんだかさっきから妙な違和感があった。リンは色々なことに熱心に取り組む頑張り屋さんだが、普段はせいぜい仲のいい女の子達と話をするくらいで、クラスの中ではあまり目立たない大人しい子だ。僕の印象ではそうだ。でも、今隣に座っているリンはよくしゃべるし、話のポイントを外さないでまるで僕を誘導するように会話を進めている。学校では猫をかぶっていて、地はこうなのだろうか。  それと、僕はなぜリンがここに来たのか考えていた。そりゃ、確かに僕はリンが……。 「あのね」  リンがまた急に話しだした。 「今思い出したんだけど、私ここに来る前にレン君の曾おじいさんに会ってるのよ」 「寝てて椅子がなくなったっていう後のこと?」 「そう。家ではないし、ここでもない、何か変なところで気がついたら外国人のおじいさんに会って、その人に頼まれたの」 「何を?」 「『私の曾孫がちょっと悲しい思いをしているから、少し話しをしてやってくれないか』って言われたの。その人、カイトって名前を言ってたから、多分レン君の曾おじいさんだと思う。そのあと足元がまた急になくなったと思ったらここに来ていたの」  そうか。やっぱり曾おじいさんがリンをここに連れて来てくれたのか。 「ごめんね。何だか変なことに巻き込んでしまったみたいで」 「ううん。こんな不思議なことめったに経験できないからね。それにレン君と沢山話しができて嬉しかったし」  このとき、リンの輪郭がぼやけてきた。 「レン君、曾おじいさんに何かプレゼントを貰ったんでしょう?」 「あっ。うん、曾おじいさんからはこのメダルを貰った。それとメイコ先生からは物じゃないけど、僕がフルートを吹けるようにしたって」 「いいの貰ったね」 「あの、でも。何で知ってるの?」 「あのね。レン君の曾おじいさんに会ったとき、『曾孫にはプレゼントをあげておいた。君にも何かあげよう。もう物は持っていないけれど、例えば君、何か自分の身に付けたい能力はないかね』って言われたの。能力じゃなくて直したい性格でもいいって」  リンは、曽祖父の口調を上手に真似してそう言った。 「へえ。それでどうしたの?」 「私、引っ込み思案だから、この性格を直したいんですって言ったら、『それはいい。私の性格を少し分けてあげよう』って。それから私の顔を手で包むみたいに挟んで『これでいい』って。私変わったかな」  そういうことか。 「うん。なんだか前よりもっと元気で、話しやすくなったみたいだね。さっきまでリンちゃんどうしたんだろうって思ってた」 「そうか、何だか得したみたいだね。あれっ、背中がぞわぞわしてきた。私もう帰るのかもしれないね」 「あの。リンちゃんの好きな子って」 「ああ、それはまた今度ね」  リンは少し微笑んで、「楽しかった。私は何も上げられないけど、その代わりにね」と言うと、僕の頬に軽くキスをした。 「また明日、学校でね」 Ⅴ.  リンが消えて車内はまた静かになった。そして運転席の前の方から微かな音が聞こえてきた。  小さな馬に乗った三匹の白いネズミがさっきとは逆に助手席から運転席のほうに進んでいる。  首を伸ばして背もたれの隙間から見ていると、ネズミ達はダッシュボードの右端で先頭から順に消えていった。  三番目のネズミは消える直前にまた僕の方を見て、今度は手を振ったようだったがすぐに見えなくなった。  それと同時にさっきよりは弱くなった雨音が聞こえてきて、運転席のドアが開いた。 「いやあ、濡れた濡れた。雨宿りしてたけど待ちきれなくて帰ってきたら小降りになるんだもんなあ」  車に入ってきた父は僕を見て「なぜそっちに座っている?」と聞いた。  我に返った僕は時計を見た。十二時二十二分。あれから二分しか経っていない。 手の中には曽祖父からもらったメダルがある。夢ではなかった。 0―ⅱ.  厚い雨雲の上で、冬至の太陽が子午線を抜けた。

 本作品の元になったものは、これの4倍くらいのボリュームがあるシナリオ版だったりします。その最後の部分を抽出して小説風に書き変えました。
 本来の時代設定は少し昔のことにしていました。その影響で、時代を現在として逆算すると世代的にちょっと苦しいことになります。絶対に有り得ないことでもなさそうなので、目をつぶって下さい。
 
 金髪でひげを生やした老人顔のカイトというのは想像しにくいかもしれないですね。
 KAITOはKite(カイト)に脳内変換し、その上でKiteには凧や鳶という意味がありますので、そこから名前を付けました。ビートルズのサージェント・ペパーにMr.Kiteが出てきます。あれは苗字だから違うなあと思いつつ、欧米では苗字を名前にしてしまうケースがありそうなので。
  アーサー・C・クラーク  ――>  クラーク・ケント
  Sir Arthur Charles Clarke -->   Clark Kent (最後のeが違う?)
「その認識間違ってるよ」という場合はご教示下さい。
 ファーストネームがKiteという人が普通にいるのかもしれないですね。
 
 レンとリンは淡い関係(それ以前かも)の小六同級生という設定です。
 メイコは一作目に続いて、学校の先生にしました。私の中では割とそういうイメージがあったりします。一作目が老け役で申し訳なかったので、今回は若いままです(死んじゃってますけど)。
 
 舞台の殆どが車の中のため会話主体(元がシナリオのせいもあります)で、全体に稚拙なのは作者の力量の反映です。特にⅢ章は話の時点がころころ変わるので分かりにくくなっています。メイコ先生の長セリフは困りましたが、どうしようもなくてそのままにしています。
 
 ネズミと馬は子午線(しごせん)の象徴にしています。
 二分は、地球から見て太陽がその直径分だけ移動するおおよその時間です。太陽の西側の端が子午線にかかってから東側の端が抜けるまでの時間になります。
 時刻が十二時ではなく十二時二〇分なのは、ロケーションを作者の地元に想定しているためです。

 出来はともかく、シナリオ版の頃から少しずつ作り込んできたたかなり思い入れのある作品です。
 感想など頂けたら、泣いて喜びます。

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投稿日時 : 2008/11/02 21:16

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