n-bunaさん

ナブナです。曲作ってます。ニコニコ動画に投稿した分はこちらです→http://www.nicovideo.jp/mylist/30722660

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エピローグ ― さよならワンダーノイズ〈さよなら曲・Ⅰ〉

「なんで、なんでそれ」

 彼は震える声で、彼女にたずねました。彼女は、背の二倍はある高さの金網を軽く掴みながら、歌っていました。彼には、彼女の表情がわかりません。ただ、泣いていないことはわかりました。

「ねぇ、なんで歌ってんの?」

 歌い続ける彼女に、彼は一歩近付いて、またたずねました。彼女の耳にはイヤホンが差し込まれていました。でも自分の声が彼女に届いていることを、彼は知っていました。

「君を忘れて、楽になりました」

「違うッ!」

 彼女はそこでやっと、振り返りました。西日に照らされて、彼女の姿は赤く染まっていました。

「振り返る君も、笑っていたの」
 
 歌声が消え、あたりは静かになりました。彼は彼女を睨むように見つめていました。彼女は対称的に、優しげな目で彼を見つめていました。

「ごめんね。歌いに来るまで、待ってるつもりだったんだけど」

 申し訳なさそうに、彼女は言いました。耳からイヤホンを外し、カーディガンのポケットにしまいました。

「その歌」

 彼はさっきとは打って変わって、眉を下げ、泣きそうな顔でうつむきつぶやきました。

「どこで知ったの」

「どこだろ。覚えてないや。でもすぐにわかったよ、この歌は、君のだって」

「こんな歌、いっぱいあるよ。わかるわけないし、だいたい見つかるわけ……」

「でもわかったよ。見つけたよ。だって、合ってるでしょ?」

 彼は何も言えずに、しゃがんでしまいました。

「初めて聴いた時、びっくりした。鳥肌も立った。そりゃ、聴き終わって思ったよ。そんなはずない、きっと考えすぎなんだって。でも、どうしても諦めきれなかった。だから、来たの。ここに」

 彼女はまた金網に触れ、広がる町並みを見下ろしました。夕暮れに染まる家々は、あの日と大差なく彼女の目に映りました。

「確かめたかった。それだけなの。ごめんね」

「これ、なんの曲かわかった?」

 しゃがんだまま、丸くなって彼は問いかけました。彼女は少し困ったような、迷っているような顔で言いました。

「……私たちの話かなって。自意識過剰かな」

「そう。そうだよ。ずっと引きずって、曲に吐き出して、それを君の見えないところに放り投げて。結局見つかって。ほんと、馬鹿みたいだ」

 彼女は彼の前まで歩き、同じようにしゃがみこみました。

「私、あの歌を何回も何回も聴いてね。綺麗な曲だなと思ったの。何回聴いても、透き通っていて、少しひんやりしていて、君の手から生まれるのに、何度も納得した」

 彼女は彼の白く冷たい手を取り、握りました。

「綺麗な、思い出になってるんだなって。もしかしたら、この曲を作って思い出になったのかなって」

「そんなことない。まだずっと、僕は」

「私だけ、なんだか囚われてるままな気がして」

「だから、君だけじゃなくて」

「ずっと泣いてちゃダメだなって思った。君の前では、泣いてばかりだったから」

「ねえ、聞いてよ」

「確かめたかった。だから、それだけ、なの」

 彼女は彼の手を離し、立ち上がりました。

「バイバイ」

「待って」

 歩き出そうとする彼女の手を、今度は彼が掴みました。

「君の、話を聞かないところが嫌いだ」

 立ち上がった彼の顔を、彼女は見ませんでした。彼の視線から逃げるように、ふらふらと足元を見ていました。

「勝手に、何も知らせずに現れるところが嫌いだ。曲を見つけて、僕のだってわかっても連絡してこないところが嫌いだ。自分だけが引きずってるんだと思い込んでいるところが嫌いだ。僕が歌いに行くなんて、なんで覚えてんの。あの歌が強がりだって、なんでわからないの。綺麗事にしたかっただけなんだよ。気付いてたんでしょう、それなのに、君はまた何も聞かずに居なくなっちゃうの」

「私は弱いから、甘いから」

 振り絞るように出した声は、彼にかき消されました。

「僕だって弱いよ!甘いよ!」

 風が吹いて、彼女は彼の顔を驚いたように見ました。

「ずっと、好きだってわかってよ……」

 涙が、彼の頬を伝っていました。

「好きじゃなきゃ、あんな歌書けないよ。弱いから、歌だけ作って君には伝えられなかったんだよ。甘いから、もしかしたらなんて変な期待をして、放り投げたんだよ。……結局、こうやって君は来てくれたけど」

 彼女は、眉を下げ、笑っていました。楽しそうに、嬉しそうに、少し得意そうに、笑っていました。笑いながら、涙をこぼしました。

「やっと、君も泣いてくれた」

僕らの航海フォトグラフィー

まだ夢見てる様な君のさ 心に今繋いでくように
僕らを揺らしていたあの後悔 もう一回 もういいかい ずっと

表面上なんて 君が夢を梳く この空にそっと星を探す
泣いてるようだって でも言えないもんでしょう? 
ずっと好いてるような痛みで君を見てる


十秒間じゃ足りなくて 君に隠した言葉さえ
言えないままで消えた僕を見ていて
惑星間 歪んだ航海
愛してるって君の声を ずっと二人で見ていた夢に乗せて

 
また重ねた写真の奥に咲く 二人のネジを巻いた君へ
いつか宇宙も越えれればいいな そうやって もう一回 なんて

空中 弧を描いて 宇宙の果てを見る
あの青が僕の目指す星 
泣いてるようでした 君はそこで今
ずっと遠く揺らいで形も見えないほど


愛情論とコントラスト 積み上げた声に重ねて
忘れも出来ないままの君の笑顔を
重力感 揺らいだ後悔 「じゃあまたね」
ねぇ、あんまりだって思うさ 
ずっとここで待つなんて 言わないでよ


何十年が経ちました いつかまたなんて夢を見てる
何百年が経ったみたいでも 君の笑顔とメモリの中
何光年先でもずっと 消えない心
物語の中なんだ そうさ 僕は君を ずっと


愛情だって知ってたんだ 君に隠してた言葉は
別れも言えないままで 君が消えていく
惑星間 揺らいだ後悔
大好きだった君に送る ずっと二人の夢を ねぇ


十秒間じゃ足りないよ いつまでも側にいたくて
忘れも出来ないままの君の笑顔を
重力間 歪んだ航海 宇宙の果て 君の隣で!

ずっと二人で見ていた 夢に乗せて


ねぇ

ダイアローグ ― 一人きりロックショー〈さよなら曲・Ⅳ〉

 夏が終わりかけ、風が心地良い季節になっていた。

 もうあの日から、四年が経っていた。

 彼は、ギターを背負って自分の家まで歩いていた。いくら涼しくなったとはいえ、背中には汗をかき、つい息が上がってしまう。

 家の前の自転車が見えて、やっと一息。あと少し。

 ギターが自転車に当たらないように避けて通ろうとすると、自転車のカゴに何か貼り付けてあるのを見つけた。

 メモ用紙が、半分に折られてセロハンテープで貼られている。はがして開くと、かわいらしい字で何か書いてある。

 彼はそれを読み終えると、手を震わせてまた読み直す。何度も、何度も読み返す。

 さっきまでのしっかりした足つきはどこかに消え、ふらふらと重心がわからなくなってしまったかのように、家の扉を開いた。




 あの日と同じ、六時半。あの日と同じ、塾の屋上。

 彼女は貼り付けたメモ用紙の内容を思い出しながら、金網に触れた。イヤホンからは、ある歌が流れている。

 一曲リピートに設定されているプレーヤーは、彼女のカーディガンの中に入っていた。

 彼女は、これから何を話そうかと想像していた。



 これ、君の曲だよね?

「なんで、なんで知ってんの」

 見つけちゃったから。君が書きそうな歌だなって。

「そんな、わかるわけない」

 うん。わからなかったから、聞きに来たの。正直、違っても良かった。ただ、これを逃したら、やっぱり二度と会えない気がしたから。

「嘘みたいだ」

 そうだね。でも、こうやって君のだって思っちゃう程度には、ずっと想ってたよ。待ってたんだよ。

「待ってたって、なんで」

 待ってたから、届いたんだよ。



「そうだよ まだ届くかな
あの客席の奥 君の元まで
あぁ どうにも 聞こえないままの
そこに 響く
一人きりロックショーを……」


 嬉しそうに歌う彼女の後ろで、階段を上る足音と、金属製の扉を開く音が聞こえた。

モノローグ ― 透明エレジー〈さよなら曲・Ⅲ〉

 先に帰りな、と君はうながした。べしょべしょになったハンドタオルを握りしめて、私は頷いた。

 もう夕日は沈みきっていて、東のほうは暗くて、青かった。生ぬるく湿った風が通り抜けて行って、髪がふわりと持ち上げられた。

 髪を押さえながら、屋上のドアを開けて、一度だけと思いながら君の方を振り返った。

 君はこちらに背を向けて、もう赤くない街を見下ろしていた。私を見てくれるような気は、しなかった。

 少し、期待していた。好きだって、言ってくれるんじゃないかって。でもなぜか、ここに着いた時にはもう、そういうことにはならないんだろうなって気付いていた。高い壁が建ってしまったことに、もう呆然としてしまって、そこまで手が回らないというか、これでもうおしまいなんだろうなって、なんとなく感じてしまった。

 でも、そんなことを悟ったからって、納得できるくらい私は強くない。

 いつもは自転車で来る場所だけど、今日は歩いて来た。三十分くらい、ゆっくり歩きたかったから。でも、やっぱり自転車で来れば良かった。泣きながら歩くのが、こんなに苦しいと思わなかった。歩くから苦しいのか、結局何も言えずに終わってしまったから苦しいのか、もうわからなかった。

* * *

 家に着いて、自分の部屋に閉じこもった。カーテンは閉め切っていて、光は全然無かった。真っ暗な部屋の中で布団をかぶり、さらに暗闇に沈んだ。

 すごく、胸が痛かった。痛すぎて、もう肺が潰されてて、空気が吸えなくて、苦しくて、死んじゃうんじゃないかと思った。

 なんで言ってくれなかったんだろう。好きじゃなかったの?勘違い?それはそれですごく痛い。

 自分が、これは恋なんだって自覚したのはいつだったっけ。でも気持ちを伝えたら、このままじゃいられなくなることはわかってたから、ずっと心の奥底に隠していた。

 気持ちを伝えてこのままじゃいられなくなるのと、引越しちゃってこのままじゃいられなくなるのでは、どっちが幸せだったんだろう。

 君はきっと、私が気持ちを隠してたのにも気付いてたはずなんだ。それなのに見えないふりをして、最後も結局そのまんま。『また会えるから』なんて、ほんとにそう思ってる?会いに来てくれる?嘘でしょ、わかってるよ。ギター持って歌って回るなんて、そんな柄じゃないでしょう。なんでそんな、見え透いた嘘を最後に吐くの。それで満足すると、納得すると思ったわけ。

「嫌い」

 布団の中でつぶやいた声は、思ってたより大きく耳に届いた。

 わかってくれてないんだ。嫌い、嫌い嫌い。もう忘れたほうがいいんだ。あんなやつ、好きでいたってもうどうしようもないんだから。

 そう思ってるくせに、嫌いだってつぶやくたびに痛くなるのはなんでなんだろう。忘れたいって思うごとに、自分が消えてしまいたくなるのはどうしてなんだろう。

 涙は、いつになったら枯れてくれるんだろう。

「うわあぁ……」

 自分の泣き声と、呼吸と、心臓の音がうるさかった。

 私が悪いんだ。何もできなかったのは私で、勇気が無かったのは私で、思い込んでたのも最後のチャンスを無駄にしたのも私なんだ。

 嫌いになれないよ、忘れることなんてできないよ。

 頭のなかでぐるぐると、できる、できないが回り続けて、そのまま私は眠ってしまった。



 夢を見た。

 私たちは屋上に居た。

 振り返って見た時と同じように、君の背中しか見えなかった。

 無音だった。何も聞こえない。でも、君が何か言っているのはわかる。なんて言ってるの?聞こえない。気になるのに、私は近寄ろうともしない。

 東側がまぶしくなって、そのまま光で何も見えなくなってしまう。




 未だにその夢をたまに見る。起きてからカーテンを開けて、その先の光に君が見えるんじゃないかなんて思うんだけど、そんなわけはない。見えたら逆に危ない気もする。

 もう、泣かないことにした。君に会う時まで、泣くのは我慢することにした。会う時なんて、きっと来ない。それでも、何か目標を決めないと私は耐えられないから、そうすることにした。


 強くなって、今度は君の泣き顔を見る。それが私の、密かな目標になった。

さよならバイバイ、またいつか

ハロー バイバイ 待って じゃあね
ってこの街が暮れてゆく

そっと俯いた 帰りの道
泣き虫な君の声が ずっと

振り返ってく 夕暮れ坂
赤に染まる町並みの色は

重なり被ってく 君の描いた
僕らの心の形 だっけ

泣き止んだ 後に見えた
夕焼け空の中に 

全部隠してしまおうよ


もう いない いない 僕の声を
繋いでく六秒間

君の 君の 君の 君の心を避けて通るんだ

そう ただ ただ 唄の中に
言葉を隠したんだ

ここに 今も 一人
涙の中で 僕は 僕は 僕は 僕は


ハロー ぐっばい じゃあね バイバイ
もうじき夜がくるから

言葉の裏 裏 裏の気持ち
君に伝わるのかもね じゃあね

これが最後の最後なんだ
お別れの言葉 嗚咽の涙

堪えた顔で泣かないで バイバイ
ほんとのさようならとかじゃ ないさ

嘘をついた 僕の影に
朝焼け いつのまにか 

言葉も枯れてしまったのかな


いつかの 空 空 空の赤は
僕らを包み込んで

ふわりふわりふわり 君の影すら
消えてくれないよ
 
そうさ ねぇ また また また君には
心を隠したんだ

ここに僕は あの日の君の言葉を

ずっと ずっと 



何年間待ったんだい
君にもう会えないような

いつからか歪んじゃった
あの日の夕焼け色だって

ねぇ なんて歌ったって
本当は気づいていたんだって

そこには 


君は もう いない いない いないままで
繋いでく六秒間
僕は 僕は 僕は 僕の心に嘘をついたんだ

そうさ ねぇ ただ ただ 唄の中に
言葉を隠したんだ

ここに 今も 一人
涙の中で ずっと ずっと


いつかの 空 空 空の赤は
僕らを包み込んで

ゆらりゆらりゆらり 君の影すら
消えてくれないよ
 
そうさ ねぇ また また また僕らは
心を隠したんだ

ずっと ここに 一人 笑顔を見せた
僕は君を なんて

じゃあね

プロローグ ― さよならバイバイ、またいつか〈さよなら曲・Ⅱ〉

 涙でぐしゃぐしゃの顔で、「引っ越すの」とだけ君は言った。

 学校帰りで、僕たちは自転車を押しながら、車一台分の幅しか無い田んぼと田んぼの間の道を、並んで歩いていた。

 引っ越すことくらい、本人から聞かなくてもわかっていた。なぜか君は、僕にはこのことをまだ言わずに、最後に言おうとしてたみたいだけど、そんな意味なんて無いくらい早く、僕の耳には入っていた。

「うん、そうなんだ。寂しいな……なんて、もうみんなから言われてるんだろうけど」

「……ごめんね」

「なんで謝るの」

「最初に言おうかなって、思ってたんだけど」

 君はそう言ったきり、黙ってしまった。

 なら、最初に言ってくれたらいいじゃないか。教室で、噂みたいに聞いた僕の気持ちを、君はわからないだろうね。「お前知ってたんだろ?」って友達に聞かれて、頭のなか真っ白で、何も言えなくなって、僕はどんな気持ちでここに来たと思う?

「まあ、別に付き合ってるわけじゃないし。親の仕事の都合だったら、仕方ないし。ただ、もうちょっと早くても……」

 ああ、なんでこんな刺々しい言い方しか出来ないんだろう。そう思いながら隣の君を見ると、もうぼたぼたと涙を落としていて、体が急に冷えた。

「そうだよね、うん、ごめん、ほんともう、今日もずっと泣きっぱなしで」

 ハンドタオルを口元に当てて、肩を震わせながら、自転車を押すのもいっぱいいっぱいのようだった。とんでもないことをしたのかもしれない、と思った。

「いつ、引っ越すの」

 とにかく、なにか言わなくちゃと思った。このまま無言で帰るのは気まずすぎる。

「二週間後。夏休みに引っ越すから、終業式でもう……」

 このままだと君は崩れてしまいそうだったから、とにかく話を途切れさせないようにした。

「そうなんだ。受験もあるし、遅いと大変なんだろうな。厳しい学校じゃないといいな。うちはまだそんなに厳しくないけど、髪とか制服とか、厳しいとめんどくさいし」

 何も言わず、下を向く君を見て、もうどうしようもなかった。

「終業式が終わったら、塾の屋上に来て」

「え?」

「それまで、泣くのは我慢してよ」

* * *

 約束の五分前に着いたつもりだったのに、君はもう居た。君は背の高い金網を掴みながら、赤く染まる町並みを見下ろしていた。

「早いね」

 僕の声に気付いて、君は振り返った。君はいつもみたいに片耳にだけイヤホンをはめていた。

「うん。なんか、ここに来るのも久しぶりだったから」

「久しぶりって、一ヶ月も経ってないだろ」

「そうだっけ。……もうここに来ることも無いんだろうなぁって」

 そういえば、初めて君と話したのもここだった。同じ校章が付いてるって、僕も気付いてたけど、先に声をかけてくれたのは君だった。数学の公式を何度もここで教えたのを思い出して、少し笑ってしまった。

「やだなあ、引っ越すの」

 その声がもう涙声で、焦って僕は駆け寄った。

「やだよぉ、離れたくない、みんなと、もっと一緒に居たいよ……」

「わかってるよ、そんなこと。でもしょうがないだろ、一人だけ残れるわけじゃないんだし」

「そうだけど、でも、新しいところは怖いし、不安だし、もう頑張れる気がしないし」

 ぐずぐずと言い続ける君に対して、僕はなんだかどんどん冷静になっていく気がした。

 柔らかな赤に染まる僕らの横には、長い影が伸びていた。僕の影が、君の影に近付いた。

「僕は将来、ギターを持って、全国を歌って回るから。君のところにも、歌いに行く」

「……ほんとに?」

「うん。だから、これは、ほんとのさよならなんかじゃない。また会えるから」

 君を元気づけたかった。ただ、それだけだったんだ。

 肩を掴まれた君はびっくりして僕を見ていたけど、その目からはまた涙がこぼれてきて、そのままうんうんと頷いてくれた。



 多分、僕は君のことを好きで、君も僕のことを好きだった……んだと思う。そうだといいなと思ってる。でもそのことを一度も確認出来なかった。その勇気が無くて、ずっといつもみたいに一緒に帰れるとも思ってたから、確認なんてしなくてもいいって決めつけてた。君が引っ越すと知ってからは、余計に何も言えなくなってしまって、あんな出来もしないことを口走った。たまに君の前でもギターを弾いてみせてたけど、本気でやるつもりはなかったし、歌って回るなんて考えてもなかった。

 でもずっと心に自分で言ったことがこびりついていて、君が居なくなってからも、飽きるだろうと思ってたギターに触れ続けた。


 何年か経ってからやっと、僕は曲を作ることにした。

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