†B†の投稿作品一覧
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エピローグ:
いつだったか、海人とこんな話をしたことがあった。
一緒に、劇団の劇を見に行った時のことだ。
「海人、天国とか地獄って、ほんとにあると思う?」
劇の内容から、そんな話に発展したのだった。
その時の私は、天国とか地獄とか存在そのものを知らなかったから、つい大真面目に聞いてしまった。
「はは...ラストバレット。エピローグ
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「グミちゃん……」
「か、海人!!」
そうだ、それよりも今は海人を助けなくては。
私は彼のもとに駆け寄る。
「……っ」
近くで見ると、思わず目を覆ってしまいそうな光景だった。
全身に刺し傷と切り傷が残ったその姿。しかも傷口から出る血は止まらずに、今もなおあふれ続けている。
おまけに胸には先ほどのスロ...ラストバレット。3-8
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「うわさをすればなんとやら、ってやつだな」
「あー、8番目ぇ!!ご無沙汰してまさあ!」
私がその部屋に入るなり飛び込んできたのは、まずその男の姿だった。
次いで、部屋の奥のデスクに座っているサンタ野郎。
男は私に気づき、笑顔でこちらによって来る。
おもわず肩を震わせた。
なにせ大量の血を付着させた人...ラストバレット。3-7
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「はぁっ……はぁ……」
息も絶え絶えに、私は街の中を走り抜ける。夜なのに、気温が高い。
日中にたまった太陽の熱が逃げきれず、町の中を覆っているからだ。
おかげで街中はひどい熱帯夜と化し、その熱で私の体はすぐに汗で湿っていく。
おまけに喉も渇く、息も切れる。だがそれでも足は止まらない。止められない。
...ラストバレット。3-6
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【グミサイド】
目の前には、目隠しをされた男が倒れている。否、倒れているというよりも転がされて放置されているといったほうが正しいだろうか。
黒い帯で手足を縛られ、目隠しをされ、言葉も発せられないように口も縛られていたので、どんな顔をした男なのかは知らない。
しかし、状況が状況だったので、男が不快感に...ラストバレット。3-5
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「ぐっ……」
首筋の痛みを我慢しながら、目を開ける。
目の前に広がったのは、どこかの執務室のような部屋だった。
どこかはわからなかったが……少なくとも警視庁の内部ではないと理解した。
「ターゲットのお目覚めですぜ」
「おう。ようやくか」
目の前には、二人の人物がいた。
一人は赤いスーツを着た女。もう...ラストバレット。3-4
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「課長」
自販機に向かう途中、レンが唐突に言い出した。
「世間話でもしませんか?」
「世間話?なんだ、改まって」
仕事を黙々と進めるレンにしては、珍しい言動だった。
普段からそんなに口数が多いわけでもないが、今日はいったいどうしたのだろう。
「いや、別に大した意図なんてありませんよ。ふと話したくなっ...ラストバレット。3-3
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【海人サイド】
夏祭りの日から、4日後。
「課長さん~、私もう疲れましたぁ~~寝たいですぅ…」
「こら、怠けるんじゃない。寝るなら仕事を終わらせてからな」
「課長さん厳しいですぅ~」
午後8時の、仕事場にて。リンはもう音をあげていた。
朝の9時から出勤して、すでに8時間労働は過ぎ、仕事は残業へと突入...ラストバレット。3-2
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3章「ラストバレット」
「なぁ」
「はい、何ですメイさん?」
「ちっとこいつを見てくれないか。"8番目"の監視役が撮った写真なんだが」
「ほー、どれどれ。……あちゃ、こりゃーやばいですね。いやー、よろしくないですわ、こういうの」
シンと静まり返った静かな部屋に、場違いなほど軽快な男の声が響く。
その...ラストバレット。3-1
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【海人サイド】
「私には……、戸籍が、ないの」
彼女は確かにそういったのだった。
「へ……?」
自分でも思わず、間抜けな声を出す。戸籍って、あの?自分の身分や、出生を証明する、あの?
しばらく解釈に戸惑ったが、そんな俺をよそに、グミは言葉をつづける。
「みんなが持ってる、当たり前のもの。私はそれを持...ラストバレット。2-5
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「あっち?」
「そ、あっち」
彼がそう言って指さしたのは、奥の雑木林だった。別に断る理由もなかったので、うんとうなずく。
本当は、私が彼のことを雑木林へと誘い出し、人目につかない真っ暗な林の中で、殺す予定だった。
周りを緑で囲まれたその場所は、夜になると全く人が通らなくなる。
都市部からもちょっと離...ラストバレット。2-4
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ドーン、と一際大きな音が空に響く。今までのよりも、はるかに大きかった。
それを最後に、長い長い、夢の時間が終わりを告げる。
最後の花火が打ちあがった後も、私たちは動かなかった。ずっと、同じ場所に立っていた。
私がふと気づいてみると、周りの観客たちは、もうあまりいない。「虹色の綺麗だったねー」とか「最...ラストバレット。2-3
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夏祭りということで、駅前はすごい数の人混みだった。
普段は駅前でさえ人通りも少ない、田舎なのに。
「あ、こんなとこにじゃがバターのお店が!買っちゃお。グミもどう?俺好きなんだ、これ」
ニカっと、彼は笑った。私はとりあえず、うんとうなずく。別に嫌いな食べ物ではなかったし、軽く小腹も減っていたから、何か...ラストバレット。2-2
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2章「夏祭り」
三か月後――。
【グミサイド】
私が暗殺すべきターゲットこと海人――とコーヒーショップで出会ってから、三か月が経った。
私は彼に夏祭りを誘われてからというもの、彼にコンタクトを取り続けた。
理由はもちろん、殺すため。それ以外の理由なんてない。任務達成のためにも、彼とはより親密にならな...ラストバレット。2-1
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【海人サイド】
仕事場に戻ったのは、夜の11時を過ぎてからだった。
あの子と話をしていたら、すっかり遅くなってしまった。
やれやれ、最近は時間が経つのも早く感じる。時間の有限性というのを、ひしと感じる今日この頃。
予定より遅くなってしまったから、課員たちも怒っているだろう。いや、もしかしたら心配して...ラストバレット。1-6
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「な、夏祭りィ!?」
「そ、夏祭り」
彼は軽快な口調で誘ってきた。
口調が軽快な割には、その内容が軽快なものではなかったので、私は声を大きくして聞き返してしまった。
「今度の夏さ、一緒に夏祭り行かないか?」
そういった彼の涼しげな顔ときたら、まるで軽い頼み事でもしているかのようだった。だから私は流れ...ラストバレット。1-5
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メビウスの輪、というものがある。長い長方形の形をした帯の片方をひねって、そのままテープなんかで、端と端をくっつけると、それは簡単に出来上がる。
ひねらずにくっつければそれはただの輪っかだが、メビウスの輪は少し違う。
テープでくっつけた部分を始点として、そこから帯の真ん中に、ボールペンか何かで線を引き...ラストバレット。1-4
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ふっと隣を見ると、ちょうど20代半ば……私より2歳くらい年上に見える青年が、そこに立っていた。
仕事帰りなのだろうか、スーツを着ている。
そして……身長180cm位はあるだろうか?高い背丈と、服の上からでもわかる筋肉の量。
きっと普段から鍛えているのだろう、足にも腕にも充分に筋肉がついている。それで...ラストバレット。1-3
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5日後。
例の依頼人から頼まれた仕事の一つは、予想より早く終わった。意外にもこの五日間で終わり、残りの仕事はあと一つ。それが終われば、またしばらくは誰も殺さず、休めるはずなのだが……。
「はぁ……」
とあるコーヒーショップにて、私はため息をつく。ブラックコーヒーをすすりながら。
「いや、これもうどう...ラストバレット。1-2
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【ワンクッション】
おこしいただきましてありがとうございます。
本作は悪ノPによる「最後のリボルバー」の二次小説となっております。
二次小説なので自己解釈多めです。
悪ノPさんの物語と大分世界設定異なっておりますw
その点、ご注意くださいませ。
この話のモデルとなった神楽曲はこちら http://w...ラストバレット。1-1
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私ね、実は、知ってたんだ。
君がクラスメートの、あの子に、いじめられてたって事……。
肉体的にじゃなくて、じわじわと精神的にいたぶるいじめ。ホントにじわじわと、相手の心を締め付ける。だからタチが悪い。
相手を思いっきり水浸しにするとか、そういうのじゃなくて。
物を盗むとか、机に落書きをするとか、クラ...I am a broken umbrella 2
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人間なんて卑怯で臆病な生き物だと、人は言う。
いざとなったら自分の事しか考えない。
自分を犠牲にしてまで、他人を助けるなんて、人間はそこまで親切じゃない。
そりゃ、うわべばかり親切な人なんて、いくらでもいる。
自分の立場とか、命とか、そういうのが危機にさらされたら、いくらなんでも、余裕なくなるでしょ...I am a broken umbrella
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♯エピローグ「いつだって」
ウチがビイベックスをやめると提案した時、会社の人は残念がるよりも、ただ驚いていた。
入ったばかりで、どうして?と当然ながら聞かれた。
“初心に帰りたくなったので”
“初心?”
三年前を思い出す。高校を卒業し、音楽の仕事を始めてから一年目。
その時フリーだった私は、ギターだ...空の向こうの淡き光 12 【終】
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「久しぶりだねぇ、ルカ」
ウチは、先程自動販売機で買ってきたホットの缶コーヒーをごくりと一口飲んで、言った。
「えぇ、まぁ」
「ん~?ルカ、どしたの?元気ないですねぇ」
「仕事帰りで疲れてるからね。逆にグミは何でそんなに元気なのよ」
「いや~ははは、だって懐かしいんだもん!四年ぶりでしょ?そりゃテン...空の向こうの淡き光 11
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「ルカ、ねぇ、帰ってないの?」
ウチはすがる思いでドアを叩く。彼女がどうか帰ってきていますようにと。
築三十年のアパートの一室、一○一号室がルカの自宅だった。
チャイムが壊れているから、ドアを叩いて来訪を知らせるしかないのだ。
「ルカ、ねぇルカ……!」
何度呼びかけても返事は帰ってこない。その度に不...空の向こうの淡き光 10
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困る事なんてきっとない。……そんなことはなかった。
ビイベックス社に所属になってから、一週間後。
「つっかれたぁ」
その日自宅に帰ってきたのは夜の十時半。朝九時から中々ハードなスケジュールだった。
まず氷山のサポートメンバーとして、九時から十二時まで曲のセッション。
休憩一時間を挟み、一時から六時ま...空の向こうの淡き光 9
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♯3「二人の距離」
N市市民ホールでの公演の件から、次々にいろんなオファーが舞い込むようになった。
あの後、次はウチのホールでもやってくれと頼み込んでくるお偉い方が何人か来た。
それ自体もウチを驚かせるには十分だったが、一番びっくりだったのは有名なレコード会社からメジャーデビューの誘いまで来たことだ...空の向こうの淡き光 8
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「次に演奏する曲で最後となります。五曲目はなにを演奏するかわかります?ふっ、わからないでしょ?ではここでクイズ!ウチが次に演奏する曲のタイトル言い当てたら先着一名様に百万円あげちゃいましょー!!」
市長との話し合いから一カ月後の、八月某日。N市の市民ホールの舞台にて、ウチはマイクを片手に喋っていた。...空の向こうの淡き光 7
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それから3カ月後。
つい先日、ウチに単独公演のオファーがあった。
その時氷山のコンサートに偶然訪れていたとある市長がいて、ウチの演奏がその市長の目にとまったらしい。
氷山のコンサートなのだから、本来注目すべきは氷山なのだけれど、何故だか市長はウチの演奏ばかりを見ていたようだ。聞けば趣味がギターを弾く...空の向こうの淡き光 6
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ライブが終わった後、近くのホテルの一室で一人寝転がりながら先程の事を思い返していた。
まさか彼に紹介されるなんて思っていなかった。サポートメンバーなのだからただ楽器を弾いて、それで終わりかと思っていたのに。
あの観客たちの一万人の目。それが印象に残って頭から離れない。
ルカも、今頃は立派なシンガーソ...空の向こうの淡き光 5
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♯2「グミの四年後」
ウチらが高校を卒業して四年が経った。
ある日の事。
「皆さんこんにちは!今日はこの暑い中、俺の歌を聞きに来てくれてありがとう!」
アーティストが舞台の真ん中で堂々と叫ぶ。すると観客席の方からは、それに反響させるように「わー」だの「うおー」だの「いえー」だのと返事が返ってきた。観...空の向こうの淡き光 4
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翌日、放課後の音楽室――。
「んん~これがこうなのか、それともこうか!」
グミは先程からしきりにギターの弦をいじりながら、何かを思考錯誤しているらしい。
弦はグミの手によって音を奏でられている。その様子を、ルカはちらちらと見ていた。
「さっきから何してんの?」
「とりゃ!これでどーだ」
どうやらグミ...空の向こうの淡き光 3
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「あー……背中痛い。何だよ何だよ。ちょっとじゃれただけじゃんか」
先程まで尻に敷かれていた背中を、丁寧にさすりながらグミは愚痴をこぼした。
「時と、場合を考えて。やっていいこととやっちゃいけないことの区別もちゃんとつけて」
「やっちゃダメだった?」
「当たり前でしょ。人が熱いお茶持ってるのに、こぼれ...空の向こうの淡き光 2
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♯1『夢の話』
「うわっちっちっ……んくんく、ふー……やっぱり練習後に飲む緑茶はたまらないですなぁ~」
「放課後ティータイムってやつですね。ふふ、漫画みたいですよね」
午後三時二十五分。時間的には学校の六時限目が先程終わったところで、音楽室の窓からは温かいふわりとした日差しが差し込む。
その光を浴び...空の向こうの淡き光 1
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その女子高生三人は、リリィちゃんが亡くなった事をその時は知らなかったんだろうね。彼女の死については、会話の中には全く出てこなかった。
私はその女子たちの会話を、バカみたいだなって思ってた。
女子高生三人が、冗談を交わして雑談だけに思った。でも今思えば、そんなバカらしい事も信じてしまうかもしれない。
...セルフ・インタレスト ―あとがき― 3/3 (おわり)