タグ「小説」のついた投稿作品一覧(8)
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「7文字の伝言」
私のマスターは、忙しい。毎日毎日、早朝から夜まで働いて、休みはリアルにクラシカルバンドの練習に行ってしまう。私がマスターに逢えるのは…いや、私が起きるのは必ず夜。インストールされたのも夜中の1時を過ぎていた。
液晶がマスターの顔を照らす…電気代をケチっているのか、エコなのか、部...【企画用ボツ】七文字の伝言【アペンド発売記念】
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「ノイズ」
無音の筈の部屋、布団の中。左に目をやるとうっすら光るデジタル時計、23:56。
隣の部屋から番組のEDらしき音と「また来週」の声。続くタイミングの出来過ぎた拍手。
耳障りだが、騒音と呼べる程のデシベルではなく、抗議する気持ちもなく、ただ
「……」
というホワイトノイズのような気持ちが流れ...【超短編】ノイズ【小説】
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雨がやんで、雲がみるみる北東へ進む。街灯の光が弱まって見えた。
そんな時大きな車が近くで止まった。すぐに人が出てきてこちらに走ってくる。
「誰か居るぞ!あれ…『初音ミク』じゃないか?まさか新曲の噂は…」
「初音ミクちゃん!何故YUKOさんのお宅の前に居るのかな?」
ユウコ…さん?どこかで聞いた。昨日...【小説】契約理由 4【最終話】
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地域ごとにコミュニティーがあるらしく、定期的にオフ会をするらしい。
カスタムして、ネルやハクなどに調声されたミクも居るらしい。
「ミクは特によくカスタムされるらしくて。これだけ素を保ったミクは久しぶり…マスターが素のミク(声)を使いこなしてる証かもね」
「そうなの…かな?他を知らないから。でもレッス...【小説】 契約理由 3
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仕事の時間が終わるともとの少し冷たい印象に戻った。これから出掛けるようだ。
「マスター、行ってらっしゃい」
ミクの笑顔に応えはしなかった。ドアが閉まると同時に、穴が開いたような気分になった。
仕事中はあんなに熱心に指導してくれるのに。音楽や歌に対する強い情熱に少し驚いたほどなのに。どうして私(ミク)...【小説】契約理由 2
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「はじめまして。初音ミクです。これからよろしくお願いします」
ミクはマスターとなる女性に深々と挨拶した。マスターはミクを上から下まで見てから、入って。とあまり抑揚なく言った。
ミクはハイと笑って、家の中を見渡しながらついて行く。大きな一軒家だ。立派な家具や装飾品が置いてある。ちょっと恐縮する位だ。
...【小説】契約理由 1
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眼前に広がるは全てを飲み込む黒と、長い時を経て届いた小さな光たち。
手の先には希望の旅の途中だった宇宙船。
ヘルメットの中に真球の小さな水が浮かび、ぶつかって大きくなっていく。
真空、届く筈の無い等速に離れていく船の中の仲間を、音割れする程の声で叫んだ。
『リン、君は』
全てのデータ、出逢ってからの...【小説】等速で、あたためるように
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ごとんごとんとやや荒い、しかし心地よいリズムが続く。
駅の間が長い為にこの金切り声をあげない一両のリズムが体を揺らす。
青く波打つ稲とそれを追い掛ける雲。遠くで手入れをしているのか、麦わらに首に手拭いらしきものをまいている夫婦が緩やかにスライドしていく。
傍らにはスポーツバックと紙袋。日差しにキラリ...君の街へ(SS小説版)