タグ「小説」のついた投稿作品一覧(11)
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遅い夏が終わり、短めの秋にさしかかった。
今日は風もなく穏やかな天気だ。
そういえば校舎裏の焼却炉は取り壊しになるとのことで、
業者の人間が何人か来ていた。
あの場所が姿を変えることで、一つほっととしている。
初音先輩も立ち直り、合唱コンクールに向けて頑張っている。
俺とクラスメートの仲はまだギクシ...【レンネル小説】少年は嘲笑(わら)われる。#11
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初音先輩。優しげで笑顔が眩しくて、
その日先輩を見られるだけで俺は幸せになれた。
振り返る仕草にドキドキした。
白い首筋に目を奪われた。
決して足は速くなかったけれど、
走ってるフォームはとても綺麗だった。
この世界の醜さなど何も知らないであろう無垢な瞳。
鈴を転がしたような可愛らしい声。
誰に対し...【レンネル小説】少年は嘲笑(わら)われる。#10
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カルト宗教がよく使う手口にこういうのがある。
新しく入った信者を街中に立たせ声かけをやらせる。
「あなたの幸せを祈らせてください」とかなんとか。
信者は多くの人に無視されるような状況を体験し、
自尊心を破壊されたところで、神が救いを差し伸べる。
“無力なおまえには神が必要だ”と。
つまり、問題と回答...【レンネル小説】少年は嘲笑(わら)われる。#09
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亞北が引き起こした一連の行動、その動機は今もわからない。
それでも俺は、その動機をひねり出さなきゃならなかった。
そうでなくては精神が持ちそうにない。
結局、さんざっぱら悩んで出した解答は《愛情表現》・・・
つまり亞北は俺のことが、たぶん好きなんだと思う。
自分で言ってても釈然としない、酷く歪んだ愛...【レンネル小説】少年は嘲笑(わら)われる。#08
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運動部のかけ声やセミの鳴き声、学校近くを走る電車の走向音が混ざり合い、
その喧噪は、やがて空気の中へ溶け込んで判別できなくなる。
風はなく、陽に炙られた地面が熱を蓄え、無容赦に俺たちを蒸し上げた。
「こんなとこに2人でいたら、私たち噂になっちゃうよ」
衿元の両端をつまんで前後に動かし、胸元に溜まった...【レンネル小説】少年は嘲笑(わら)われる。#07
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気がつくと俺は学校へ向かう通学路を歩いていた。
朝起きて、何を食べたのか、何を喋ったのか記憶にない。
ただ習慣に従って動いていた。
周りの生徒の会話が遠くに聞こえる。
感覚が鈍化し、まるで頭からガラス瓶を被っているようだ。
一歩クラスへ踏み込むとサッと教室の空気が冷え、
そこで初めて明確に時間は...【レンネル小説】少年は嘲笑(わら)われる。#06
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暗中わけのわからない悪意に狙われて、あれからずっと嫌な思いを引きずっていた。でも今日に限ってそれはない。登校しクラスへ一歩足を踏み入れれば、衆目が俺を捉え、相変わらずおかしな空気になる。でも俺の視線が先に来ていた亞北と合わさると、そんなことどうでもよくなってしまうからゲンキンなものだ。窓際の亞北は...
【レンネル小説】少年は嘲笑(わら)われる。#05
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亞北と俺は人目の少ない校舎裏へ移動してから改めてケータイの画面を視た。ひったくるようにケータイを奪った俺に少し面食らっている亞北、それに気づいて一言謝ってから、もう一度詳しく話してくれと頼んだ。亞北は何について謝られたのかわからなかったようで、キョトンとしてからゆっくりと話し始める。
「最近でき...【レンネル小説】少年は嘲笑(わら)われる。#04
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あのお調子者はもう俺のことを弄ってはこない。完全に無視を決め込んでいる。あいつとの関係はこの程度でもよかったが、クラスの俺に対する空気感はよくない。あからさまに攻めてくる奴はいないけど、口には出さずとも心のどこかで俺を怪しんでいることが微妙な態度で伝わってくる。すぐに飽きるだろうとタカをくくってい...
【レンネル小説】少年は嘲笑(わら)われる。#03
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うちの担任教師は歳も若く、生徒達からはメイコ先生の愛称で親しまれていた。中には馴れ馴れしく「めーちゃん」と呼んで絞られた奴もいる。そんな先生が昼休みに「鏡音くん」と階段の踊り場から下を覗くようにして俺を呼び止めた。「ちょっと来てくれない?」声のトーンは穏やかだ、でも、例の件についてだなという察しは...
【レンネル小説】少年は嘲笑(わら)われる。#02
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いったいどこから狂ってしまったのだろう・・・
初音先輩に告って見事に玉砕したあの時か・・・いや、先輩の返事がどうであれ、それ以前に俺が告白してもしなくても、この事態にはおちいっていたに違いない。あいつだ。すべてはあいつが俺の日常に侵入した時から狂いはじめていた。あいつはいつからこうなることを考え...【レンネル小説】少年は嘲笑(わら)われる。#01