タグ「VY1(MIZKI)」のついた投稿作品一覧(25)
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とある雨上がりの街の片隅に響いた美しい音色
空に向かって通る、澄んだ歌声
それに爽やかな声が重なっていた
二人で紡がれる旋律
それは人々の心に優しく届いていた
「あ、ミクリが歌ってるよ、レンファル」
「ほんとだ。カイリの声も聞こえるよ、リンファ」
「相変わらず仲が良さそうだな」
そんな街...碧い蝶―小説版― 終章
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「目が覚めたみたいだね」
「ミズナ、今の……」
「君達の来世かもしれない未来だよ」
来世、と小さく呟いて海玖理は肝心なことを思い出した
「結局、どうなったの?」
「……やっぱり人の子は壊すことをやめていないね。未来でも」
皆の顔が曇る
でも、と水菜は続けた
「人は壊すだけじゃない……直すことも...碧い蝶―小説版― 50話 碧い蝶
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『ふん……やはり影響を受けているな』
「森が汚れているんだね。心が曇ってしまっている」
二人は海玖理の動きを見ていた
彼女の本質がまるで変わってしまっている
『このまま時が進めば、結果はより悪化するのだろうな』
「待って、わからないよ。ほら……」
「あれ、今日は出るの?体育、持久走だよ?」
「う...碧い蝶―小説版― 49話 もっとずっと
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『我に人の子が世界を壊し続けることを黙って見ていろと言うのか』
「黒の君……」
『そういうことなのだろう?この世界で、皆と共存しようと、そういうことなのだろう?……無理に決まっておろう。君の話は理想だ。夢物語にすぎぬ!』
言うなり、黒は翼を広げる
光が集まったかと思えば、それを躊躇なく放ち始めた...碧い蝶―小説版― 47話 説得
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「そもそも、私達は人間じゃないの?」
「幾度も転生を繰り返す中で、君達は人間に溶け込んでいった。人間と言って構わないと思う。だけど、色の運命を背負ったままなんだ」
「運命?」
「色同士は決して結ばれない」
その言葉に、海玖理と海理が言葉を失った
「君達は人間のように生きて、そして死んでいく。その時...碧い蝶―小説版― 46話 奪うなら
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黒を見た瞬間、戦慄が走った
頭の奥で警鐘が鳴る
これは、関わってはならないものだ
直感が告げた事実に、海玖理はそこを飛び出した
広い屋根に飛び、白を見つける
「ミズナ!」
「ミクリ!」
そして
「カイリ……?」
視界に映ったのは、赤に染まる兄の姿...碧い蝶―小説版― 45話 消滅
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「ミクリ!」
「もらったー!」
海理がこちらへ来ようとしている
でも少年のことを見張っていた彼では間に合わないだろう
もう駄目かと海玖理が覚悟をしたその時
「えっ!」
「な……」
「ミクリ……」
「どうして……どうして……!」
海玖理の目の前に現れたのは、揺れる長い桃の髪...碧い蝶―小説版― 44話 涙
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「名前は、ないの?」
「白……とは呼ばれていた」
「それは名前?」
「いや……どうかな?」
海玖理と海理と三人で屋根の上に並んで座る
彼女達には神の使いのような存在だと思われていた
「不便ならば、適当に呼んでくれて構わない」
「そうね……ね、どうしようか、海理」
「え?そうだな……あ、じゃあミズ...碧い蝶―小説版― 43話 雪の白
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それは、今から七百年前の物語
白い僕は、転生した色達に出会った
とある武家の姫に仕える、忍びの兄妹
それが海理と海玖理だった
その家はここ最近で力をつけ、周りからは常に狙われていた
姫もまた美しく、求婚が絶えなかった
刺客は多く、姫は常に危険に晒されていた
そんな姫の護衛の任務を与え...碧い蝶―小説版― 42話 忍ぶこころ
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「何これ、気持ち悪い」
「気持ち悪いって……」
「だってー」
「何故そんなにそっくりなのだ?」
合流した一行は、魔導師達の力を借りてサークルス城へ来ていた
そして海玖理と緑の水菜、海理と青い水菜を並べていた
「説明するわ」
こほん、と咳払いを一つして
緑の水菜が皆を見渡した
「それぞれ聞きた...碧い蝶―小説版― 41話 はじまりの色
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「ミズナ、私隣町に行ってくる!」
「わかった。僕も行くから落ち着いて」
「え?」
にっこりと海玖理に微笑みながら、水菜はもう一人の自分の気配を感じていた
こちらに近付いてきている
黄色の気配
桃色の気配
青色の気配
そして目の前の緑
「時が来る、か……」...碧い蝶―小説版― 40話 合流
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「痛たたた……」
海理が目を開けると、そこには同じ顔が二つあった
「魔導師、見つけた!」
「助けてよ!」
「…………またか……」
先程から一体何なんだろう?
魔導師?誰が?
「あの、僕は――」
「あれ?なんか違う」
「レンファル、こいつ顔はそっくりだけどよく見たら違うよ。ミズナの方が格好良かっ...碧い蝶―小説版― 39話 片割れ
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「まさか、こんなところに女王がいるなんてな……」
「ディグナの離宮に行って、その後に行方不明になった……噂は本当だったんだな」
「もうそんな話が出回っているのか……」
男達に囲まれながらも、女王には緊張感がなかった
この状況でよく無防備でいられるものだ
「それで?お前達は我に何用だ?」
怯むこ...碧い蝶―小説版― 38話 質問
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「あっちが合流したのか……」
男は女王の気配を追っていた
それが、先程自分と対をなす気配と合流した
彼女が一緒なら心配はないだろう
それに、今彼女らと会うわけにはいかない
彼女の傍には今、会ってはならない者がいるからだ
「ミクリをずっと放っておくわけにもいかないな」
水菜は隣町へ向かって...碧い蝶―小説版― 36話 失われた心
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「ならば、そなたは魔導師ではないということか」
「そう、です」
「すまなかった……早合点してしまったようだ」
「いえ……似ていたのなら、仕方ないですよ」
取り乱していた彼女が落ち着くのを待ってから話をする
誤解は解けたようだ
「確かによく見れば違うな……それにしてもよく似ている」
まじまじと見...碧い蝶―小説版― 35話 複雑な気持ち
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青い髪の青年は空を見上げていた
まだ、これから進む道が決まらない
やっぱりこの町には海玖理はいなかった
捜しても捜しても、意味が無いのなら……
「受け入れるのか?諦めて……」
それでどうしようというのか
まだわからないと、足掻き続けるのか
潔く現実を受け入れるのか
決められない
「あ...碧い蝶―小説版― 34話 甘え
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「オレ達を助けに?女王の間違いじゃ――」
「確かにそうだ。でも、僕は君達も助けに来た」
双子は顔を見合わせた
一体どういうことだろう
男の微笑みは変わらず優しげで
二人は戸惑いながらも、話を聞くことにした
「君達は、大国の姫の抱える魔導師だね。今も姫の命で動いている」
少年が黙って頷く
「...碧い蝶―小説版― 30話 作戦
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双子は肩で息をしていた
対する青年は涼しい顔のまま
あろうことか、最初に立っていた場所から微動だにしていない
それが余計に苛立った
二人がかりでも歯が立たない
かといって、ここで引くわけにはいかない
ディグナの王を手に掛けてしまった
ここでサークルスの女王を逃がしてしまったとなれば、...碧い蝶―小説版― 29話 行動の真意
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「出会ったか……」
少年は急いでいた
こちらに向かっていた、魔力
それが、少女に出会った
それは無視できないもの
きっと自分たちと同じもの
「リンファ……」
彼女はすぐ力を使う
それも大きな力を
強大で、巨悪な力...碧い蝶―小説版― 26話 力の強さ
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「貴方が、サークルス国の現女王、ルチカ・サークルスですね?」
「ええ……そなたは……」
「魔導師、と名乗っておきましょうか」
突如現れた、青い髪の優しそうな青年
しかし彼は、今女王の目の前で強大な攻撃を打ち払った
普通の人間でないことは一目瞭然だ
「助かった、のか?」
「まだ安心はできませんよ...碧い蝶―小説版― 25話 自分の力
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この国とディグナ国との同盟が結ばれたという情報を得て、海玖理は町を出た
このままここにいても、海理とは会えないだろう
戦争が終わるのなら、きっと彼も帰ってくる
もう戦火に怯えることがないのなら、一度街へ戻ろう
そう決めて海玖理は廃屋を後にした
「本当に良かったの?」
「僕が一緒じゃ迷惑だっ...碧い蝶―小説版― 17話 擦れ違い
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隣町に着くのに、さほど日はかからなかった
やはり国境から遠ざかるということもあるのだろう
戦火に怯えることはなかった
途中、獣道を通ったが、水菜も泣き言一つ言わず、しっかり歩いた
その道中は他愛もない話をした
すっかり打ち解けたようで、気付けば彼女の口調が砕けていた
しかしお互い、相手...碧い蝶―小説版― 16話 捜索
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「ミクリ?ミクリ!」
青年は駆けだす。前を歩く彼女へと
「ミクリ!」
がしっと腕を掴み、こちらを向かせる
だが
「……ミクリじゃ、ない?」
「あの……」
「わ、ごめんなさい!」
ぱっと手を離す
目の前の彼女は驚いていた顔を徐々に笑みに変えていった...碧い蝶―小説版― 13話 悪と正義
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「ミズナ、おはよう」
「おはよう、ミクリ」
爽やかな笑顔に跳ねる鼓動
少女は頭を振った
彼は海理じゃない……!
そう言い聞かせていると、水菜がこちらを見ていることに気付いた
「?」
「あ、ごめん。じろじろと……百面相が可愛いなと思って」
「か、かわ……」
顔が熱くなるのを感じ、海玖理は目を...碧い蝶―小説版― 10話 戸惑い
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「つ、ぐみ……」
海玖理はその場を動くことが出来なかった
未だに状況を把握できない
一体、今彼女に、この場に何が起こったのか
ただ一つ確かなのは、もう彼女は動かないということ
「……ツグミ、ツグミ……」
手が震えている
息がうまく出来ない
彼女から目が逸らせない
もうそれはただの塊と...碧い蝶―小説版― 7話 戦慄