「マスター」「まーすーたーあっ」
「「暑いよー、プール連れてってー!」」

ガチャリと開けたドアの隙間に ひょこひょこっと顔を並べて、双子の声がシンクロした。

「リンレンもか……どうしたの急に」
「暑いんだもーんっ」
「カイト兄が海だプールだ言ってたからさー、良いなぁって。なー」
「ねー」
「……ヤツのせいか」

仲良く顔を見合わせるレンとリンは微笑ましいが、話の内容が宜しくない。
この炎天下に冷房の効いた部屋から出るなど、何としても避けたいのだよ。まったく、KAITOめ。

「マスター?」「何々?」
「いやこっちの話。止めときなさい、暑いから」
「や、暑いから行きたいんだって」
「行こうよープールー」

両脇に取り付いておねだりしてくる黄色い子達。
大変に可愛らしいのだが、それはそれ、これはこれだ。

「いやいや、冷静に考えてごらん? 行きも帰りも炎天下の行軍だよ?」
「う」

一応マイカーという物も持ってはいるが、行くなら全員でになるだろう。残念ながら私の愛車はワゴンなどではなく軽、大所帯を収容するにはコンパクトすぎる。
つまり、歩き+公共交通機関で行かなくてはいけない訳で。

「ちょっと外に出てきてみる? あの べとっとまとわりつく暑さの中、日光に焼かれながら移動するんだよ。帰りなんか疲れた体にはキツイでしょう」
「う、うーん」「イヤかも……」
「疲れて寝ちゃっても、ひとりならカイトが頑張ってくれるだろうけど、ふたりは無理だよ。私とめーちゃんで頑張る事にはなるだろうけど」
「「……」」

ふたりが怯んだ隙に畳み掛ける。帰りの可能性まで示唆すると、曇り顔で考え込んでしまった。そこで「ちゃんと自分で歩ける、大丈夫」という自信はないんだな、キミタチ。
しかし好都合ではある。これ幸いと話をずらす。

「ね。あぁそうだ、アイスでも食べなさい」
「「アイスっ!」」

暑い時にはコレでしょう。魅惑の最終兵器(……兵器?)を提示すると、向日葵色の頭が ぱっと上向いた。
が、躊躇うようにまた曇り顔になる。

「……だめだよマスター、カイ兄怖いもん」
「もう残り少ないって騒いでたぜ」

あぁ、成程。
しかし ふたりにも魅力的な提案だったんだろう、目が迷っている。

「いいよそれは、また買えばいいんだから。というか了見狭いな、お兄ちゃん」
「アイスが絡むとねー」
「目がマジだもんなー」
「まぁいいから。文句言われたら私が許可したって言いなさい」

買ってるのは私なんだし、丁度『アイス抜きの刑』執行も決めていたことだ。
アフターフォローの保証も付いて、今度こそ ふたりとも満開の笑顔になった。

「わぁ、やった!」
「ありがとーマスター! うし、早速行こうぜリン」
「うん! 何味あったっけなー」

声を弾ませて駆けていく双子を見送って、大きく息を吐き出した。
ふぅ、やれやれ。

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  • 非営利目的に限ります
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*プール賛歌* 【今度はリンレン】

『夏海讃歌』(http://piapro.jp/t/l_7x)の若干続きですが、これ単体でも読める、と思います。
マスター、プールくらい連れて行ってやれ。

なんと初投稿の『竜煩い』以来、小説に限れば初めての、KAITO不在です。『KAITO』タグ付けないのって変な感じ…!

リンレン初書きなんですが、ちょっと幼くしすぎましたね; 14歳だよ あの子達…。

 * * * * *
若干続きました↓
『アイス哀歌』(http://piapro.jp/t/NGwz

同家でハロウィンネタ↓
『trick×treat!!』(http://piapro.jp/t/ihuN

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ブログで進捗報告してます。各話やキャラ設定なんかについても語り散らしてます
『kaitoful-bubble』→ http://kaitoful-bubble.blog.so-net.ne.jp/

閲覧数:333

投稿日:2010/08/16 17:03:49

文字数:1,200文字

カテゴリ:小説

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