「答えがひとつとは限らない。それを確認する術ももうじき消えてなくなる。ほら君のすぐ目の前にいるその名前をさあ言ってごらん。この僕の名前を。」
今度ははっきりと意識があった。しかし、口も手も自由に動かせなかった。まるで始めからそうなることが決まっているかのように、所定の位置に腕が動き、口が言葉を紡いだ。
僕は今までと違っている状況に戸惑いながらも、冷静に今の状況を理解しようとした。
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これは…もしかして…僕自身が『鏡音レン』になっている!?
いや、元々僕は『鏡音レン』なのだが、本の中に、半世紀前の事件に登場した『鏡音レン』の立ち位置に今僕は置かれているのか?
もし、それが正しいのだとしたら、この場面は探偵が毒薬を飲み最後の台詞を言ったところだ。目の前にはリンという名の少女がいる。

「どうして、貴方は…貴方自身が傷つくことで誰かを護ろうといつも考えてしまうの?」
さっきの『ナゾトキ』の話はここで終わっていたが、『ナゾカケ』はその先にも話があった。『ナゾカケ』は『ナゾトキ』の続編ということだろうか?それにしても彼女は何を言っているんだ?この鏡音レンが語った真実では、彼は我欲のために罪を重ねたように見えたのだが…

「さあ、何のことかわからないなぁ?」
僕の口が開き、僕の考えていることと同じ事を話す。しかし何故だろう、僕の声は僅かに震えているように感じた。

「ごまかさないで…」
少女は声を荒げることすらなかったが、はっきりとした口調でそう言った。

「最初から私に目隠ししたのは貴方ね。」

「…」
僕は黙っている。

「レオンはまず貴方をこのパーティー会場に案内した。彼は自分の命が何者かに狙われていると思っていたわ。事実、彼の元には何通もの脅迫状が届いていたわ。本来の貴方の役目はパーティー会場でいち早く怪しい動きをしている人物を見つけレオンに教えることだった。でも、貴方はその時点で既に怪しい動きをしている者に気づいてしまった。」

「…」
僕はまだ黙っている。

「それは…私ね。」
僕は口を開き何か言いかけたが、思い直したようにまた口を閉じた。

「私はこの部屋で、レオンの隙を狙っていたわ。アイツが何人もの女と浮気していることを知ったから。それも、長い間ね。」
僕は眼を伏せる。

「貴方はナイフを持つ私に気づくと、レオンに別室からパーティーを見たいと提案したわね。内心気が気ではなかったわよ。貴方が私のことをレオンに喋ってしまうのではないかと…でも結果は同じだったわね。彼は毒で死なずともいずれナイフで死んでいたのよ。」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

犯人の物語―episode3 ナゾカケ①―

ひなた春花さん(http://piapro.jp/haruhana)の・ナゾカケ(http://piapro.jp/t/WzK5)を小説にさせて頂きました。
いよいよ犯人の物語も最終章です。自分の中でもこれほど上手く伏線が織り込めなかった作品は珍しいくらいですが、ここまでお付き合い頂きありがとうございますm(_ _)m
勿論、全て僕の実力と計画不足が招いた結果ですので、原作者のひなた春花さんは全く悪くないです。ホントすみません。それでも、完結までついてきてくださると嬉しいです。


続きはこちら(http://piapro.jp/t/grBW

閲覧数:240

投稿日:2011/06/01 15:33:41

文字数:1,127文字

カテゴリ:小説

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