注この作品には性的な表現が含まれていると思います
前話をお読みいただけるとありがたいです
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いつものように絵を描いていると、画商にこう言われた。
「天才同士の対談企画、やってみないか?あの人はちょっとおかしいけどな」
「天才とは見方を変えればただの異常者でもある。面白そうだ、やってみたい」
「じゃ、セッティングしておくよ」
そんなことを言われたのが…いつだっけ。ああ、ボケが始まってきたかもしれない。
しかしそんなこんなで対談をすることを決め、今日はその当日。
いつもより少しマシだと言われた服を着る。スーツらしい。そして対談部屋に入る。
「…こんにちは」
「…どうも」
お互い警戒しているような声。相手の第一印象は…おとなしい女性。
「初めまして、ところで画家には2種類あると思うの。誰に何を言われても自分の世界を守り、自分の好きな物だけを描き続ける画家、相手の言うことを鵜呑みにして、相手の言われるがままに描く画家。あなたはどちら?」
「…好きなものを描き続けている。正直、なぜ評価されるのがわからない」
「あらそう、ではあなたは何を描いているの?」
「『感情』」
「あらそう、私はウサギ。どう思う?」
「…普通に可愛い、だな」
「世間ではウサギは性欲のシンボルだ、とか言って私を淫乱とか売女とか言って、売れているのは枕営業とか言う人が言うのよ。私は男性より小さな女の子が一番好きだというのに」
「…人の性癖はそれぞれだ」
「あらそう、そう言えば、性欲っていろいろあると思うけどどう思う?」
「女児性愛も一種の性癖、性欲だとは思うが…」
「そうじゃないわ。例えばゲーム、ビデオ、小説、マンが、それらに性行為が描かれているでしょ?私が思うに、それらを見たり読んだり作ったりするのは一種の性行為だと思うの。つまり世の中、性に溢れているわ。でもあなたは目が見えないのよね?という事はミラクル未経験かしら?」
「…目が見えなくても、相手がサポートしてくれれば性行為ぐらいはできるが…」
「あらそう、じゃあ未経験ではないの?」
「……いや、それは…」
「プライベートすぎることはNG、だよな」
「あ、ああ」
「了解」
淡々と喋る女性。過激な内容でも声はとても落ち着いている。
「俺が徐々に空気となっているな。てか、まだ対談始まってないのによくしゃべるな」
「お喋りは好きよ。おかしな事を言う女だと思う?会話っていうのはね、ある方向から見れば正常で、ある方向から見れば異常で、コロコロ変わるものなのよ。女心のように」
「…無表情の前髪ぱっつん女のくせに」
「前髪は切るのに失敗しただけ。そもそも私が無表情なのは…」
ああ、ダメだこれ。話が長くなるパターンだ。
その後、時折画商のツッコミが入りつつ、無駄話の多い対談を半ば強引に進めていった。
「ウサギが性欲の塊だと誰が言ったのかしら。性欲が激しい獣ってほかにもいると思うのよ。例えばそこに座っている馬鹿な男とか」
「誰がバカだこの前髪ぱっつん女」
「8×5は?」
「え?あー…52?」
「40よ」
「8の段は卑怯だ」
「2×4」
「…24?」
「はずれよバーカ」
「計算くらい出来なくたって画商にはなれるんだよ!」
「基本、売値買値の計算は私がしているのだが…」
「あ、私の場合もそうね。やっぱこの男馬鹿ね」
「うっせえ前髪ぱっつん女!」
目が見えなくてもわかる、これはただの喧嘩だ。
「あら、キャンキャンキャンキャン子犬が鳴いているわね。自分をかっこいいシベリアンハスキーだとでも思っている柴犬が。語尾にワンをつけなさいよ、柴だわん。じゃないと絵を燃やすわよ」
「俺の名前は柴だわんじゃなくて柴 太一(しば たいち)、いちを英語のワン読みでの皮肉ありがとうだわん」
「あらやだ可愛くないわ」
「てめえが言えつったんだろ!」
なんだろう、この対談の進まない具合、脱線具合。
「あ、そう言えば、私の弟に会ってみない?」
「弟?」
「それはやめたほうが…」
「馬鹿な男は黙ってて」
「…前髪ぱっつん女のくせに」
タバコの煙をスパーと吐く音が聞こえる、画商だろう。
「私と話をした人が基本的に変な人を見る目で私を見たりするの、でもあなたは違う。最初と今で態度も全然変わらないしね」
「絵に感情をぶつけて発散しているだけの無感情ものだが」
「あら、いいじゃない。弟は気性が激しくてね。ああ、でもちゃんと画家よ。アーティストパフォーマーと言う部類なのだけれど」
「それは興味があるのでぜひ」
「じゃあ、数日後私の家で。家じゃないと、ダメなのよ。一応言っておくけど、あなたの体に興味はないわ。私が興味を持つのは幼女の裸だけよ」
「お前の性癖は聞いていない」
「激しいのね、言動が」
「…気が合うと思えばこそ」
「あらそう、愛の鞭ってやつね」
淡々としたその態度。感情が読めない。そのせいだろうか、私は彼女に対して、少し恐怖を覚えた。
「……紅茶が冷めた。人には信念というものがあるの。言い方を変えればそれは頑固。つまり私は熱い紅茶が好きで、この対談に飽きてしまった。まるでこの覚めた紅茶のように、私の熱も奪われた。うさぎを描きたい。幼女を描きたい。そんな気分よ。ああ、うさ耳幼女…」
「私も絵が描きたい。新しい絵を描きたい」
「あらそう、何の感情を描くの?」
「…『戸惑い』」
「そう、新しい感情が芽生えてよかったわね。そこそこ楽しかったわ」
「……多分私もそう思う」
「それはそうと馬鹿は静かだけど何をしているの?」
「対談に使える部分を探してメモってんだよ、必死に」
ああ、そうか。対談ということを忘れていたな。本当に、使える部分はあるのかこの対談。
けれども後日、この対談が書かれた月刊誌はいつもの数倍の売り上げを記録し、私と対談相手の彼女の新作の絵は、いつもより少し高値で売れた。
本当にこの世界は予想がつかない、だから面白いんだろうな。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

この世界で 2

前話の続きです
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次でラストです。
気長にお待ちくださいまし。

閲覧数:692

投稿日:2014/04/06 02:58:55

文字数:2,463文字

カテゴリ:小説

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