「ただいま」

カイトが部屋に入ると、ミクはパソコンを慌てて消した。

「お、おかえり」
「ミク、何見てたの?」
「いや、大したことではないのよ」
「ふーん…」

カイトが訝しげな目で自分を見てくるので、ミクは頬を膨らませた。

「何よ、私の言うことが信じられないというの?」
「いや、そういうことじゃなくて。あ、そうだ。今日、IAを買ったっていう人が――」
「IA!?」
「そうだけど…」

突然の反応にカイトは驚く。

「知ってるの?」
「知ってるも何も!巷で噂の新型でしょ!?自然な声だとか表情が豊かだとか性能がいいとか!」
「そうだけど…どうしたの?」
「そのIAを持ってる人がいるのよね?伝えといて!」

カイトを指差し、ミクは叫んだ。

「性能はいいからって、私には今まで積んできた実績があるんだから!」



(そんなにもIAに敵対意識を持ってたとは…)

カイトは登校途中、そんなことを思っていた。

(たしかにあのルカの言い方は僕だってムカついたけど…)

いくらなんでもそんなに意識しなくてもいいとカイトは思うのだ。
そうしているうちに校門が見えてきた。



「おはよー、カイト」

教室に入るとグミが声をかけてきた。

「お宅のミクさんは最近どんな感じ?」
「いやぁ、いつも通り我がままだよ」
「ふーん、機械音痴が祟ったのか、相変わらずだね」

機械音痴、という言葉が深くカイトの心に突き刺さった。

「まぁ、個性ってところよね」

そうだ、うちのミクの性格も個性なんだ、と自分に言い聞かせたカイトに、声がかかった。

「ああ、あのミクちゃんね。昨日生放送で見たわ。尻にしかれてたじゃない、カイト」
「ルカ、昨日の見てたの?」
「ええ、とてもグダグダだったわね」
「まぁ、そうなんだけど…あ、」

ぐぬぬと唸っていたカイトがいきなり声を出した。

「そういえばミクからルカに言えって言われてたんだ。えーっと確か、性能がいいからって私には実績があるんだから、だとか」
「…ふーん、そうなの」

返事はしたもののあまり分かっていないルカだった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

DTM! ―EP 5―

遅くなってすみません。五話です。
せっかくIAちゃんが出てきたのでミクさんの敵対意識を書きたいなぁ、と。

閲覧数:303

投稿日:2012/08/19 20:42:17

文字数:883文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました