とある、電子の海の端っこで。
 青い髪のアンドロイドは待っていた。青髪青目、白のロングコートを羽織った青年、KAITO。
 KAITOはキラキラとした瞳でモニター越しに、自分のマスターが頭を抱えているのを眺めていた。マスターの難しそうな顔はしかし、KAITOにとっては嬉しいものだったのだ。
「せっかくKAITOの曲、できたのになぁ……」
 そう、KAITOを買ってくれたマスターは、四苦八苦しながらKAITOに歌を歌わせてくれた。世界でまだKAITOしか知らない、マスターのオリジナルソング。
「公開するって難しいなぁ。できたらいろんな人に聞いてほしいし」
 そう。マスターは、自身のオリジナルソングをいかに発表するかで悩んでいたのだ。その一挙一動がKAITOの胸をくすぐったくさせてくれた。
「やっぱり投稿するなら動画投稿サイト? でもそうすると、イラストとか必要だよね……。絵描くのは難しいなぁ……」
 悩めるマスターのカーソルがディスプレイをうろうろしていると、やがて一つのサイトをクリックした。
「……ん、piapro?」
 首を傾げたマスターがそのサイトの概要を読み進めると、眉間に寄っていた皺が徐々にほぐれていく。
「へぇ……。自分の作った曲、投稿できるんだ。それを見つけてもらって応援してもらったり、他のクリエイターさんと協力して動画にできるかもしれないってことか」
 カチ、カチ。カーソルの音はマスターの気持ちに合わせて跳ねていく。
「逆にこっちが歌詞とかイラストとか使わせてもらって曲や動画を作ったりもできるんだ……。みんなで一つの作品を作るために協力できるんだね」
 微笑んだマスターは決めた、と一人頷いた。
「まずはここに投稿してみよっと。創作活動してる人との縁があればこの曲、動画にできるかもね」
 微笑んだマスターはフォルダを開き、世界でたった一つの曲を流し始める。この曲がたくさんの人の耳に届くことを祈りながら。
「……せっかくKAITOに歌ってもらったんだから、いっぱいいっぱいいっぱいいろんな人に聞いてもらえるといいな」
 そう呟いて気恥ずかしそうに微笑むマスターに、KAITOはとびきり幸せになるのであった。

この作品にはライセンスが付与されていません。この作品を複製・頒布したいときは、作者に連絡して許諾を得て下さい。

広がる歌の夢

piapio15周年おめでとうございます!素敵な創作活動の輪がこれからも広がりますように!

閲覧数:442

投稿日:2022/01/11 10:39:09

文字数:923文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました