#7 8.31の夜


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昔から俺は疫病神みたいな人だった。
俺は何もしていない。でも、次々と周りの人が不幸になっていった。
そうして月日が流れ、ついに両親に何か災いが起きたのか交通事故で死んでしまった。
その車には俺も乗っていたはずだった。でも、俺は死ななかった。死ねなかった。

…もう嫌だ!!俺以外の人が不幸になる位なら俺自身殺せばいいだろ!?何でこんな人生送らなきゃいけないんだ!!もう誰も不幸にしたくない…

1人にしてくれ…ッ!!

…そして生き残ったカナタを誰が養子として引き取るか話し合いが行われた。でも、正直引き取らないで殺して欲しかった。また父さんと母さんみたいに、その家の人皆不幸になってしまう…

そして話し合いの結果、両親の仕事仲間の初音家に引き取られた。
この瞬間が、カナタとミクの出会いだった。
???「…大丈夫?元気無いよ?」
そう声をかけてくれたのは生まれて初めてだった。その子は、疫病神である俺の事を心配してくれたのだ。
カナタ「何で俺なんか… 俺が怖く無いのか?」
ミク「平気だもん、私、歌で人を幸せに出来るから、君のせいで誰かが不幸になる事なんて無い!君は、本当は優しい人だもん!!」

その時は本当なのか疑ったが、初音家で長い時間生活していてもちっとも不幸な事が起きなかった。これだけでも俺は本当に幸せだった


ミク「ねぇ、学校おいでよ!私と一緒に居れば何も怖くないよ?」
ミクのその言葉がどれだけ嬉しかったか。でも、やっぱりあの日の記憶が俺を拒絶する。
カナタ「そんな… 俺なんかが行っていい所じゃないでしょ?」
ミク「そんな事ない!皆絶対受け入れてくれるから!!」
カナタ「でも教育費とか…」
???「大丈夫よ、いつでも行けるように教育費とか準備しておいてるから」
ミクの母さん、ミオンおばさんもそう言った。ものすごく断りづらかった。
カナタ「…何でそこまでして俺に優しくしてくれるの?」
ミオン「ミク、貴女カナタ君の事好きなんでしょ?」
ミク「えへへ、どうしても一緒に学校行きたかったんだ」
ミオン「カナタ君。いつも家事やミクの相手してもらってるし、遠慮しなくていいのよ」
カナタ「…本当に、感謝し切れないです。」
この時、生まれて初めて涙を流した。止め方が分からないまま、その場に崩れ落ちた。
そうして、幸せ過ぎる日常がしばらく続いた。


ミク「家を出る!?」
カナタ「これ以上迷惑かける訳にはいかない。俺自身が自分を許せなくなる。俺とミクのデビューが決まったら1人で生活出来るさ」
でも、ミクだけは納得してくれない。
ミク「ヤダ!!まだ一緒に居たい!!」
カナタ「大丈夫だって。寮もすぐ近くだし、たまには会いに来いよ」
ミオン「カナタ君、別に迷惑なんて思ってないのよ?私だって家事手伝ってくれて感謝してるくらいだし…。 でも、早く自立したいのね?」
カナタ「そうなんだ。少しでも早く…」
少しうつむいた。
(早く独りにならないと…ッ!!)
ミク「…そういえばさ、今日なんの日か分かる?」
少し頬を膨らませるミク。思わず目をそらしてしまう。
カナタ「ミクの誕生日だろ?ちゃんとプレゼント用意してるから安心しな」
ミク「だからぁ!誕生日だからこそこんな水臭い話しないでよって事よ!!」
ポカポカ頭を殴ってくるミク。
(よほど楽しみだったんだなぁ…)
なだめるのに時間がかかった。
[…~♪(着信音)]
ミオン「ちょっとごめん、電話出るわね」
ミオンおばさんが席を外す。
ミク「お父さんもいいプレゼント選んでくれるのかな~」
ミクは足をパタパタさせながらミオンおばさんを待つ。そして、おばさんが戻ってきた。
ミオン「ちょっと出掛けてくるわ。ミク、カナタ君、私が戻るまで家を出ないでね」
と、急ぎ足でおばさんは家を出た。


『そして、その時が訪れる』


ミク「…まだかな?」
カナタ「…出発してから30分くらい経つよな?」
ミク「お母さん…」
非常に悲しそうなミクを見てると、いてもたっても居られなくなって、
カナタ「先に俺からのプレゼント渡しておくね。メーカー特注のスタンドマイクだ!!」
ミク「わぁぁぁぁ/// 可愛い!!カナタ、ありがとうっ!!」
カナタ「ちょっと歌ってみようよ、前のライブの時の衣装着て…」



ミク「?」
遠くから悲鳴のような音が聞こえた。その声の主が…
カナタ「…おばさん!?」
いや、もしかしたら思い込み過ぎたか。

[…~♪(着信音)]
ミク「あ、モカちゃんからだ!電話出るね」
モカちゃんと言うのは、ミクの学校のクラスメイトでありミクと仲良しの女の子だ。通話を始めた瞬間、かなりの音量で…
モカ『今すぐ駅前来て!!(ザザ…)ミクのお父さんがッ!!(ザザ…)』
ミク「え!?どうなってるの!?」
モカ『いいから来て!!(ザザ…)』
そう叫んだ後電話を切られた。あまりにもノイズが多くて分からなかったが目的地だけは聞き取れた。
カナタ「ミク、帰って来ないのはこれの事かもしれない!今すぐ行こう!!」
ミク「うん!!」
嫌な予感しかしない…


ミク「着いた!」
カナタ「うわ、パトカーだらけじゃないか…」
人混みを分けて奥に進む。そこにはモカちゃんだけ居た。
モカ「あ、来た!こっちこっち!!」
カナタ「何が起きた!?」
モカ「実は、ミクちゃんのお父さんが何か武器みたいなので刺されて重症なの!!しかもお母さんがどっかに消えてったから現場が凄い混乱してて…」
ミク「刺された!?何でそんな事に…」
カナタ「本当かよ!?」
そこに近くに居た警察の人がやって来て、
警察「君達が初音さんの家の娘さんですね?初音ミツルさんの搬送された病院まで送ります。面会拒絶の可能性もありますが…」
と向こうにある車まで案内する。
ミク「お母さんは!?」
警察「大変申し訳ございません、初音ミオンさんの件、現場の手掛かりを元に捜索を試みたのですが、パトカー1台丸ごと橋から落ちたとの報告があり見失ってしまいまして…」
ミク「そんな…」
モカ「ミクちゃん、カナタ君、病院出たら今日は私の家に泊まって、明日状況を確認しよう。お巡りさん達がきっとどうにかしてくれるよ!!」
ミク「あぁ… ぁぁ…」
カナタ「ミク!!」
______

後に8/31の終わらない夜と呼ばれたその事件は闇の中に消えてった、はずだった…
______


______

今この瞬間闇の中に消えたはずの事件が、あの時と同じ日に再び俺達の目の前に現れたのだ。
ミオン「元気にしてた?まあ、貴方達は今忙しそうだけどねぇ」
カナタ「人に幻術掛けた人が言う言葉かよ、早くミクの幻術を解け!!」
ミオン「カナタ君、よくよく考えたら貴方の前では意味無いのよね。私が手を出すまでもなく、貴方はミクの幻術を解いたりも出来るのよ?それも、ワンタッチで」
ミオンおばさんの言うことが信用出来ないが、ものの試しにミクの肩を掴んだ。
ミク「…あれ?ここは?」
カナタ「本当に、幻術が解けてる…!?」
そして再びおばさんの方に目を向ける。
カナタ「アンタ、3年間もミクの事放置して、今更ひょこっと顔を出してタダで済むと思うなよ!!」
感情のままに走り出すカナタを、メロピィが止めにかかった。
メロピィ「ダメだよ!あの人、周りの音粒から危険なオーラを感じる… 多分、彗星で狂気化した怪物達と同じ性質なんだ!!」
ミク「え!?お母さん、何でそんな力を…」
カナタ「どこでそんな力を得た!アンタ今、何者なんだ!!」
その時、おばさんの表情が少し揺らいだ。
ミオン「あの日、ミツルは私を守れなかったのよ。圧倒的に力が足りなかったの。だから、私が力を得る為にその人達に付いてった。そして、充分な力を得る事が出来たのよ」
あまりにも残酷な真実であった…


ミク「え…嘘でしょ?私達の所には帰って来ないの!?」
ミオン「無理よ、今ここで家に帰ろうって言った所でカナタ君は聞きもしないでしょう?今日はミクへの誕生日プレゼントだけ渡しに来たわ、おめでとう。別に変な物は入って無いわ、帰る場所に帰ってから開けなさい」
ミク「そうだ… 今日は私の誕生日だったんだっけ…」
少し涙をこぼしそうになるミク。
ミオン「カナタ君、貴方は渡したの?」
カナタ「拠点に帰ってから渡す予定だった。置いてきてるし…」
ミオン「そう、もう遅いからお別れの時間ね。次あった時は私達は敵同士だから、覚悟しなさい」
そう言って後ろ向きに手をかざすと、空間に穴が空いた。
ミク「待って!お母さん…」
ミクは必死に母を追いかけ手を伸ばす。届かないと知りながら…
カナタ「ミク!」
ミオン『貴方達も、負けることなく強くなって、絶対に生き延びなさい…』
ミク「お母さぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」


ミク「うっ、ウグッ…っ」
ライブの後始末を終わらせ拠点に帰った2人はテントを張って夕食を済ませる。
カナタ「泣くなよ、少しは手掛かり掴めたんだからさ」
ミク「そうだよね…ヒクッ、じ、じゃあ、プレゼント開けるね」
まずはお母さんから貰ったプレゼントの包みを開ける。
ミク「エレキギターだ!これ私がずっと欲しかったVエレキだよ!!」
はしゃぐミクをよそに、カナタは顔をしかめる。
カナタ「いや、マジカルアイテムか…?」
ミク「本当!?なら早く使いたい!!早く次の町に行こうよ!!」
カナタ「その前に俺からもプレゼントがあるからな…」
ミク「あ、そうだね」
そしてスーツケースの隠しポケットからプレゼントを取り出す。
カナタ「俺からのプレゼントは…
じゃじゃーん!髪飾りだよ」
ミク「うわあぁ可愛い!/// さっそく付けていい?」
カナタ「俺が付けてやるよ、似合いそうな髪型思いついたからさ」

カナタ「うん、出来た!ほら鏡」
ミク「凄い… ありがとうカナタ…!!」
カナタ「誕生日おめでとう。明日からもよろしくね」
ミクは満面の笑みで、
ミク「ありがとう、カナタ!」
と言い残し、カナタに抱きついた。
カナタ「やれやれ… さっきっから色々起こり過ぎて寝れなくなりそうだよ」
ミクの今年の誕生日は、ハッピーエンドに終わる事が出来た。

(本編はここまでです)



【緊急速報!!】

この度はミクコレ★歌声の秘密第7話を見ていただき誠にありがとうございますm(*_ _)m
初音ミク10周年という事で、@okkyも色々企画を立てたいと思います。第1弾という事でコチラ…

劇場版ミクコレ★歌声の秘密~砂の惑星と世界樹の少女 ミライ~

近日公開決定!!

という訳でして、本編がある程度進み次第中断して、長編ボカロ小説の番外編のようなシナリオを作っていきたいと思います!!
勿論テーマ曲はハチさんの「砂の惑星」です!!
何故本編とは別扱いにするかと申しますと、作品の内容的な問題になるのも一点、10周年企画を豪華にしたいのも一点、そしてミクコレのBGMとしてまだ実装されてない件がありましたからね…
あ、劇場版と言っても映画館で見る訳でも無いですし他アプリ使うとか動画作成とかみたいな大掛かり過ぎる設定も半人前の僕じゃ遠い未来ですからww
と言うことで、ごく希に劇場版ミクコレ小説が幾つか投稿される可能性もあるのでシリーズをまた別に作っておきます。なので本編のシリーズ一覧には載らないのでご注意をm(*_ _)m
今後とも応援よろしく_|\○_オネガイシヤァァァァァス!!

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

【ミクコレ★歌声の秘密】#7「8.31の夜」

皆さんおはこんばんにちは、@okkyのミクコレ実況チャンネルです!
Pixivよりミクコレ二次創作小説第7話を転載しました
今後も応援_|\○_オネガイシヤァァァァァス!!

閲覧数:106

投稿日:2018/03/08 17:38:15

文字数:4,719文字

カテゴリ:小説

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