青を呑み込んで肥えた夜はどこか霞んで見えた。
スクリーンのドットは嗤う。一斉に。
独り今日という日に沈み込んでいくのが許されないのならば、
この世の創作はやがて形を失い崩れるに違いない。
文学は不道徳か。
後悔は許されないか。
思想は滅されるか。
数多の声がなぞった筋書きは
一つの不文律的な思考を糧にする。

"ただあるのは虹、ただあるのは虹
君の場所だから、君の場所だから"

空の冷蔵庫は春を待っている。
動かない時計は記憶を刻んでいる。
燻ったストーブはこの部屋の主人だ。
その中で僕は眠っている。何を見ているのだろうか。
青がかった夜の中でのみ、僕は世界を俯瞰する。
そうして朝には全て忘れて、
毎日の中に帰っていくのでしょう。

"東京が雨に溶ける匂いと、街角に雨を湛えた器
街に君の声が鳴った"

二律背反的な言動に、耳障りな音が沈着した。
ここにあるのは、ただ静的な淀みだ。
眠り明かす夜が、分断された日々を繋いでいるのは、
それが夜ではなく、記憶が定着するプロセスだからである。
明日僕目を覚ます時、
そこにあるのは今日と同じ世界か。
君が確信を持っているならば、
どれだけ安心なことでしょうか。

"ただあるのは虹、ただあるのは虹
君の場所なのに、君の場所なのに"

「僕」から離れられない主体のまま、ただ書き連ねる文章は、
普遍性を得られないまま暗闇に沈むのでしょう。
きっと「君」にも空にも机の隅の檸檬にもなれない僕は、
遠く離れたあなたの気持ちも知りえないのだから。
夕闇が迫って、朝焼けに泣いて、広い海を前に立ち尽くす。
そんな事でしか動かない心はきっと誰にも縋れないまま、
そのままいつか動きを止めるのです。

"東京が雨に溶ける匂いと、街角に雨を湛えた器
街に君の声が鳴った"

手放した音楽は、誰に届けば満足ですか。
あなたはその向こうに何を見ますか。
好き。嫌い。会いたい。辛い。遠い。
そんな気持ちがその人にありますか。
諦観でしょうか。抵抗でしょうか。
"街に君の声が鳴った"
走る音が誰かの手を引いて、
重なることのなかった視線を重ねた。
そういう力を信じますか。
"街に君の声が鳴った"
鳴った。

"ただあるのは虹、ただあるのは虹
君の場所だから、君の場所だから"

走り終えた果てで、眠りの中で、
僕のまだ知らないあなたと、
あなたの居るべき場所で、
そう笑い合うのでした。

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夜に虹色は(二不文律背反的詩篇において繰り返される二つの主題)

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投稿日:2017/10/12 13:23:27

文字数:1,011文字

カテゴリ:その他

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