そして、翌日の夕方。
 「…ほれ」
 そういって、グレーラが持ってきたのは、初音ミクが描かれたケーキだった。今回のために、三人でお金を出し、グレーラが三人を代表して購入していたのだ。早速ケーキをスマートフォンで撮る三人。
 「…よし、二人とも撮ったな?」
 スマートフォンをにらめっこして、ケーキがしっかりと獲れているか確認し終えたグレーラ。二人はまだ画像を確認中だった。
 『いいよ』
 「…それじゃ、姉ちゃんに切ってもらうから」

 そうして、三人はケーキを食べ始めた。
 「…そういえば、このケーキって、解凍が必要なんだよね?」
 「そうだな。解凍することを考えて、昨日うちに届くようにしたんだ。…前みたいに凍ったケーキを食べかける真似はしたくねえからな」
 苦笑しながらいうグレーラ。前回は同じ所から出ていたケーキを昨年の8月31日に食べようとしたが、グレーラが注意書きを読んでいなかったせいで、解凍が必要なことに気がついておらず、気がついたのは8月31日当日に三人が凍ったのケーキを見た時だった。その時は三人そろってがっかりしていた。結局三人がケーキを食べたのは翌日だった。
 「…それより。今年は無事終わったね」
 安心したように言うDe-Fall。
 「今年はまだ3月だよ。まだだいぶ残ってるよ」
 冷静に突っ込むブライスP。
 「…あ。…ごめん、気が抜けちゃった」
 「…確かに、今年は何とかなったからな。蒼穹雷さんと薄暮Pさんに俺たちの動画を紹介してもらったし」
 「お二人とも、僕もアカウントもフォローしてくれたんだ」
 「…え?お前だけかよ?おいおい、俺たちの立場は…」
 「…お二人とも、僕のアカウントもフォローしているから、きっとグレーラのアカウントもフォローしてるんじゃないかな?」
 「…あ、本当だ」
 慌てて確認するグレーラ。そんなグレーラを見る残り二人の視線は冷たい。
 「あ、いや、その…。これは俺が悪かった」
 ばつの悪そうな表情でいうグレーラ。その表情を見て、笑うブライスPとDe-Fall。その笑いにつられてグレーラも笑い出し、その場は笑顔に包まれた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

2017年3月9日 11節(最終節)

閲覧数:32

投稿日:2017/03/09 23:43:01

文字数:898文字

カテゴリ:小説

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  • ganzan

    ganzan

    ご意見・ご感想

    はじめまして。拝読させていただきました。

    ミクさんの記念日は規模が大きいので、創作する人も応援する人も参加のきっかけになりやすいのがいいですね。小説のとおり 3/9 のほか、誕生日の 8/31 も盛大な記念日ですが、この約半年間というスパンが絶妙だな、と感じてます。

    > …僕たちが、何のための動画を投稿するか

    なるほど、「何だか上手くいかないな」というときに初心に立ち返ってみるのは大切なことですね。キャラクターに惹かれて応援したいのか、夢を叶えるための手段なのか、それとも誰かと繋がりたいのか。正解でも間違いでもなく、人それぞれの原点があるのだと思います。
    今年は初音ミク10周年ということで、私たちも作中の彼らのように気持ちの棚卸をするにはいい時期なのかもしれませんね。

    > "初音ミク"は実在する存在だった。

    私もブライスPと同じように感じているので、同志よ!と思いました(笑)。

    ボーカロイドが好き、という気持ちが伝わってくる小説で(違ったらスミマセン)、何ともホンワカする読後感でした。
    それでは、やや長文で失礼しました。

    2017/03/22 00:27:18

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