その日の夜。
 「雅彦さん、ちょっと良いですか?」
 雅彦の部屋にミクが尋ねてきた。
 「ミク、入って」
 そういって自分の部屋に招き入れる雅彦。
 「ミク、用は一体何だい?」
 雅彦から尋ねられ、背筋をのばすミク。
 「雅彦さん、私は、何があっても雅彦さんを支えます」
 自分の決意を述べるミク。雅彦がミクの目を見ると、そこにははっきりとした意思が見て取れた。
 「…ミク、ありがとう」
 ただ一言、礼を述べる雅彦。
 「雅彦さん、もう一度聞きます。沢口さんに関する悩みは私に話すことはできますか?」
 優しく聞くミク。その言葉に、力なく首を振る雅彦。
 「…ごめん、話せないんだ」
 「雅彦さん、話せないなら、それで構いませんが、そのことで最終的に傷つくのは雅彦さん自身だと思います。それは分かっていますか?」
 「それは分かっているさ。でも、それは僕の弱さが招いたことだから、後悔しちゃ駄目だと思っている」
 「そうですか」
 その言葉に、微笑むミク。
 「…でも、後悔はないといっても、やっぱりミクに頼ることになるかもしれないな。情けないけど」
 少し自虐的にいう雅彦。
 「それは構いません、それが雅彦さんの恋人である私の務めですから」
 雅彦はミクを見た。最近、ミクに頼りっぱなしの気がする。恐らく、まだミクに頼らざるを得ないだろう。
 「雅彦さん」
 「何だい?」
 「なぜ、話すことができないんですか?」
 「ああ、それはね、僕の弱さもあるけど、あんまりみんなに心配をかけたくないからだよ。一応、僕なりに気づかってるつもりだけど…」
 その雅彦の言葉に、悲しそうな顔をするミク。
 「雅彦さん、その優しさは間違いです。誰にも話さないことで、かえってみんなに心配をかけています」
 「そうなのか…」
 ミクの指摘に、雅彦は驚いた様子だった。
 「…雅彦さん、少し落ち着きましたか?」
 「さっきのミクの言葉は嬉しかったけど、さっきの言葉で完全に落ち着いたとはいえないな」
 「それなら、これを飲んでください。私の淹れたカフェオレです。これを飲んで落ち着いてください」
 そういってミクが持って来て、部屋に入った時から脇に置いてあった二つのカップのうち、一つを雅彦に差し出す。
 「雅彦さんが淹れるのに比べて、美味しくないかもしれませんが」
 「そんなことはないよ。ありがとう。いただくよ」
 そういって微笑む雅彦。
 「雅彦さん、二人でカフェオレを飲みながら話しませんか?」
 「そうだね」
 そういって、雅彦は自分のベッドに、ミクは椅子に座った。

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初音ミクとパラダイムシフト4 3章20節

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投稿日:2017/03/09 22:19:31

文字数:1,082文字

カテゴリ:小説

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