(暇だなぁ…)


そう思いながら、レンはテレビを眺めていた。
内容は頭に入っていないらしく、ボーッとした表情からそれが伺える。

現在レンは双子の姉と共に、留守番の最中だった。
当の家主であるマスターは、年長のテトと一緒に買い物に出掛けている。
時計を目にやっても過ぎた時間はほんの30分、帰ってくるのはまだまだ先であろう。


「リンは部屋で寝てるしなぁ…」


姉のリンはマスター達が出掛ける少し前に、眠りについていた。
もちろん、レンがリンを一人にする事など出来るはずもない。
故にこうして時間を持て余すのを予想できていたとしても、レンは家に残る選択しかなかったのだ。


「つまんない…」


チャンネルを一巡させてみても、興味を引かれる番組は無かったらしい。
リンが起きるのを期待しているが、降りてくる気配は全く無かった。
レンは溜め息を吐いて、テレビの前にあるテーブルに置かれた飴玉の袋を手に取る。

袋には飴玉の種類が幾つか表記されておりレンは一瞬迷って、中身からオレンジ色の飴玉が入った小さな袋を取り出した。
その色から、オレンジ味の飴玉である事が容易に想像できる。
レンはその袋を開け、飴玉を口に放り込んだ。

レンは別にオレンジ味が好きな訳ではない、むしろリンゴ味の方を好む。
ただこの時は、今は眠っている少女の事で頭がいっぱいだった。
そのため彼女が一番好んでいる味に、自然と指が伸びたのである。


(いっそ起こそうかな…いや、寝顔を眺めるのも悪くないな…)


口の中で飴玉を転がしながら、レンは変態じみた思考を頭に巡らす。
そう考えていると、階段を降りてくる足音が聞こえてきた。
そこに顔を向ければ、眠たそうに目を擦るリンの姿があった。


「おはよぅ…レン」

「おはよう、リン」


笑顔で返事を返すレンの隣にリンは座り、小さく欠伸をする。
目に浮かぶ涙を指で拭いながらリンは「マスター達は?」、とレンに尋ねた。


「買い物に出掛けてる。帰りは、もう少し遅くなると思うよ…食べる?」


そう答えながら、レンは飴玉の袋を差し出す。
リンはそれを黙って受け取り、中身からお目当ての味を探った。


「…ない、オレンジ味」


探していた味が既に無かったらしく、リンは不満そうな声で言った。
レンは気まずそうな顔をしながら、リンに告げる。


「…ごめん。最後の一個、僕が食べちゃった…みたい」


苦笑いを浮かべるレンを恨めしそうに睨むリンだったが、再び袋を探って別の飴玉を取り出した。
色からしてそれはリンゴ味らしく、小袋を開けて飴玉を口に入れる。


「…別に、良いけどね」


飴玉を舐めながらそう言ったリンを見て、レンは安心しつつも驚いていた。
普段なら怒鳴られている所であるが、今回はそれはないらしい。
その事からレンには、リンの眠気がまだ残っているのが想像できた。

表情には既に不満の色はなく、美味しそうに飴玉を転がすリン。
そんなリンを見ながら退屈していたのもあってか、レンは何かを思い付いたようだ。





「…ねぇ、リン」


レンはゆっくりとリンに近づいて、互いの距離をつめた。
リンは相変わらず眠たそうな様子で、呼ばれた方に顔を向ける。
いつものリンならば、彼の笑みの意味に気付けたかもしれない。


「飴玉、交換しよっか?」

「…ぇ?」


そう言われたリンが疑問の声を上げようとするのを、レンは自分の唇でそれを阻止した。
突然の事にリンは何が起きたの理解できていなかったが、すぐに顔はみるみる赤く染まった。


「~~ー―っっ!!?」


慌てて引き離そうとしたが、そのままレンに押し倒されてしまう。
リンは身体を動かして抵抗を試みても、うまい具合に拘束されているようで殆ど効果はなかった。
そんなリンをよそに、レンは舌を彼女の口内に侵入させる。


「んんっ!?」


暫く口内を刺激して、レンはリンの反応を楽しんだ。
その後に舌を器用に使って自分の飴玉をリンの口内に運び、リンの飴玉を自分の口内に運ぶ。

レンが口を離すと、二人の間に銀色の糸が伸びる。
リンを見れば彼女の口からは漏れた唾液が顎まで伝い、顔は羞恥心からか真っ赤になっていた。
目には涙を浮かべ、それを見たレンは満足そうな笑顔をリンに向ける。


「美味しい?オレンジ味」

「…レンのっ、バカ!変態!!」


すっかり眠気の覚めたリンは、口許を手で隠しながらレンを先程より強く睨む。
レンは上機嫌な様子で、突き刺さる視線も気にしていないようだ。


「僕一人で退屈してたんだから、これくらいは許して欲しいけどな」

「じゃあマスター達と一緒に、買い物に行けばよかったじゃない…」


リンは顔を染めながら、ふてくされた様に呟く。
レンは組敷いた彼女を見ながら、呆れたように言った。


「寝ているリンを、一人にしておける訳ないでしょ?それに―」









「リンと一緒に居たかったしね」









「………っ!?」


上にいるレンの言葉と笑顔に、リンの顔はますます赤く染まる。
リンは顔を背けて照れ隠しからか、飴玉をガリガリと音を立てて噛み砕いた。



「もっとゆっくり味わえばいいのに」

「…っレンの意地悪!」



レンは笑いながら、リンの上から退いた。
少しやり過ぎかなと思いお詫びに紅茶でも淹れてあげようとレンは、座っていたソファから立ち上がり台所へと足を向ける。
たがその進行は、後ろから服を引っ張られた事で中断された。

後ろを振り向けば座り込んだリンが、顔を下に向けながら右手で服を掴んでいた。
表情を伺う事は出来ないが、耳は赤く染まり服を掴む手は僅かに震えている。


「………って」

「…え?」


リンが何かを呟いたようだが、その声が小さくレンには聞き取れなかった。
それをリンは察してか、振り絞る様に言葉を繰り返す。


「…部屋まで、連れてって」

「部屋までって…、さっき降りてきたばっかりなのに?」


レンがそう言うのも無理はない、彼女が部屋からここに来てまだ30分も経ってないのだ。
疑問の色を浮かべる彼に、リンは恥ずかしそうに言った。



「…た、の」

「…?」

「…腰が抜けたの!さっきのレンのキスで!!」



顔を上げて大声でそう叫んだリンに、レンの目は点になった。
だがリンは形振り構わず、大声で言葉を続ける。


「だからっ!マ、マスター達に見られたくないから部屋に、行きたいんだけど…歩けないの!レンのせいで!!」


恥ずかしさでリンの顔はこれ以上ない程に赤くなり、強く閉じられた目に涙を浮かべて身体を震わせていた。
それを呆けて見ていたレンは、静かに口を開いた。


「…リン、なにそれ。可愛すぎるよ」

「…~~~っ!!!」


てっきり笑われるかと思うっていたリンにとっては、その言葉は予想外過ぎたらしい。
赤くなった顔で声も出せず、口をパクパクさせる事しか出来なかった。


「もうっ!いいから部屋まで連れてってよ!!」


そう怒鳴るリンに、レンは笑顔でゆっくりと近寄る。
リンの肩に背中から腕を回して手を置き、もう片方の手を太ももに添えて抱き上げた。


「それじゃあ、参りましょうか?My princess♪」

「その言い方、なんかムカつく…」

「Queenよりはマシでしょ?」


恥ずかしながらも悪態をつくリンに、レンが満面の笑みで返事をする。
レンは嬉しそうに口の飴玉を転がしながら、リンを抱えて階段を登った。















*















リンの部屋に入ったレンは、抱き抱えている部屋の主を静かにベッドに降ろした。


「ありがとう、レン」


そうお礼を告げたリンに、レンは優しい笑顔を向けながら言った。


「お安い御用だよ。それに、僕のせいだしね」

「…その割には、悪いとは思ってないでしょ?」

「うん、悪い事をしたつもりはないし」


当たり前の様に答える目の前の彼に、リンは溜め息をもらした。
実際リンも驚きはしたが、嫌ではなかったのも事実である。



「むしろ、嬉しかったとか?」


見透かしたかのように言うレンに、リンは側にあったぬいぐるみを力一杯投げつけた。


「もう用は無いから出てってよ!!」


上手くぬいぐるみを受け止めたレンは、それを側に放って怒鳴ったリンに近づく。


「…ところでさ、リン」

「な、何?」


甘い声で呼び掛ける彼に、リンは嫌な予感しかしなかった。
気が付けば先程の様に、組敷かれ身動きを封じられていた。


「僕を部屋に連れ込んだのは、そういう意味でいいんだよね?」

「いや、連れ込んでないし。ってか、そういう意味って…っ!?」


リンが答えてる間にレンは彼女の胸にあるリボンの結び目を、引っ張って解いた。
そのまま上着をずらして、露になった鎖骨に舌を這わせる。


「ちょ、レン…っ!?」


訴えようとするリンを無視し、レンは舌を這わせた部分に唇を当てる。
唇を離せばそこに、赤く小さく腫れ上がったキスマークが残った。


「レ、ン…ちょ、ぁ…待って、ってばぁ…っ!」


声を絞り出して、制止を促すリン。
レンはそこで愛撫を止め、彼女の目を見つめた。


「リン、嫌?」

「い、嫌とかどうとかじゃなくて…」


吐息を荒くしながら、必死に言葉を続ける。
この状況から逃れる為にリンは、今までに無いくらいに思考を巡らせた。


「ま、まだ外も明るいし…ほら!レンもまだ飴玉食べてるし、…ね?」


そう言ったリンを見て、レンは意地悪そうな笑顔を浮かべた。
そのままの表情で、彼は焦るリンの耳元に口を近づる。


「………レン?」








―――ガリッ!!









レンはそのまま飴玉を噛み砕き、それをゴクリと呑み込む。
その音をリンに聞かせる事で、飴玉の消失を確認させたのだ。

レンからはリンの表情は見えないが彼には彼女が、どんな表情をしているのか容易に想像できた。
レンはそのままリンの耳元で静かに、甘く囁いた。








「…いただきます♪」





「―――っぴゃああぁぁぁっ!?」












その日、ある地域周辺で不思議(変)な叫び声が聞こえたそうな。



リンの方はマスター達が帰ってくるまで、レンに美味しく頂かれたとかなんとか………。




















(愛しい君に、より甘ったるい愛情を)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

飴玉より甘いモノ

甘いものを書こうとした結果…、何かがおかしくなりました(ノ∀`)
マセレンを目指したつもりなのに、ただの変態じゃないのかこれwww
まあ正直、すみませんでした(汗)

飴玉一個でここまで妄想する僕は、もうダメだと思います←
最後にリンがどうなったかは、各々の判断にお任せします(笑)

閲覧数:2,346

投稿日:2010/09/13 19:23:12

文字数:4,359文字

カテゴリ:小説

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  • さくら

    さくら

    ご意見・ご感想

    いやぁああ///
    甘いいいいいいいいいww
    すっごい良かったです!!
    あぁもう双子大好きっ!!!!
    美味しい御話ありがとうございましたっ!!!

    2010/12/28 21:48:04

    • 欠陥品

      欠陥品

      ありがとうございます!
      思うがままに書いた結果、色々と自重しきれてませんww
      こちらこそ、読んで頂きありがとうございました^^*

      2010/12/29 00:24:32

  • かりん

    かりん

    ご意見・ご感想

    はじめまして!!
    おお!!
    なんて甘甘!
    あぅあぅ
    おいしゅうございました!!

    2010/09/18 15:00:56

    • 欠陥品

      欠陥品

      はじめまして、メッセありがとうございます♪

      甘いの目指したら、突っ走ってしまいましたwww
      初めての方向性で不安はありましたが、そう言って頂けると嬉しいです^^*

      2010/09/18 15:45:34

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