降りしきる雨の中を
ヘッドライトが切り裂いていく
雨は止む気配を見せるどころか
雷や風まで連れてきた
既に100m先は見えない
センターラインすら見えない
視界不良 つんざく風のうめき
雷鳴、轟音、大粒の雨
突然、飛び出した黒い物影
彼は急ブレーキを踏んだ
一人の男性が路上でうずくまっていた
「ごめんなさい」と何度もつぶやていた
「バカヤロウ!」
彼がつかみかかった
顔を赤くして声を震わせ
「二度と、俺の前に現れるな。
二度と、二度と姿を見せるな!」
しばらく男を睨みつけていたが
胸ぐらを放すと座席へ戻り
また車を走らせた
雨に打たれ続けた男は
やがてとぼとぼ歩きだした
いつの間にか雷は遠のき
風も弱くなっていた
空は白み始め、小鳥がさえずっていた
いつもと変わらない朝が
すぐそこまで来ていた
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