雅彦とミクは、バスを乗り継いでボーカロイドの家に戻って来た。
 「ただいま」
 『お帰りなさい』
 ミク以外のボーカロイドが総出で玄関で出迎える。雅彦の退院日は全員が知っていたし、念には念を入れて、ミクが最寄りのバス停で降りた時に家に連絡していたのだ。
 「雅彦君、お疲れ様。一息つきたいでしょ。コーヒーが良い?紅茶が良い?それとも緑茶かしら?」
 MEIKOが尋ねる。
 「…そうですね。コーヒーは、病院の自動販売機で飲んでいましたし、緑茶は、食事の時に頼めば出て来ましたから、久しく飲んでいない紅茶をお願いします」
 「それじゃ、ルカ、紅茶はお願いね。私は夕食作りを続けるから」
 「分かりました」
 そういってキッチンに向かうMEIKOとルカ。
 「ねえ、マサ兄。俺とリンとカイ兄でクッキー作ったんだ。沢山あるから食べる?」
 「リンちゃんお手製のクッキーだから、美味しさは保障するわ」
 レンとリンが雅彦に聞く。
 「レン君、リンちゃん、ありがとう。ルカさんが淹れてくれる紅茶が入ったら一緒にいただくよ」
 そういって残りの五人もキッチンに向かった。

 そして、夕食。夕食のメインディッシュはローストビーフだった。
 「雅彦君、ローストビーフにかかるソースは幾つか作ったの。事前のリクエストを聞いていなかったから、どれが雅彦君の口に合うか分からないけど。どれが良いかしら?」
 「醤油ベースのソースはありますか?」
 「それじゃ、これね」
 そういって幾つかあるソースのうちの一つを雅彦に渡すMEIKO。雅彦は皿にローストビーフを載せ、MEIKOからもらったソースをかけて食べる。
 「美味しいでしょ?」
 自信たっぷりにMEIKOがいう。
 「ええ、もちろんです。病院の食事も不味くはなかったですけど、病院の食事ですから。MEIKOさん、ルカさん、ありがとうございます」
 礼をいう雅彦。微笑む二人。
 「レン君、食べないのかい?お肉は好きだよね?」
 「…マサ兄、この食事はマサ兄の退院祝いなのに、マサ兄を差し置いて俺が最初に食える訳ねえじゃん」
 「だってレンは食いしん坊だもん」
 リンがからかう。
 「マサ兄、野口さんと同じこといってるじゃん」
 「確かに、野口先輩の時も似たようなことをいっていたね」
 「マサ兄、俺がどれだけ礼儀知らずって思ってんだよ」
 すねるレン。
 「はは、ごめん、僕は食べたから、レン君も遠慮無く食べたほうが良いよ。とっても美味しいから」
 「もちろん。めー姉とルカ姉の作ったローストビーフが不味い訳ないじゃん」
 そういいながら肉を取るレン。レンを皮切りに、全員がローストビーフを取り、それぞれ好みのソースをかけて口にする。
 (…帰って来たんだ)
 久しぶりに家で食べる食事の味を噛みしめながら、そう思う雅彦。そしてその顔を見て、微笑むミクだった。

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初音ミクとパラダイムシフト2 3章1節

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投稿日:2017/02/24 23:43:48

文字数:1,201文字

カテゴリ:小説

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