森を抜けるとそこには草原が広がっていた。そしてその先にある小さな村。そこが目的地だった。
馬で「塔」のある街から一週間ほど。術者となってからほとんど「塔」から外に出ていなかったルカにとって、一週間もの距離は長旅だった。元々が「庭」や実家からあまり外へ出たことのないルカである。途中で立ち寄った村や旅商人の広げるテントを物珍しさから覗きこみ、長居をしたりしてしまったために、本来ならば4,5日で来れるところが長くかかってしまっている。
「がくぽは何度か訪れているのよね?」
ルカが自分と同じく馬に乗ったがくぽに問うと、はいと頷きと共に返事が返ってきた。
「先ほど通り抜けた森は、ルカ様もご存じの通り力の強い場所です。そのために魔物が生じやすいので、討伐のために何度か。」
丁寧ながくぽの返事にルカはそう、と頷いた。
「場の力が強いとなんで、魔物たちが狂ってしまうのかしら」
ルカは小さく呟いた。特に返事を求めての事ではないので、がくぽも応えずに並んで進むばかりだった。
何かが解けるような気がしたが、ルカは分からないというように首を横に振った。
逆に、力の弱い場所でも暴走した魔物が多いと聞いた。それでは場所の持つ力の強弱は関係ないのかもしれない。何かを忘れてしまったから、無くしてしまったから、私たちの世界は崩壊を始めている。
その何かを探すために始めた旅だ。下手に思考を広げない方が良いかもしれない。けれど、一つの事だけに固執してしまっては本当の姿を見極められない場合だってあるのだ。
どっぷりと考え事に浸りきってしまったルカに、馬から落ちますよルカ様、と焦った声でがくぽが声をかけてきた。
その村はこの地域ではどこにでもある、牧畜が盛んな小さな村だった。男たちは牛や羊などを放牧し、女たちは家畜からとれる、毛は紡いで織物に、乳はチーズやバターなどに加工する。子供たちはその手伝い。
そんな長閑な村の中で、この地方特有の、木彫りの魔除けを作る事を生業にしている老人が居るという。
「魔除けの職人は、この地方のひとつの村にひと家族いるかいないか、といったところです」
そう言ってがくぽは、俺の勘ですが、と少し自信なさげに言った。
「魔除け、というものが前にルカ様が言っていた、消えてしまったものを知る手がかりになる様な気がしたんです。なんとなく、ですが」
だからロウを訪れるのも兼ねて丁度良いと思ったんです。そう少し不器用そうに言うがくぽの気づかいに、ルカはありがとうと微笑んだ。
ルカのあやふやな思考を、がくぽなりに考えて行動にしてくれている。そのことがとても嬉しかった。
「ありがとう」
そう笑みを浮かべて礼を言うと、とんでもない、とがくぽはいながら頬を染めた。
夜明けのはじまる前【シェアワールド】 響奏曲【異世界】
久しぶりの投稿です。
書く感覚を忘れかけたよ…w
前のバージョンで進んでください。
コメント1
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ご意見・ご感想
藍流
その他
こんばんは。早速読ませていただきました!
そしてなんか、わー!となってて言葉が出てきません><
とりあえず、あれですよ。シェアって良かった……! ありがとうございます!
話の進展と二人の進展(w にどきどきしつつ、設定部分の見せ方にほほうと唸ったり、タルト美味そう……と咽喉を鳴らしたりw
なんとなく純朴な感じのするおじいさんが好きです。
カタチにしては、いけない気がする。っていうのが、印象的で良いなぁ……。
そして少年の名は見た瞬間ちょっと笑いました(ごめんなさいw)
あぁ、一文字削ったのね、と……w
でもアリですね、ロウ。ファンタジーっぽい!
それにしてもルカさんとがくぽは、独特の距離感と言うか……。
正論で叱られて駄目なところざくざく斬られて、普通だったら暫く気まずくなりそうな展開なのにこの二人ときたらw
しかし、だからこそルカさんの自覚までにはまだまだかかりそうですね~。
頑張れ、がくぽ☆(w
2011/11/22 22:49:54
sunny_m
>藍流さん
コメントありがとうございます〜!
喜んでいただいて幸いです^^
もうね、この二人の進展はどうなってしまうのでしょうかw
今回書いていて、「おっもしかしてルカさんがくぽへの特別な感情に気がついちゃうのか!?」と思ったのですが、見事にスルーされましたww
ルカさんにとって、対がくぽへの思いは子供の頃の感覚が残っている、ってことなのでしょう。
コメのとおり、がくぽにはもだもだ頑張ってもらいますww
話の進展は、なかなか進まないというか手探り状態ですが、こちらも、もだもだと二人に頑張ってもらいますw
ロウはね、もー苦肉の策ですよww
次郎のロウですから……w
アリと言っていただけてホッとしてますwww
それでは!
2011/11/23 12:25:01