学校は四時間だった。始業式だったからだ。
自己紹介をして始業式でて連絡事項聞いて終わりだ。
帰りの学活をして皆が教室から出て行く。
部活がある生徒は再登校のようだ。
一緒に帰らないか、という声も聞こえる。
私にかけられた声でないのは確かだが。
人が少なくなってきた頃に私も荷物を持って廊下に出た。

玄関に着き、自分のクラスの靴箱に向かう。
「2-3」と書かれた板のところには人数分の靴箱。
そこには一人で靴を履き替えていた有坂の姿。
待ってました、というように有坂は私のほうに振り返った。
そして、顔を少しばかりだがほんのりと赤く染めた。私は首をかしげた。
有坂がどうして顔を赤くしたのか、そして何故私のほうを振り返ったのか。
謎が深まるばかりだ。
有坂は私の中でどんどんと意味が分からない人になってゆく。
私がこんな人を好きになった理由が今更分からなくなってきた。

有坂は靴を履き終わると逃げるように帰っていった。
私はそんな有坂の背中を見つめることしか出来なかった。
有坂の家は私の家と真逆の位置にあって、私も有坂の家の場所は分からない。
だが、噂によれば結構大きい家とか。金持ちか、という謎も深まってきたところだ。有坂には小学四年生の弟がいるようだ。有坂は可愛くないと言うが、周りからは超可愛いと人気のようだ。そんな弟と有坂はよく比べられることが多いらしく、有坂は不満を爆発させている。現に去年は私に不満を漏らしていたのである。

有坂が帰っていった後、私もゆっくりと出口に足を進めた。
春の香りと温かさなんて目にも映らない。頭の中は大好きな有坂のことだけだ。
こんなに想うなんて初めてかもしれない。胸がなんとなく苦しいんだ。
もともと有坂のことは好きだったし、気になる程度だった。
でも、今はそれ以上なんだ。有坂が他の女の子と楽しそうに喋ってたら妬いちゃうし。嫉妬してるのは自分でも分かってる。だけど、有坂の楽しそうな笑顔とたまに自分と目を合わせてくれるのが私はたまらなく好きだ。
時々見せる意地悪そうな言動も行動も。
陰でがんばっているその気遣いも勉強が苦手なところも、全部全部。
そんな私をどんどん好きにさせてく有坂がずるい、なんて最近思ってきたり。
逆に有坂にどんどんハマっていく自分が馬鹿らしいと感じたこともあった。

そんなことを思っていると自宅に帰って来た。
マンションというよりアパートなのだが昔の建物のため表札には「マンション」の文字。
中は結構綺麗な方だが外観がやっぱり古いなと思う。
だが、こんな古い家は私は大好きだ。アンティークチックで素敵だなと思う。
親は仕事できっといないだろう。
自分の家の鍵を開けると金属の音と共にドアが開いた。

「ただいま…」
なんて言っても誰も「おかえり」と返してくれるわけ無くて。
そんな寂しい家に足を踏み入れた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

2話 ずるいよ

2話です。
1話見てない方は是非1話からご覧ください。

閲覧数:50

投稿日:2016/05/18 19:01:44

文字数:1,190文字

カテゴリ:小説

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