「弱音さんちの留学生」
  第一話 天使の元へ仙女が来た 

PART2「武侠女子高生と民国ボカロ」


この小説は、2012年12月15日、
ボカマスにて無料配布した小説本のWEB向け版です。

起承転結 4章構成になっています。


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 もともと此処は、ルームシェアの学生ばかりが住んだ、
学生寮だったとか。ボロアパートにも関わらず、値段に反して広く、
部屋数が多い間取りとなっている。

 リビングから玄関までの間に、もっぱらミクをお出迎えする際に買った
楽器の置き場になっていた部屋がふたつ。
ちょっと掃除しただけで、二人を迎える準備が整った…。

(どれだけ当時の私は、彼女にご執心で、
  機材を貢ぎ続けていたのだろうか…)


『ピン……ポー…ン……』


あぁ、チャイムがますます気弱になってきてる!

あんなに元気な子なのに、
それとも連れているボカロの子が押しているのだろうか……



「は~い、どなたですか~?」
我ながら、気の抜けた声だなぁなどと、
自分の声音にため息しつつ、ドアホンから玄関へ呼びかける。

しかし、カメラに映るそこには、誰の姿もなかった。

「そ…」
そ? たしかに女の子の声が聞こえたが、
それからしばらく反応がない。

しかし、ドアノブを回した瞬間に、
すぅっと、緊張した呼気が聞き取れた。


そして…



「小生(それがし)、樂(ユェ)正綾(ジョンリン)と申します!

 弱音ハクお姉様に、おめもじつかまつります!」




……はい?


 朗々と響き渡る挨拶。

 料理が旨い、酒が安いとて通っている中華料理屋、
そこで流れる中国映画専門チャンネルでも聞かないような、
京劇調の武侠な名乗り……。

 いや、そのまえに小生とおめもじって、
男性言葉と女性言葉が混じってやしませんか?


「ま、まさか…」
そう思いながら、視線を落とし、ゆっくりと扉を開く…。

カメラの死角、驚いたことにそこには、
想像以上に想像通りの光景があった……。



 地面に片膝つき両の拳を合わせた「抱拳礼」をした少女。
赤い現代風アレンジの中国服に身を包み、目を伏せてかしこまって居た。

 後ろにはこれまた、民国時代風の蒼い衣装に身を包んだ少女。
蝶の羽型に髪結したボカロが控える。

主人より身を低く、手のひらを地に付け、目を瞑って寄り添っている…。


「は、はは……」
馬(マ)さんの中華料理屋で見た6本の武侠ドラマ、
全300話以上でもみたことない光景。

 完全に気勢を削がれた私が、対応に困っていると、
少女はその表情をちらりとみた。

たちまち顔を青くして、再びまくしたてる。




「お、お姉さまにおかれましては、ご機嫌麗しう!

 先日は無理にQQにまでいらして頂き、

 ホームステイの快諾いただけましたこと、

 感謝の思い、滔々と大河のごと むぐっ!」

QQとは中国のメッセンジャーで、
回線が不安定な彼女の為に導入した。

のだが、それどころではない!


先ほどに倍するかという大きな声に、
慌てて彼女の口を塞いだ。

が、既に遅かった……


「むにゅぅ、なにを朝から騒いでるのよ、ばかハクぅ……」
あぁっ、やっぱりだ。
夜勤明けの親友、ネルちゃんを起こしてしまった。

このアパートはどんなに条件がよかろうと、
最低限の保守も行き届いていない。

元々薄い壁は、玄関脇の楽器倉庫部屋に穴が空いている。
隣室の彼女の部屋には声が筒抜け、ましてやさっきの大声だ。


「わわっ!ネルちゃん、ごめんね! あとで説明するからっ!」

バタムっ!

慌てて二人をひっぱり込んで、扉を閉める。

リビングへふたりを押しやると、
楽器庫の扉を固く締めて、自分もリビングへと向かう。

「もう、なにやってんのよ、ハク姐ぇ……
 ミクに申し訳ないから新しいボカロは買わないんじゃなかったの……」
元来、バイト代をおしゃれにつぎ込み倒すネル。
彼女は、スカイブルーの愛らしい少女を見逃さなかった。



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12月15日の時点では、ネルがハクを姉と慕って居るように書くつもりが
まだなかったので、ここで書き換えています。


中国ボカロには、公式で細かい設定がされています。
一方で、喋り方などにはなんの言及もありません。
なので、樂正綾に関しては「極端に純粋で単純」という設定に基づき、
自分の扱い安いように、勘違いばかりするほど素直な子、
にしています。

5年の歳月で、MMDにて酔拳まで使いこなすようになったハク姉を、
中国の女の子が、変に勘違いしたら? というノリです。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【ハクミク、南北組】 弱音さんちの留学生「1話-2章」

ハクとミクが暮らす部屋に、中国ボカロの二人がホームスティに来ました。 そして・・・  第一話の2/4。

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投稿日:2013/01/13 01:19:52

文字数:1,966文字

カテゴリ:小説

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