[1A]
夕日が沈み 月が見え隠れする
「あら大変 坊ちゃんのお見舞いへ」
愛読書(ほん)と フルーツと それを切るナイフ
そうだ 白薔薇(おはな)も忘れずに
[1B]
森の小道を いそいそと歩く
なのに どうして こんな時についてくるの
狼(彼)の視線が じりじりと近付く
もう嫌んなっちゃうわ
[1S]
私の前に訪れ 頭を垂れながら
「やぁ、今晩は」なんて
かしこまったフリして 嗚呼、下賎な奴だわ
そんなに私が好きならば
愛してあげましょう この刃で
[2A]
窓の外を見やると 白く輝いた満月
「ボクの僕は まだ来ないのかな」
腕から零す 血(それ)を舐め取りながら
彼女の作る ご褒美(デザート)を待つ
[C]
狼(彼)の躯から溢れた 真っ赤な涙は
留まること知らずドクドク 毒々しく
アナタの愛を包んで 妬いて パイにでもしようか
きっと素晴らしく甘くて 素晴らしく上出来ね
甘美なお味にね くらくら
根暗な坊ちゃん目覚め出す
濃厚なお味にね ぐらぐら
思考がだんだん侵される
真っ白な薔薇なんて あのお方には似合わない
さぁ さあ 赤く 赤く 染めあげて
[ラストS]
ノックの音が 部屋に鳴り響く
「お坊ちゃま、ゴキゲンは如何ですか」なんて
かしこまったフリして 嗚呼、穢い奴だね
ディナーの後にパイを食べながら
ぼくは俯いて 嘲(わら)った。
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