レイムさんと紙魚子さんは、暦君たちと別れて、ニコビレの廊下を歩いていた。
「でも、そのサナギちゃんっていう子、大丈夫かな」
紙魚子さんは、つぶやく。
「うん、大丈夫だよ。ワタシの勘だけど」
横でうなずく、レイムさん。
「いつも、妙な自信があるね。あなたには」
そういって、レイムさんをみつめる。
「うん。その子の居場所までは、わからないけどね。でもね、異界にいるのか、こっちの世界にいるのか、そのくらいは分かる」
異界って、なによ。またこの子の変な空想?
そう思いながらも、あえて紙魚子さんは、彼女の話に来き入っていた。
●神の依り代
「ツクヨミはね、たぶん、異界の王なんだよ」
廊下を歩きながら、もし他の人が聞いたら首をひねるような、会話を続けるレイムさん。
「王って?ツクヨミさんは、まだ子供なんでしょ」
聞き流すつもりが、つい聞き返してしまった。
「うん、でも“神の依り代”ってこともあるからね」
「え?」
「つまり、その子に神が乗り移っている、ってこと」
まあ、いいや。とりあえず、この子の話を聞いていよう。
「それでね、そのツクヨミは、異界からこちらの世界に、干渉してくるってワケ」
「どんな?」
レイムさんは、歩みを止めて、ニヤッと笑った。
「この世界を、支配すること、とかをねらってるのかな?」
面白いこと、言う子だな。
紙魚子さんは何となく興味がわいてきた。
●“はっちゅーね”は、私たちの味方
「それじゃ、支配するために、その神...ツクヨミは、何をするの?」
「うん、魔の使いをよこすのよ。こっちの世界に」
「え?」
レイムさんはふたたび歩き出した。紙魚子さんも続いて歩く。
「魔の使い?って?」
「そう。“はっちゅーね”っていう、魔の使い、よ」
「え?」
思わず、紙魚子さんは目をむいた。
「はっちゅーね、が? 魔の使い、って」
レイムさんはうなずいた。紙魚子さんは、眉をひそめる。
「だって、さっきは、何というか、私たちに味方をして...くれたみたい、だったよ?」
「そうだよ。だから、きっと、裏切者なんだよ」
レイムさんは、片目をつぶって、指を一本立てた。
「“はっちゅーね”は、きっと、私たちの味方。異界の裏切者、なのよ」σ(゜・゜*)
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