一方、神波宅。
 「マスター、起きて下さい」
 寝ている神波を起こす量産型のミク。
 「…ミク、もうちょっと寝かせて」
 神波を起こす量産型のミクに対し、布団から出ようとしない神波。
 「…俺との約束、忘れたわけじゃねえよな?」
 高野の口調を真似て量産型のミクがいう。ただし全く似ていない上、凄みすらないので、どことなく気が抜けている。
 「…しまった!、今日先輩と約束があったんだ!」
 その量産型のミクの似ていない物まねを聞いて高野との約束を思い出した神波。
 「…マスター、高野さんとの約束を寝過ごしてすっぽかそうとしたの、もう何回目ですか?」
 呆れたように量産型のミクがいう。先ほどの似ていない真似は、寝坊で何度も約束をすっぽかされた高野からの入れ知恵だった。
 「…ごめん。昨日あまり寝られなかったんだ」
 あくびをしながらいう高野。
 「…朝食はできていますから、食べましょう」
 その量産型のミクの言葉を聞きながら、手早く着替える高野だった。

 着替え終わった神波は量産型のミクと一緒に朝食を食べ始めた。
 「…ミクは昨日はどうだった?」
 眠気を覚ますために量産型のミクが淹れてくれたコーヒーを飲みながら切り出す神波。
 「…いろんな"私"に会えて、とても楽しかったです」
 笑顔でこたえる量産型のミク。他のPの量産型のミクと話していたのは彼女には新鮮だったのだろう。
 「…マスター、もっと"私"と話したいです」
 せがむ量産型のミク。基本的に彼女は神波が大学に行く時は留守番を任されることが多い上、神波自身が必要がなければあまり外に出ようとしないので、どうしても外に出る回数が減ってしまうのだ。
 (先輩からももっと外に出ろっていわれるんだよなあ…)
 そう思う神波。高野は彼とは対照的に色々な所に出かけており、その時の話をしてくれる。
 (僕はあまり外に出る必要性は感じないんだけど、ミクのことを考えると、もうちょっと外に出た方がいいのかなあ…)
 そんなことを考えながら、量産型のミクが作ってくれたサンドイッチを食べる神波。
 (…だけど、木下さんの話を聞くとなあ…)
 そうも思ってしまう神波。木下と話して、彼女が他人との接触を過度に避ける理由がなんとなくだが分かってしまったので、無理してあの手のイベントに行った方が良いのかと思ってしまう。
 「…マスター、やっぱり、昨日何かあったんですか?」
 量産型のミクの疑念に、しまったという顔をする神波。どうやら頭で考えていたことが表情に出ていたらしい。
 「マスター…、寝不足なのは…」
 「…ミク、サンドイッチおいしかったよ。先輩が待ってるから行ってくる」
 自分の分のサンドイッチの残りを無理やり口の中に詰め込みながら、その量産型のミクの何か言いたそうな表情から逃げるように慌ただしく出かける神波。残された量産型のミクは不満げな表情だった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

初音ミクとリンクする世界 初音ミク編 2章11節

閲覧数:23

投稿日:2017/07/02 13:36:51

文字数:1,213文字

カテゴリ:小説

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