私は、愛を知らなかった。


誰も教えてくれなかった。

誰も与えてくれなかった。

与える人も、いなかった。



お人形が好きだとか。

人参が美味しいとか。

そういうのとは違う。

嘗てはそんな事すら。

知らない無知な少女。




だけど、貴方が教えてくれた。

愛す事、愛される事、愛そのものを。

貴方が全て、教えてくれた。

だから私はお礼をいっぱいしたの。

貴方が望む物は全てあげた。

貴方が望む行為もしてあげた。

貴方が望む私になってみせた。

そうすれば、貴方が愛してくれるから。


愛を、教えてくれるから。







「ルカ、お誕生日おめでとう!」

何時もなら入らないような、小洒落たカフェで、愛する彼と一緒に過ごす。
小説なんかで良く見る、ありふれた恋愛。
だけど、私にはとても輝かしいものだったから、これが夢なんじゃないかなと疑ってしまうほどだ。

「プレゼントは……僕だよ!」
「神威さん…?」

満面の笑みで言うものだから、私もつい面食らってしまう。
そんな私の様子がおかしいのか、神威さんは店の中にも関わらず大声で笑っていた。その時は笑った理由が分からず、ただきょとんとしているだけだったけど…。
神威さんは「冗談だよ」と細長い箱をとりだし、渡してくれた。中には、赤いルビーがアクセントのネックレスが入っていた。

「…こんなに高級そうなもの…いいんですか?」
「今日はルカの誕生日でしょ?遠慮しないで」
「あ、ありがとうございます…」

宝石が1つ埋め込まれたネックレスに見蕩れていた私は、神威さんの口元の笑みには気づかなかった。
その後、他愛もない話をしながら食事をしていると、聞き慣れない音楽が聞こえた。
それの発信源は神威さんの携帯だったようで、画面を見て少し青ざめていた。

「ご、ごめん!上司から会社に来いってメールが…今日は有休取ったはずなんだけどな。とりあえず、これで払って!お釣りはいいから!」
「神威さん!?」

慌ただしく上着を羽織り、財布から五千円札を出してそのまま走り去ってしまった。
呼び出しが掛かったのなら仕方が無い…とは思うものの、私の心が晴れる事はなかった。
だって私は、あの人を呼び出した人物を知っているから。綺麗な紅い髪を持った…。

テーブルに置かれていたアールグレイを私は飲む気になれず、そのままにして店を出た。





家に帰った後に、もう一度ネックレスを見る。陽の光が、その紅い宝石をさらに美しくしていて、私の目を惹きつけた。
陽が雲に隠れると、その輝きは鈍るものの、赤黒く、妖しい色合いに変化していた。

紅いのは、さっきあの人と私の時間を邪魔した“上司”の様に。

赤黒いのは、私達に流れる血液の様に───





───そうよ。

あの人へ向けた愛を、あの人と混ぜて、一緒にしてしまえばいい。
どうせ私は、あの人から……愛されていない。


結局、あの人の愛と釣り合っていたのは私のお金だったのだ。
あの人の為に色々なものを買って、その都度私を愛してくれた。
借金までして、お金を貸すこともあった。
きっとあの人は、私には愛を売っていて、電話の彼女には愛をあげていたんだ。
私は誰よりもあの人を愛しているのに、あの人の一番は私じゃなかった!

…でも、さっきあの人は『プレゼントは僕だよ』って言った。
なら、私はあの人の愛を貰う権利があるのよね?


あの人を、私のものにできるのよね?






夜も更けた頃に、合鍵と携帯だけを持って家を出る。
大好きなあの人に貰ったネックレスを付けて、とびっきりのお洒落をして、お気に入りの髪型をして。
今から、あの人にアイを伝えに行くの。
本物のアイを。




がちゃんと、扉の開く音が辺りに響く。
この時間帯だと、大体の人は眠りについているだろう。
私はあの人を起こさないように静かにお目当てのモノを探す。あの人も私があげたモノなら、どんなことされてもいいはずだけど、中々見付からないから仕方無くあの人の私物を借りることにした。

寝室に行くと、静かに寝息を立てているあの人がいた。
無防備に眠っていて、とても可愛い。
さあ起きて下さい、今から私がアイを伝えますから。


「かーむいさんっ」

「アイシテいます」

「これから一緒に」

「二人で幸せになりましょうねっ」

















『酷いな、ぐちゃぐちゃだ』
『凶器からはこちらの女性の指紋が検出されました。恐らく浮気が原因の無理心中でしょう』
『全く…男の方も大企業に勤めていて、将来性があったんだろ?何でこんな…』
『あれ、この女性…何処かで見たような。名前って分かりますか?』
『ん?えっと…確か───』
『───そうですか、有難うございます…少し、一人で此処に居させてください』
『…あぁ。あんま長居すんなよ』
『有難う、ございます』





『…貴女は、本当の愛を知りましたか?…巡音ルカさん』

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

愛【ルカ誕】

>>>ほぼ祝ってない<<<
ごめんなさいルカさん、最後に至っては後味悪くなっております。
前から少し病んだルカさんを書きたかっただけなんですが…少しどころじゃないですねこれ。
一応最後に出てきた2人のうちの敬語の方は、幼いルカさんを知っている人という感じです。学校の同級生?詳しいことは知りません←

落ち着いたら幸せながくルカを書きたいです。
それでは。

閲覧数:240

投稿日:2015/02/01 22:19:33

文字数:2,067文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

  • 関連動画0

  • ゆるりー

    ゆるりー

    その他

    あああああああああああこういうのも好きですううううううううううううう(ry
    大丈夫です、私が誕生日イベントのときに書くものは「おめでとう」の「お」の字も出てきませんから☆

    すぅさんの書くヤンデレって珍しいですよね。

    2015/02/09 23:36:12

オススメ作品

クリップボードにコピーしました