あのね、と君は言いました。
「昨夜の私はアリスだったの」
足りない時間を追いかけて、深い深い穴に落ちたの
世界は逆さまに回って 私は置き去りにされたの

それで、あのね、あのね、あのね


それで? とオウムは言いました。
いつでも耳を傾けている
枕元に立つ止まり木で首をかしげて君を見ている
深緑の羽根 長い尾羽 君の瞳と同じ色

そして今日も 君は 君は

白い部屋で頁を捲る 巡り巡る頁を捲る
言葉の海に飛び込んで記憶の泡沫に呼吸を任せる
見たこともない草原を 走り回る夢想をする
心の浮草 シャクナゲの花 終末論を身に纏う


あのね、と君は言いました。
「昨夜の私は海賊だったの」
孔雀色の波を幾千越え、長い長い旅に出たの
世界は私を拒んで あっと言う間に船は沈むの

だから けれど すでに いまだ 

だから? とオウムは言いました。
いつでも答えは知っているけど
薄桃色の唇が奏でる音色で歌えないから
深淵の果て 永い言葉で 君の瞳が曇らないよう


話すよ 語るよ 謳うよ 世界を
自分のコトバで言えない 思いを
話すよ 語るよ 謳うよ 世界を


そして いつか 君は 君は


白いインクで綴った思い出 白い頬に流れた思い出
満たされないまま転がって記憶の泡沫になって消えた
足りない時間を追いかけて走り回ることにも疲れた
沈む泥船 横たわるなら 終末論を孕んで生まれた

じゃあね、と君は言いました。
「来世の私は君になりたい」
似たもの同士 交わす言葉も無し 永い永い日々を周り
一方通行の感情を、私は押しつけていただけ、と。

だけど君は君を好きだ
そして君はすでに今や

好きだ。とオウムが言いました。
君の話す世界が僕は好きだった。
だけどそれを聞く者は、最早ここには誰もいない。
一方通行の感情は、宛先のない返事になった。

昔々、そんな話。



ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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オウム

閲覧数:141

投稿日:2011/08/05 21:47:27

文字数:796文字

カテゴリ:歌詞

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