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    Fire Flower ~夢の大輪~ 04

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    TEXT
     

    !ATTENTION!

    この小説は鏡音レンオリジナル曲「Fire◎Flower 」のイメージ小説です。
    また、作中ではけったろさんのラップアレンジver. の歌詞を採用させていただいています。

    以上の事に少しでも不快感を抱かれる方は読むのを控えてください。

    それでは、よろしくお願いします。





       9

     まさか、と思った。歌詞カードをぱらぱらとめくり、ちいさく息をのむ。今までリリースしてきた曲、とくにこのアルバムに収録されている曲は、過去に自分が、たった一人の少女を思って作曲したものばかりだった。
    「は、は……」
     さっきとは違う涙が頬を伝った。乾いた笑いをもらし、アルバムの歌詞カードにしずくが落ちるのにも構わずに、とくに三曲の歌詞のページをぱらぱらとめくる。

     「サンドスクレイパー」に乗って、自分は彼女とどこへ行きたかったのだろう? 「soundless voice」声にならない声で彼女に紡いだのは、どうしたって届かない思いだった。
     リンに笑ってほしいと思って歌った「LEO」や「dandelion」も、あの頃のまっすぐすぎる思いを書いた「Ocean」「crystal mic」「那由他の彼方まで」は、時に激しく、時には語りかけるように。どんな曲調にでも思いは表現できた。それだけ多くの想いが、そこにはあった。それでもどうにもならない思いのむなしさを「なまえのないうた」で綴り、「頑張ろうよ」と自分に強く歌った。

     レンはしゃくりあげながら腕で目元を覆った。涙はどうにも止まりそうにもない。先ほど胸から込み上げてきた温かさではない、ぎゅっとその奥が締めつけられるような切なさ。
     ひとつずつ、一歩ずつヒットしていった曲には全部、自分があの少女に恋した思いが詰まっていた。ひょっとしたら、これまでの道のりは自分の歌声とセンスを評価されただけではないのだろうと、初めて気付いた。
     君だけに。君だけに届けと歌った歌に、想像できないくらいに多くの人々が共感してくれた。
     それだけで、自分は認められた気がした。この気持ちは間違いじゃないのだと許された気がした。
     本当は、ずっと前からそれだけを望んでいたのかもしれない。才能よりも歌唱力よりも、ただこのあふれる思いを認めてほしかった。
    「カッコ悪、……俺っ……!」
     全然諦められてねえじゃん、と、情けない涙声で呟く。

     「Fire◎Flower」は、高一の夏、地元に帰省したときに作曲したものだった。あの夏祭りの、あの場所で、夜空に咲き誇る花火を見つめながら、なんとなしに口ずさんで出来た曲だった。
     荒削りの原石のようにこぼれ落ちた純粋なその思いを、あとから何度も歌いなおし考えを深め、磨き上げて出来たこの歌には、これまでの自分の想いの全てを込めた。
     「最初から君を、好きにならなきゃ良かった」と、ぽつりと出た言葉。
     この歌は最後に、この言葉を反転させて終わっている。
     本当は、心からそう言いたいと望んでいた言葉がそれだったのかもしれない。

     終わらない片思いをいまだに続けているのだとはじめて気づいた。
     



       10

     一度は退場したレンが再び舞台に躍り出ることで、会場の熱はピークに達した。ライブもクライマックス。高揚感に大きく息をつき、レンはマイクに向かって語りかけた。
    「花火の光は、思いの結晶なんだ。……あの色とりどりの光が、ひとりひとりの思いの集まり。それが弾けて光るから、花火は綺麗で、皆が思わず見上げてしまうんだ。……あの空の大輪は、思いの結晶を宝石箱からまき散らすように咲かしている花火なんだ」
     会場は静まり返ってレンを見ていた。心臓の奥底に小さな不安を感じる。
     届かないかもしれない――でも、届けたい。
    「皆、アンコール、ありがとう! そして……、最後に歌う、この歌は……俺の思いの結晶だ。精いっぱい空に咲かせるから、このホールの空に咲かせるから……皆……! 聞いてください……!

     『Fire◎Flower』――!」

     瞬間、どっと沸き上がった歓声の波にのまれながら、レンは息を吸い込んだ。このライブに来てくれた皆のおかげで、この歌を伝えることができる。そんな感謝の気持ちもひっくるめて、思いの全てをこの声に込めて、“君”に歌う。

     「最初から君を好きでいられて良かった」なんて、空に歌うんだ――……

     この歌のひとつひとつの歌詞に、君との日々が、詰まってる。やっと向き合えたこの俺の姿を、君に見てもらいたいんだ。
    (……なあ、リン)
     メロディを心の中で追いながら、ついさっき考えた言葉を、もう一度語りかけてみる。
    (俺、ちょっとは前に進めてるのかな?)
     自分がどこにいるのか、本当に間違ってはいないのか。不安で不安で、押しつぶされそうになりながら、無理やり歩いている。

     でもそれはきっと、誰だって同じなんだと思った。

     ――「詰め込んだ夢を打ち上げる場所。探し求めて、この街から出た。」
     上京してからこっち、夢を果たすことに躍起になっていた。
     ――「震える着信、電源を切った。燃えだす導火線。誰も止められない。」
     思えばその時も、ただリンのことばかり考えていた。次に彼女と会った時、面と向かって笑えるように。彼女の涙と引き換えに得た夢の切符を、無駄にしてはいけないと心に誓っていた。

     ――「世界の終りが今訪れたとしたら、全部ほっぽってふたり永遠に一緒なのにね」
     一年越しの花火を見つめてそんな事を思った。あの夜のあの瞬間は確かに永遠で。リンの次の恋人のこととか、自分のこれからの夢への不安だとか。そんなものは全部吹き飛んでいて、ただ目の前にリンがいる幸せだけが、レンを満たしていた。
     たとえ誰が何と言おうと、あの夜はレンにとって最高の思い出だったのだ。たとえそれが、彼女との別れの日であろうとも、あれほどに世界が輝き彩られた日は無かった。

     だからこそ、伝えたい。色あせないこの思いを、強く、強く。
     ――「Like a Fire Flower!
     僕が消えちゃわないように、火の粉散らせ! 夢打ちあがれ!」
     何よりも強く輝け、この思い。ずっと夢見たこのステージで、誰もが呆けて見上げるくらいに大きく輝くのが、自分の夢。
     ――「『最初から君を好きにならなきゃ良かった』なんて、嘘までついて」、
     この夢を、追いかけた。
     
     そんな若くて甘ったれた自分にとって、もちろん、この道は生ぬるいものではなかった。
     ――「慣れない景色、不自然な笑顔。」
     故郷を離れ、たった一人で、見たこともないくらいに多くの人々と出会った。
     ――「……華やかな祭りとは違ってた。」
     そんなわけがないのだ。色んな困難と出会うたび、壁にぶつかるたびに、何度もくじけそうになった。人間関係、スランプ、カルチャーショックでホームシックにだってなった。だけど、そのたび、
     ――「繰り返す留守電、『ガンバレ』の声」
     懐かしい彼らの声が蘇る。それは両親からの電話だったときもあるし、ファンレターだった時もある。その一つ一つは時に大きくレンの心を揺さぶって。せっかく、夢に向かって打ち上げる花火の導火線に火をともしたところだいうのに。
     ――「涙で導火線、消えちゃいそうだよ……」
     あのCD-ROMは、今でもレンの宝物だ。録音は素人だし、音も割れながらてんでバラバラで、マイペースに、皆が思い思いにしゃべっているだけのメッセージCDだけど、そこにこもった思いはレンが歌いあげるものと同じくらいに輝いていた。

     そうやって、皆が全力で背中を押してくれた。どれくらい助けられただろう、どれだけありがとうと言っても伝えきれないくらいに、それはレンの力になったのだ。
     だけど、いつだって、最終的に自分に一歩を踏み出させるのは、リンとの思い出だった。このままじゃ、次に彼女に会った時、笑い合えない――その思いが、レンに最後の勇気を与える。そしてまた、歩み出せるのだ。
     ――「宇宙の始まりがあの口付けだとしたら、星空はふたり零した奇蹟の跡」
     忘れない。忘れられない思いが、ここにある。

     だからこそ、今夜この思いを打ち上げる。大きく大きく、高く高く。届け、届け、届きますようにと、ありったけの想いを込めて。
     ――「Like a Fire Flower」
     空に花開いた大輪を見上げるなかに、君がいてくれたらいいなと、淡い願いを込めて。あれから二年経ったけれど。リンはこの二年、どこで花火を見上げていたんだろう。
     だけど、たとえどの空を見上げていたとしても。
     ――「君が見つけやすいように、雷鳴の如く夢轟かせ」、
     この轟音に気付いて、君が空を見上げますように。そしてこの光の結晶を見つめてほしい。君だけに、伝えたい言葉がある。
     ああ、でも。
     ――「『最初から君を好きにならなきゃ良かった』なんて、」
     そんなくだらない嘘は。
     ――「バレてるんだろうな。」

     叫ぶように、レンは歌った。会場はヒートアップし、ライブは本当の終盤にさしかかった。不思議な感じ。たった一人に伝える為。そんなエゴで歌っているはずだったのに。今感じている、この一体感はなんなのだろう。足元がふわふわする。ただ歌いたいという思いだけが実体化している感じ。

     今、とてつもなく幸せだった。
     

    鏡音レンオリジナル曲「Fire◎Flower」(http://www.nicovideo.jp/watch/sm4153727)のイメージ小説です。※作中ではけったろさんのラップアレンジver.(http://www.nicovideo.jp/watch/sm7813332)の歌詞を採用させていただいています。 ちょっと続きますが、よろしくお願いします。

    ライセンス:

    投稿日時:2010/10/10 23:11:03

    閲覧数:114

    カテゴリ:小説[編集]

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