いつの時代なのかそこがいったい何処なのか
誰も知らない世界――


まっ白な空とまっ黒の大地の世界がありました。
空にはまっ白の翼をもつ人が居ました。
大地にはまっ黒の翼をもつ人が居ました。

白と黒ふたつは完全に別けられていました。



ある時、まっ黒の大地にひとりのまっ黒の少年が、まっ白の空を見上げていました。
少年はいつも思っていました。

―あの空を飛びたい―

まっ黒な翼をもつ人は空を飛ぶことはできない定めでした。
それを知ってもなお少年は空を求めたのでした。

少年は呟きました。
「折角、僕には立派な黒い翼があるのだから、きっとあの空を飛ぶコトだって可能だろ?」

少年は黒い翼を力いっぱい羽ばたかせ始めました。
バサバサバサバサと音が響き、黒い土が舞い上がりました。
少年は大地から飛び上がりました。
初めて飛んだ黒い翼はたどたどしく風を掴み身体を上へともちあげるのでした。

少年は、自分の翼は空を飛べるのだと知って喜び、より高いところを目指しました。
黒い大地は段々離れ、白い空に近づきました。

しかし、白い空に近づけば近づくほど、翼にジリジリと痛みがはしるのでした。
痛む翼をさらに力強く動かしているというのに、少年の身体は段々落ちていきました。
「どうして!?もう少しなのに!」
この時少年は自分の翼を見ました。
少年の翼は焼けてボロボロでした。

翼は黒い粉になり消えていきました。
そして、翼をなくした少年も黒い大地に落ちていきました。


++


まっ白い空でまっ白な少女が、まっ黒い大地を眺めていました。
人々の噂では、あの黒い大地は恐ろしく危ない危ないところなのだと言います。
詳しく聞こうとしても、本当は何も知らないのでしょう「聞くものではない」と
あしらわれてしまいのでした。

ある日少女がいつものように下を眺めていると、ひとりの少年を見つけました。
彼はずっとずっと上を見ているのです。
それは、その日だけでなく毎日続いていました。

「あの人はなぜずっと、こちら(空)を見ているのだろう?」
少女は呟きました。

少女は少年に興味を持っていきました。
「あの人に、会いに行くぐらい良いよね?」
少女は空を飛び立ち大地に居る彼の元へ、降りて行きました。


少年はいつものように、白い空を見上げていると、そこから白い翼をつけた少女が降りてくるのを見つけました。
少女はこちらにゆっくり近づいて、少年の元にやって来ました。

「君は?」
「えっあ、貴方がいつもこちらを見ているものだから、気になっていて・・・」
「あぁ、じゃぁ君はあの空の人なんだね」
少年は空と少女を見比べると、優しげに微笑んだ。
それを見て、少女は何かが熱きなるような感じがした。
「ねぇ、君には名前がある?」
「え、名前は無いよ」
「そっか、僕にも無いんだ。空の人にはあるんだと思ってた」

その後、互いのことや他愛のない話など、二人は多くの言葉を交わした。

「ねぇまた会える?」
「うん、いつでも僕は待ってるよ」

少女は空へと帰っていった。
少年はその姿をずっとずっと見つめていました。


少女は少年のもとへよく出かけました。

「君は良いね。空を自由に飛べる・・・ねぇ、あの空には何があるの?」
「あそこには、何も無いよ。まっ白なの、どこまで行ってもまっ白」
少女が空の高いところを仰ぎ見る。
「それだけ?」
その問いかけに、少女は目を空から少年にもどした。
「うん。・・・そういえば、貴方には翼がないのね。大地の人にも翼があると聞いたことがあるのに」
「あぁ、そう・・・僕には翼が無いんだ。・・・だから、僕は君が羨ましい・・・」
少年は軽く少女のその翼を撫でた。
その行為に、少女は身体をピクリとはねさせる。
顔が熱くなっているのに気づくと、さらに少女の熱は上がってしまった。

「ねぇ、また来てくれる?」少年は微笑み
「うん、もちろん!!」少女は満面の笑顔をかえしました



少年は思っていました
あの翼が羨ましい、きっとあのまっ白の翼があれば、きっとあのまっ白な空を飛べるはずだと。
あの翼が欲しいと。


少女は少年に心惹かれていました。
あの人の笑顔がとても好き
優しいあの人が好きと。




その日も少女は少年を見つけ、彼の元へ降りてきました。
降りてくる少女を見つけた少年は、両手を伸ばし降りてきた少女を捕まえました。

「えっ、きゃ!いやっやめて、い痛いよ!いやぁっ!!」
少年は少女の身体を大地に押し付け、彼女のまっ白の翼を奪い取りました。


少年は少女から奪った、まっ白な翼を背負い
まっ白の空へと飛び立ちました。
白い翼は上手に風を掴み、空へ身体をもちあげるのでした。

「あの時よりも高くに来れた!これなら空にとどく」
少年はさらに上を目指しました。

その姿を少女は、まっ黒い大地から見ていました。
あの人が空へ行くことで、本当に笑ってくれるなら良いなと思いました。
「あぁ、空ってこんなに遠かったんだ・・・」
そう呟き、少女は空へ手を伸ばしました。


手の先で、あの人は必死に空へ空へと向っていました。
もういい加減着いたのではないかと思うぐらいになって、あの人の動きが止まりました。
あの人の身体は、段々黒い粉へと変わっていくのでした。
その時、自分自身の身体の感覚が無くなっている事に気づきました。
そう、あの人だけではなく自身の身体も粉になっていたのです。
こめかみにひんやりとした何かが流れ落ちた気がしました。
それを最期に、いつの間にか意識さえも消えていきました。


ふたりの身体は、空と大地に広がり交じり合い
空にひとつの灰色の雲と
大地にひとつの灰色の水溜りを
創ったのでした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

ふたつの翼(物語)

誤字脱字がありそうで怖い・・・

久々の小説?見たいなものを書いたので、かなりのリハビリ作ですOTL
一応最初は物語の大まかな内容のつもりで書きました。

こいつをどう料理するかが問題です。

閲覧数:114

投稿日:2010/12/11 22:58:50

文字数:2,384文字

カテゴリ:小説

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