夢中又占其夢-むちゅうまたそのゆめをうらなう-
壱ノ夢「蒼然」

怪鴟が啼く啼く（よたかがなくなく）
果蜜を吐き出し（かみつをはきだし）
嬥歌に酔え酔え（かがいによえよえ）
芥屑散らかし（ごみくずちらかし）

械 背負う仔鳥は（かせ しょうことりは）
闇夜に晦み（やみよにくらみ）
抱く夢幻に壊死する（いだくむげんにえしする）
眼球潰れりゃ（がんきゅうつぶれりゃ）
お先は真暗（おさきはまっくら）
御機嫌よう（ごきげんよう）

郭に墜ち着く怪鴟ども（くるわにおちつくよたかども）
刮げる滑稽 無様に踊れ（こそげるこっけい ぶざまにおどれ）
夜伽も出来ぬか 葛籠に入れよか（よとぎもできぬか つづらにいれよか）
刳貫き聴こえる喚き声（くりぬききこえるわめきごえ）
外障眼に手叩く没分暁漢（うわひにてたたくわからずや）

眼瞼を閉じ伏せ（まぶたをとじふせ）
其方に墜とそか（そちらにおとそか）
餓える酸漿（かつえるほおづき）
戯歌吊られて（ざれうたつられて）

吉詞に狐狗狸九十九折（よごとにこっくりつづらおり）
虚抜く怪鴟は鳴き叫く（うろぬくよたかはなきわめく）
笑うは狂花玉響はにかむ（わらうはあだばなたまゆらはにかむ）
紅玉青玉黒巾に寄せるは（こうぎょくせいぎょくくろごによせるは）
僅かな夢か（わずかなゆめか）

怪鴟よ啼け啼け（よたかよなけなけ）
果蜜に溺れろ（かみつにおぼれろ）
浮く君 変わらぬ（うくきみ かわらぬ）
嬥歌を舞え舞え（かがいをまえまえ）
芥屑埋れて（ごみくずうもれて）

抉開け見える（こじあけまみえる）
己惚 愚者よ（うぬぼれ ぐしゃよ）
私語 聴こえりゃ（ささやき きこえりゃ）
無垢なる目交せ（むくなるめくばせ）

抗う怪鴟は項垂れ頭（あらがうよたかはうなだれこうべ）
坐す主人に「ごめんなさい」と（ましますしゅじんに「ごめんさない」と）

善哉 善哉（よいかな よいかな）
叫天子が啼き舞う（ひばりがなきまう）
接吻て（くちづて）
暫時 暫時（しばらく しばらく）
骸が咲うよ（むくろがわらうよ）
蜜月に（みつげつに）

聳つ門に佇む傾城（そばだつもんにたたずむけいさい）
常磐の掟に敵いはせぬよ（ときわのおきてにかないはせぬよ）