「先生!患者の血圧・心拍数がともに低下しています!」
「落ち着け。心臓マッサージや電気ショックは?」
「今やってます!」
「帰ってきてくれッ―――」












<天国からの没シュート-天使と天使->




僕は今ぼんやりとした霧の中に立っていた。当然標識なども何もない。
唯一の目印と言えば自分が足を着いている地面に点々とある誰かの足跡ぐらいだ。

「ここ、どこ?」

当然の疑問を口にしてみる。
そういえば僕今まで何してたっけ?えーと・・・?

――ッ!

今までのことを思い出そうとすると眩暈がした。
一瞬脳内に浮かんだのは愛らしい顔をしたあざらしのぬいぐるみだけだった。
持ってた気がしないでもない。

「まあ、まずは、」

歩いてみよう。


***


しばらく歩いてみた。
先ほどから何故かエンゼルフィッシュが僕の目の前を泳いでいる。
・・・魚って空中を泳げたっけ?

ああ、そういうことか。

この世界に法則は通じないのだろう。なにしろ僕は『気付いたら来ていた』のだから。
ただ、懐かしい感じがする。前もここに来たことがあるようなないような。。

1メートルぐらい先に人影が見えた。視力はいい方だと自覚しているので間違いない。
猿が木から落ちなければ、だが。



***


1メートルぐらい歩いた。
門があった。いや、大きな白いドアというものだろうか。

ドアの脇に人が二人いた。碧眼の水色のツインテールの人と警笛を首から下げている金髪の人。

試しにドアの前に立ってみる。
・・・これがもしも開いて、これがもしも内側開きのタイプだったらどうしよう。びたーん、だ。

僕はそうならないことを祈った。

のだが、一向にドアは開かない。
代わりに脇に立っている二人が同時にこちらを向き言った。

「こちら天国です」

・・・はあ。天国ですか。ではなぜ僕は天国などにいるのだろうか。
よく分からないがドアの向こうに行かなければいけない気がする。

「あの、このドア開かないんですか?」

とりあえずお二人に聞いてみる。

「ん?ああ、まずは本当にお前が天国に行くのにふさわしいのか調べるんだよ」

ツインテールの碧眼が言った。
天国に行くのにふさわしい人ってどんな人だろうか。
悪い事をした人かどうか見定めるとか?ありえる。

なんてことを思っていると金髪の方もしゃべりだした。

「そういえばあんた名前は?」

なぜ名前を訊ねるのだろうか。
天国に行った人リストとかに登録するのに必要とかそんな感じだろうか。
答えないのも失礼なので正直に言う。

「グミです」
「グミ・・・いい名前ね。褒めてあげる」

褒めてあげるって・・・。なんて口の悪い天使なのだろう。
ここが天国ならお二人は天使だけども。まあ、口の悪い天使もいるってことで。

僕が天使についての定義を考えていると碧眼の人が金髪の人に耳打ちをし出した。
こそこそ話とはなんとまあたちの悪い・・・。しかし盗み聞きも悪いので聞かないことにする。

「なあ、こいつ本当に死んだのか?」
「だってここにいるんだから・・・死んだんじゃないの?」
「実はまだ生きていて何かの拍子にここにきた、ってことは?」
「なら迷子ってことになるわね」
「まあ、ありえないだろうけどな」
「だよねー」
「でも一応調べてみるわ」
「ああ、お願いした」

しかしこの碧眼の人かっこいいなー。ちょっと物言いは乱暴だけどイケメンって感じ。
かっこいい系女子というところだろうか。いや、天使だから人ではないのか。
ではなんというのだ。かっこいい系女子(天使バージョン)と名付けてみる。
うん、なかなかいいネーミングだ。さすが僕。センスあ―――

「おいお前」

色々考えていると碧眼の人に話しかけられた。
なにやら険しい顔をしている。

「なんですか?」
「ここに来る前の記憶、あるか?」
「思い出そうとしたんですが、眩暈がしました」
「そうか・・・」

なぜこんなことを聞くのだろうか。
あ、分かった。これも『天国に行くのにふさわしいかどうか』の試験なのだ。きっと。

「でもあざらしのぬいぐるみだけは覚えてます」
「ぬいぐるみ・・・?俺も小さい頃好きだったぞ」

なんと。俺系女子、いや俺系女子(天使バージョン)ときた。かっこよさ倍増ではないか。
感嘆していると金髪の人が横から言った。

「あんた今も好きなくせに何言ってんのー?」
「はあ?お前が何言ってんだ」
「アタシこの前うさぎのぬいぐるみにすりすりしてるあんた見た」
「なんだと・・・!?」

碧眼の人が真っ赤になって反論している。可愛いところもあるではないか。

「碧眼さん可愛いですね!」
「違う!あいつの見間違いだ!」
「嘘付いちゃいけませんよー?」

僕が素直に言うと碧眼の人が反論してそれを金髪の人が茶化す。
なんだかんだ言って二人は仲がいいみたいだ。

「おいお前、行っていいぞ許可が下りた」

いつの間にか真っ赤な顔を沈めた碧眼の人が僕に言う。
おお、遂にこの時が来た。天国へいざ参らん、だ。

「ではいってきます!」
「おう」

碧眼の人と金髪の人が僕を見送ってくれる。
大きなドアがゆっくり開かれていくのと同時に瞼が重くなった。

――もう思い残すことないかい?

自身に問いかけてみる。

ああ、そういえば碧眼の人と金髪の人の名前聞いてなかったなー。聞けばよかった。
今となってはもう遅いことだ。仕方がない。

意識が薄れていく中カラコロと下駄の音が聞こえた。
この下駄の音、おばあちゃん・・・?



―――あなたがここに来るにはまだ早すぎる。さあ、あちらにお行きなさい。



ばちり。
何かの音がしたかと思うと僕はまたあの大きなドアの前に立っていた。

「おい、大丈夫か?」

ちょっと懐かしい気もする碧眼の人と金髪の人が心配そうにこちらを見ていた。

「え、ああ。大丈夫です。なんでまたここに?」
「あんたは死んでなかったって訳」

疑問をぶつけると分かりにくい答えが金髪の人から降ってきた。
僕は死んでいなかった・・・?

「ほらな、やっぱり迷子だったろ?」
「あんたの勘もたまには役に立つのねえ・・・」
「それ褒めてるってことでいいよな?」
「一応」

今までに起こったことをまとめると『僕は何かをきっかけに間違って天国にきた』ということになる。
ふむ。そういうことだったのか。

「ということでお前とはここでバイバイというわけだ」
「もうちょっと歳喰って老けてから出直してきなさいってことよ」

ああ、そうか。僕はこれから現実の世界に戻らなければいけない、と。
なのでお二人とはさようなら、と。理解した。

「じゃあな」
「じゃあねー」

碧眼の人と金髪の人が手を振って見送ってくれた。

「さようならー」

僕も精一杯手を振った。ありがとうございます。という意味を込めて。
あ、忘れてた。名前聞かないと。

「あの、二人の名前教えてください」
「ミク、だ」
「リン。覚えとくのよ」

碧眼の人がミクさん、金髪の人がリンさんか。
いい名前だなあ。覚えておかないと―――



「先生、心拍・血圧共に回復しています!」
「やった・・・!」




『さようなら。ただいま』

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

天国からの没シュート-天使と天使-

どうも姉音です!
今回はくるりんごさんの「天国からの没シュート」の小説を書かせていただきました!

ミクさんとリンちゃんがかっこよすぎてもう・・・!
この小説のリンちゃんはおれおれじゃないですけども。

かっちょいい本家様↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm18486770

罰ゲームも書きたい・・・←

閲覧数:1,445

投稿日:2013/07/07 22:29:32

文字数:3,009文字

カテゴリ:小説

ブクマつながり

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