そして、次の休日。
「高井さん、こんにちは」
「安田教授、こんにちは」
ここは例の喫茶店。今回は、雅彦がデータを渡し、雅彦の研究データが使いものになるかを高井が判断する打合せである。
「この中にまとめてきた論文もろもろが入っています」
「受け取ります」
そういって、お互いが持って来た端末を近づけると、雅彦の論文等のデータが全て高井の端末に転送された。早速転送されたデータを見る高井。
「…とりあえず、全部持って来ました。論文として体裁がまとまっているものもありますが、書きかけの論文や、論文ですら無い、メモもひっくるめて全てです。文章のジャンルや完成度ごとにカテゴリー分けしてあります。コミュニティー内で使える論文かどうかの判断は高井さんにお任せします」
雅彦がデータの概要を説明する。そういわれ、まずは論文としてまとまっているデータを見始める高井。
「これなら世間に対して説得力のある論文としては十分使えるレベルですね。さすが安田教授です」
「…それ以外のものですが、書きかけの論文の中には、私の専門とは少し外れる分野の論文もあり、それについては、ひょっとしたら専門に研究されている方に引き継げるか、別の論文のたたき台になると考えましたし、メモ書き程度のものでも、研究を書き始めるきっかけになると思って持って来ました」
「分かりました。論文以外のメモのたぐいも、全て我々のコミュニティーに紹介するように取り計らいます」
雅彦から渡されたデータを一通り見て、内容を確認した高井。すると、何かに気がついたようだ。
「安田教授、このアンケートと書かれたものは?」
タイトルから、明らかに論文では無く、場違いで関係なさそうなタイトルが気になったのか、高井が疑問を発する。
「ああ、これですか。先日、僕の受け持っている授業で取ったアンケートの結果をまとめたものです」
「ここに入れてある、ということは、今回のデータに何らかの関係のある内容のアンケートですか?」
「はい、アンケートの内容ですが、僕の起こしたパラダイムシフトを10段階で評価したものと、自由記述欄に書かれた内容をまとめたものです」
「見ても良いですか?」
「どうぞ」
そういわれ、内容を見る高井。
「…かなり好意的な結果ですね。私から見ると、信じられない位高い評価ですね。多分木戸君に見せても同じように感じると思います」
「ただ、この高い評価は、僕の受け持っている授業の学生が回答したから高い評価が出たと思っています。僕の授業を受ける学生なら、僕の人となりも分かってますから、それが評価に影響した可能性はあります」
「それはあり得る話ですね」
そういい、しばらく考える高井。
「安田教授、このアンケート、他の所でも実施しませんか?」
「他の所でですか?」
「はい、安田教授の行った判断の評価は、パラダイムシフトに対する現状把握として使えるデータになると思います。安田教授であれば、このアンケートを行う理由は十分すぎる程ありますから、アンケートを提案する説得力も十分ですし。現状が把握できれば、評価が高ければ高いなりの、逆に低ければ低いなりの戦略が組めるはずです。安田教授、教授のコネクションを使って、このアンケートをできるだけ多くの人に受けてもらうことはできますか?」
「実は、もっと多くの人にこのアンケートを受けてもらうことはこの結果を見て少し考えていたんです。分かりました、あらゆるコネクションを使ってこのアンケートに協力してくれる所を探します」
「お願いします」
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6.
出来損ない。落ちこぼれ。無能。
無遠慮に向けられる失望の目。遠くから聞こえてくる嘲笑。それらに対して何の抵抗もできない自分自身の無力感。
小さい頃の思い出は、真っ暗で冷たいばかりだ。
大道芸人や手品師たちが集まる街の広場で、私は毎日歌っていた。
だけど、誰も私の歌なんて聞いてくれなかった。
「...オズと恋するミュータント(後篇)
時給310円
眠い夢見のホロスコープ
君の星座が覗いているよ
天を仰ぎながら眠りに消える
ゆっくり進む星々とこれから
占いながら見据えて外宇宙
眠りの先のカレイドスコープ
君が姿見 覗いてみれば
光の向こうの億年 見据えて
限りなく進む夢々とこれから
廻りながら感じて内宇宙...天体スコープ
Re:sui
廃墟の国のアリス
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BPM=156
作詞作編曲:まふまふ
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曇天を揺らす警鐘(ケイショウ)と拡声器
ざらついた共感覚
泣き寝入りの合法 倫理 事なかれの大衆心理
昨夜の遺体は狙...廃墟の国のアリス
まふまふ
おにゅうさん&ピノキオPと聞いて。
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ガチですすいません。ネタ生かせなくてすいません。
今回は3ページと、比較的コンパクトにまとめることに成功しました。
素晴らしき作品に、敬意を表して。
↓「前のバージョン」でページ送りです...【小説書いてみた】 神曲
時給310円
A
ささいな綻び ほどけて転げた
いたいいたいの 消えなくてさ
きまぐれみたいな 言葉で届いた
狭い世界で 夜明けを見た
B
借りた本を 返すみたいに
繋がっていたいの
落ちた雫 掬うみたいな
魔法になりたいの...ミューズ
かぜよみるいと
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ミクちゃんへ
用事があるから先にミクちゃんの家に行ってます。朝ごはんもこっちで用意してるから、起きたらこっちにきてね。
GUMIより
ミ「用事?ってなんだろ。起こしてく...記憶の歌姫のページ(16歳×16th当日)
漆黒の王子
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