Tam4649neさん

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【二次創作】僕の君の心臓(第4章&エピローグ)

「この忙しいのに、何処ほっつき歩いてやがった!? この半人前が!」 親方の丸太のような腕で頬を殴られ、反動で吹っ飛んだ少年の体はテーブルにぶつかり、 弾みで上にあったカップが倒れ、熱いコーヒーが容赦なく倒れている少年の顔にこぼれ落ちました。 「うわっ!っちっち!」 その様子を見た先輩工員達が、少年を指差して嘲笑しています。 彼らも少年と同様に親を亡くしたり、あるいは貧しさから身売りされてこの工房に引き取られ、 住み込みで働いていましたが、ここの親方ときたら慈善事業家とは名ばかり、 家賃や食費と称して給料の大半を天引きし、タダ同然で少年たちを働かせているのでした。 かと言って他に身寄りも無く、生きていく為に黙って親方に従うしかない彼らの鬱憤の捌け口は もっぱら一番下っ端である少年に向けられていました。 おまけに今日は少年がパンを買って来なかったせいで夕食が薄いスープだけになってしまったのです。 工員達は口々に少年を罵り、誰一人慰める者はいませんでした。 更に畳み掛けるような親方の怒鳴り声。 「遅くなっただけならまだしも、頼んだ買い物もして来ねぇで、挙句の果てに金を無くしただと?  大方腹が減って買い食いでもしたんだろうが!」 「ちっ・・違う!」 「言い訳なんか聞きたくねぇ! お前の父親に昔世話になったよしみで引き取ってやったが、  仕事は覚えないは金はちょろまかすは! 貴様はもうクビだ、とっとと出て行きやがれ!!」 親方は吐き捨てるように言うと、二階にある自室へと上がって行ってしまいました。 「いつまでそこに居るんだよ、親方がなんて言ったのか聞こえなかったか?」 「おい、出て行くのはいいけど、床だけは拭いていけよ。 俺達の仕事増やすんじゃねえよ。」 先輩達の冷たい言葉を浴びながら渋々モップを取りに行こうとする少年の足に何かが引っかかり、 彼はまた床にしこたま体を打ち付けました。 「何やってんだ、ドジ。」 そう言ったのは、少年と同い年だがほんの1ヶ月早く工房にきただけでやたらと先輩風を吹かしてくる 工員の一人でした。 少年は倒れる瞬間、彼がサッと足を引っ込めるのを確かに見ていました。 「ちくしょう!」 もう我慢の限界でした。 少年は素早く起き上がると、足を引っ掛けた工員に殴りかかろうとします。 しかしすぐに、他の工員に後ろから羽交い絞めにされてしまいました。 「離せ! 離せよ!」 少年は足をバタつかせて暴れましたが、体格のいい先輩工員の力に敵う筈もなく、 ついに扉から外に叩き出されてしまったのです。 一文無しで行く当ても無くなった少年は、トボトボと町を歩き回るしかありませんでした。 口の中に広がる血の味が、妙に美味しく感じられます。 ふと見上げると、さっき少女と見た満月が高く空にありました。 『僕はもう、こんな世界にはいたくない・・・』 少年がそう思った瞬間、激しい胸の痛みが彼を襲いました。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 時は少し戻り、少年が親方や先輩工員達から酷い目に遭わされていた頃。 病室の少女はまさに死の淵に立たされていました。 少年と別れて間もなく、再び容態が急変したのです。 彼女の周囲には医者とナース、そして彼女の両親の姿がありました。 医者は少女の脈を測りながらナースに指示を出し、 ナースは記録を取ったり薬を準備したりと慌しく動き、 父親は黙って項垂れ、母親はおろおろと泣き崩れるばかりでした。 激しい胸の痛みに耐えながら、薄れゆく意識の中、少女がふと窓の外に目をやると、 さっき少年と見た満月が高く空にありました。 『ああ・・・もう一度、あの子に会いたかったな・・・』 少女はそんなことを思いながら、そっと目を閉じ、深い眠りに落ちました。 ・・・それからほんの半刻ほど後。 少女は自分の身体に例えようのない違和感を覚えて目を覚ましました。 あれほど激しかった胸の痛みが消えている・・・ 息をするのも苦しかったのに、まったくそんな様子もない。 まるで生まれ変わったように、全身に元気が漲っているような感覚。 『ああ、そうか、私は死んだんだわ』 少女は思いました。 『だから痛くもないし、こんなにふわふわした感じがするのだわ。  もしかして、ここが天国なのかしら?』 そんなことを考えた次の瞬間、自分の名を呼ぶ声とともに激しく身体を揺さぶられて、 彼女は現実へと引き戻されたのでした。 ふと我に返ると、そこは見慣れた病室のベッドの上で、 母親が自分を抱き締めて大声で泣いているのでした。 「ママ・・・どうしたの? 私、どうなったの・・・」 「お前の心臓は、一度止まった。 そして、また動き出したんだよ。」 父親が言いました。 「まったくもって信じられないことだ。  奇跡・・・医者としては極めて不本意だが、  それ以外の言葉では説明がつかないことが起きたのだ。」 医者がハンカチでしきりに額の汗をぬぐいながら言いました。 「私の病気、治ったの?」 少女は尋ねます。 「ええ、そうよ。 これからは学校にも行けるし、他の子供と同じように  走ったり、遊んだりできるのよ。」 母親の言葉を聞いて、初めて少女の心に喜びがこみ上げてきました。 「ああ、なんて素晴らしいことなのかしら!」 少女は叫ぶと、ベッドから飛び降りました。 「こら! いきなりそんなに動いてはいけない。」 主治医の止めるのも聞かず、病室を飛び出し、廊下を駆け抜け、裸足で病院の庭に躍り出ます。 月明かりを浴びて、少女は息が切れるまで踊り続けました。 そんな様子を、柵の外から見守る瞳がありました。 あの少年です。 突然の胸の痛みに耐えながら立っているのがやっとの今の彼には、 どこをどう歩いたのか覚えている余裕はありません。 ただ自然に、身体が動くままに任せてこの場所に辿り着いたのでした。 もしかすると、少女の楽しげな笑い声が彼を引き寄せたのかも知れません。 『あの子・・・元気になったんだ・・・良かった。』 嬉しそうな少女の姿を眺めていると、胸の痛みも忘れてしまいそうです。 本当はすぐにでも彼女のもとへ行って、祝福してあげたいと思いました。 が、それは叶いませんでした。 最初こそ病室の窓から呆気に取られて眺めているだけだった医者や両親が、 娘の身を案じて連れ戻しにやって来たからです。 少女が病室に戻ったのを見届けると、少年はそっとその場を離れました。 波のように繰り返し襲ってくる胸の痛み・・・もしかすると自分はもう そう長くは生きられないかも知れないと思いましたが、それでも彼は満足でした。 たとえこのまま死ぬことになっても、その前に大好きな少女の笑顔を この目に焼きつけることができたのだから。 やがて繁華街と住宅街を隔てる橋のたもとまでやってきた少年は、 人気を避けてよろよろと階段を降りると、橋の下に横たわりました。 差し込んでくる月の光を見ながら、彼は思ったのでした。 「ああ、そうか・・・これは魔法だ。  あの月が、僕のささやかな願いを聞き届けてくれたんだ・・・」と。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ その頃、医者と両親にしこたま叱られた少女は、一人ベッドに入って考えていました。 こんな軽やかな気持ちで眠りにつくのは生まれて初めてだ。 でも・・・ 「私、こんなに急に元気になるなんて、やっぱりおかしいわよね?」 「僕と君の心臓を取り替えることができたら・・・」 あの時少年が言った言葉が頭から離れません。 でも、いくら何でもそんなこと出来る筈がない。 魔法か奇跡でも起こらない限り・・・ 「でも・・・まさか?」 妙な胸騒ぎがしました。 「先生は言っていたわ。  奇跡という以外の言葉では説明できないことが起きた・・・と。 だとしたら!」 あの少年にもう一度会わなければ。 会って確かめなければ! 少女はもう、いてもたってもいられませんでした。 病室の近くに誰もいないことを確かめると、外出用の上着を羽織り、 窓を開けてサンダルを投げ落とします。 そして這うようにして窓から外へ。 幸いなことに、正門に鍵はかかっていません。 通りに出た少女は、いつも少年がやって来る方角に向かって歩き出しました。 長いこと歩いていなかったせいで木の棒のように細い少女の足は、 身体を支えるのがやっとの筈なのに、足どりは驚くほど軽く、 まるで私の体じゃないみたい・・・と彼女は思いました。 歩きながら少女は祈ります。 「お願い、お月様、もし願いを叶えてくれるのなら、ひとつだけ・・・  あの子に会わせて!」 そして、辿り着いたのでした。 まるで何かに導かれるように。 夜もふけて人通りもまばらになった橋の下に、少女は見ました。 月明かりの下、眠るように横たわる少年の姿を。 急いで駆け寄った少女は、少年の顔に手を近づけてみて、冷えきってこそいるものの 微かに息をしていることを確かめると、ほっと胸を撫で下ろしました。 そして彼の胸に手をあててみた瞬間、少女は確信したのです。 『彼の中にあるのは・・・私の心臓だ!』 医学の知識なんか持ち合わせていない彼女にも、 それがいかに常識はずれでばかげた考えであるかくらいわかります。 しかし、少年の胸の中で小さく脈打っている鼓動は、 ついさっきまで自分の中にあったそれと寸分も違わぬものだったのです。 「ねえ・・・お願い、目を覚まして!」 少女は泣きながら少年に呼びかけます。 何度目かの呼びかけに、少年はゆっくりと目蓋を開き、そして言いました。 「やあ・・・君か。」 そして少女の瞳から零れ落ちる大粒の涙に気付き、尋ねます。 「ねえ、なんで・・・泣いているの?」 「だって・・・やっと会えたと思ったのに・・・  あなたはこんなところで、今にも死んでしまいそうにしているんですもの。」 「はは・・・は。」 少年は力なく笑うと、はっとしたように尋ねます。 「そういえば・・・君、体は・・・大丈夫なの?」 「わからないの。 私、あなたと別れたあと、確かに一度死にかけたのよ。  それなのに、次に目が覚めたら胸の痛みがすっかり消えていて・・・  お医者様も何が起こったのかわからないって・・・。」 「そう・・・か。」 少女の言葉に、少年は深く息を吐いて満足げに微笑み、ゆっくりと目を閉じました。 「待って! まだ死なないでよ!」 少年の手を握り締めながら叫ぶ少女に、彼は薄目を開けて言いました。 「ちょっと・・・痛いよ。 そんな簡単に死なせないでくれるかな・・・」 「ご・・・ごめんなさい! でも私、どうしても確かめたいことがあって・・・」 「確かめたい・・こと?」 「ええ。 ねえ答えて! あなたの心臓は私の・・・」 「心臓? 君の? いったい何のこと?」 「あなた言ったじゃない、心臓を取り替えようって。」 少年は少しおどけたように笑うと、答えます。 「何をバカなこと言ってるんだい? そんなこと、本当にできるわけないじゃないか。」 「バカなことなのは分かってる、でも、いま私の中にあるのはあなたの心臓で、  あなたの中にあるのは私の心臓なのよ・・・そうでないと説明がつかないの。  ねえどうやったの? どうすればいい?  教えてよ! 今すぐにこの心臓をあなたに返すから・・・お願い!」 少年はゆっくりと身体を起こすと、必死に訴える少女を優しく抱き締め、 そして耳元でこう呟いたのでした。 「これは僕の心臓だ  大好きなひとの心臓だ  返してなんか、あげないよ・・・」 それっきり、二度と少年の目が開くことはありませんでした。 いつの間にか振り始めた雪が、少女の髪の毛に白い花を咲かせます。 少女はいつまでも、少年の手を握ったまま離しませんでした。    ・    ・    ・    ・    ・    ・    ・    ・    ・    ・ [ エピローグ ] 少女が目を覚ますと、そこはベッドの上でした。 ふと窓に目をやった少女は、眩しさに思わず目を細めます。 外は一面の銀世界でした。 「目が覚めたのね、良かったわ。」 反対側で声がして振り向くと、ナースが書類にペンを走らせています。 彼女は少し怖い顔をして言いました。 「少し元気になったからって勝手に病院を抜け出すなんて、皆で探し回ったんですからね。 「ごめんなさい・・・。」 「あなた、もう少しで凍えて死ぬところだったのよ。 今先生とご両親を呼んできますからね。」 その場を立ち去ろうとするナースを、少女は呼び止めて尋ねました。 「あの! あの男の子は・・・どうなったんですか?」 「男の子?」 ナースは怪訝そうな顔で答えます。 「そんなの知らないわ。 あなたは一人で橋の下でうずくまっていたの。」 「嘘よ! そんな筈はないわ、私は確かに・・・」 「とにかく、今は安静にしていて頂戴。 もう勝手に出歩いてはダメよ。」 ナースはそういい残して、病室を出て行きました。 『私が気を失ってる間に何かあったんだわ・・・』 少女は色々な可能性を考えましたが、その後結局、彼女が少年の消息を知ることはありませんでした。 しかし、あの日彼と言葉を交わした記憶は確かに少女の中にあり、 彼女の胸の中で力強く脈打つ心臓は、少なくとも彼女にとっては あの少年の存在を証明する何よりの証拠であったのです。 少女は退院後、学校を卒業し、幸せな結婚をし、子供にも恵まれました。 そして更に時は流れ、夫と子供とその孫たちに看取られて安らかに天に召されたのでした。 彼女の墓碑には、遺言に従って名の横にこう刻まれています。 『永い時を共に生きた 名も知らぬ友人』                                            おわり

人工モノクローム(詩:八白 曲:でっち)さんの同名楽曲をモチーフにした短編小説の第4章、そして終章です。

(あとがき)
実はこのお話はラストシーンが最初にできて、そこから主人公の少年と少女の出会いや、それぞれの生活環境・・・という風にイメージを膨らませていきました。 ですます調で文章を書くと子供っぽくなったり、表現がくどくなったりして難しいのですが、元の歌がメルヘン調なのでその雰囲気を大切にしようと思いました。 ちなみに、個人的に一番気に入ってるキャラクターは少女の家で働いてる黒髪のメイドだったりします(笑)

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投稿日時 : 2014/12/21 17:21

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