ブックマークした作品
-
僕はそれに応えよう
<王国の薔薇.8>
ある時、一つの噂が国中を駆け巡った。
あの王女が恋をしたらしい、と。
なんでもその相手は海の向こうの貴族様。
彼は才色兼備で頭脳明晰、人々の信頼厚い聖人君子かとさえ思える方。―――とてもではないが、王女には勿体ない相手だ。
だけではない。彼には既に恋人がいるそ...王国の薔薇.8
翔破
-
なのに、何故君は。
<王国の薔薇.7>
落ち着け、落ち着け、落ち着け。
何度も自分に言い聞かせる。
人々を変化させているもう一つの原因、それが処刑。
広場で、昼過ぎに、わざわざ人を集めた目の前での断頭刑―――晒しもの。
でもそれは今や普通のことで、日常茶飯事とさえ言える。
それはよく考えれば、一日に...王国の薔薇.7
翔破
-
それでも、君を信じたいんだ。
<王国の薔薇.6>
リンは僕を忘れたわけじゃない。
僕はこの二年間、ずっとそう言って自分を励ましてきた。
たまに、そう、忘れたようにふと見せる無邪気な笑顔や優しい心遣いだってそうだ。全てが全て変わってしまったわけじゃない。
だけど。
だけど―――
「レン、ちょっと珍しい...王国の薔薇.6
翔破
-
『さあ、ひざまずきなさい!』
<王国の薔薇.5>
『・・・レン様、戻って来たのですね』
視覚が混乱しそうな程華美に飾り立てられた、建物の一室。
僕は声をかけられて振り返った。
僕を「様」と呼ぶ、それはつまり僕の出生を知る人であると言うことだ。
そう―――僕とリンが双子だと知る一人。
『貴方は・・・』...王国の薔薇.5
翔破
-
そして僕は彼と出会った。
<王国の薔薇.4>
あれは、何歳の時だっただろう。
どちらかといえば最近のことだったと思うけれど、僕達の一家は海を越えた隣国である青の国に行った。
青の国に行くのは初めてだったから少し楽しみに感じていた。
他の国で知り合った人から話だけは聞いていたけれど、実際かなり住み易そ...王国の薔薇.4
翔破
-
ただ、淋しいとだけ。
<王国の薔薇.3>
リンと別れてからの数ヶ月は、まるで風のように素早くあっさりと過ぎた。
いや、単に俺がぼんやりしていたからそう感じただけかもしれない。
里親になってくれたのは役職で言うなら外交官の夫婦で、育ててもらった数年―確か六、七年だった―の間にいろいろな国を渡り歩いた。...王国の薔薇.3
翔破
-
その記憶は光に満ちている。
<王国の薔薇.2>
『お二人はね、皆が待ち望んだお子様だったんですよ』
僕等が小さい頃乳母として面倒を見てくれた女性はそう教えてくれた。
『お生まれになったときには、お祝いに国中の鐘を鳴らしてねえ。私も嬉しかったものです』
『ねえねえ、アンネ!お母様のことをおしえて!』
...王国の薔薇.2
翔破
-
彼女のことを忘れた日はなかった。
<王国の薔薇.1>
「しっかしレン坊もわからんなあ!よっくもまああの姫さんに仕えてられるもんだ」
陽気な庭師の言葉に僕はちょっと笑って応じた。
この人は気さくだから話していてほっとする。王宮は堅苦しい人が多いから、息苦しくなることも多いんだけど。
「まあ、意外とやり...王国の薔薇.1
翔破
- 1
2