ブックマークした作品
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プロローグ
それは夜。
月明かりすらない新月の夜、静まり返った帳の中で、一人の男が不安そうな表情で腕を組み、苛立ったように軽く足踏みをしていた。まだか、と思いながら固く閉じられた扉を眺める。もう何度目になるか分からない行為である。視線を送ったところで開くものでもないとは分かっているのだが、それで...悪の娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作)
レイジ
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ザン……と波の音が響く。
街から見て西南の外れに位置するこの港……いや、港だった場所と言うべきか。この場所には寂しいだけの海と、既に人の気配も感じられない廃れた町跡しか無かった。
ここは昔、漁業を生業とする人々が集まった小さな港町があったと聞いた事がある。しかし、さらに南の方角へ下った先に帝国と結...残された者(5)【悪ノ二次】
ズサ
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もう随分と歩いたのだろうか。
もと居た場所の跡形はすでに無く、日は殆ど西の山間に隠れ、東からは夜の闇が迫っていた。
辺りを見渡しても、この先にも後にも鬱蒼と茂る木々しかない。
私は周囲を見渡してから手頃よい巨木を見つけると、そこに向かって馬を引いた。
「さて、今日はここで野宿になるけど……ご要望は...残された者(4)【悪ノ二次】
ズサ
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彼女は、……ミクは私にとって世界で誰よりも大切な少女だった。
それはとても遠い過去、まだ私も少女と呼べる程の年齢だった頃に……私は幼かった彼女に拾われたようなものだった。
……いや。その当時の事を語る必要は、今は無いだろう。
ミクという少女を、一言で語るなら……そう。彼女は、あんたとは丸っきり「正...残された者(3)【悪ノ二次】
ズサ
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翌日の昼過ぎ。宿から出た私は、すぐさま処刑会場となる広場へと向かった。
広場は既に大勢の人数が集まっており、街の人々は皆、皇女の悪行や非情ぶりやどんな酷い仕打ちを受けていたかを口々に物語っていた。
そのどこか興奮した面持ちに半ば狂気じみた空気が混じっている。どんな人物であれ、目の前で人が殺されると...残された者(2)【悪ノ二次】
ズサ
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黄色の国の王政が崩壊した。
今、街の人々はその話題で持ちきりだ。
黄色の国は、他国の国民である私達から見ても酷い有様だった。
絶対王政。極悪非道。民の貧窮など嘲笑うように見下して、王族貴族達は贅沢三昧を繰り返していたという。
そしてなにより……その頂点に君臨していたのは、まだ齢14の少女だったと...残された者【悪ノ二次】
ズサ