物語の始まる前の日 【シェアワールド】響奏曲【異世界側】
「ずいぶん遠くまで見回りをしたようですね」
きちんとした服装にマントを羽織り、眼鏡をかけた青年が外から『塔』へ帰ってきたルカたちにそう声をかけてきた。眼鏡の奥、読み取ることのできない冷静なその表情に、ルカは思わずがくぽの背中に隠れてしまった。
4人で数日、森付近に点在する町や村の見回りをして。ルカたちが『塔』に帰って来た時。丁度『庭』から戻ってきたのだろう、玄関のところでキヨテルに出くわしたのだ。
有する魔力も魔術的技能もトップクラス。更に頭脳も優秀で身体能力も優れていると聞く。容姿も華やかさは無いけれどすっきりと整った顔立ちをしていて、女子術者の間でこっそり人気があるとか無いとか。
自分たちよりも数年先輩であり、その優秀さから『塔』の術者として活動しつつ、『庭の』教師もしているこのキヨテルの事がルカは苦手だった。