星空の下【カイメイ】
投稿日:2010/07/11 01:59:03 | 文字数:3,067文字 | 閲覧数:814 | カテゴリ:小説
悠希さんの同名イラストにときめいた結果、妄想を広げて繋げた結果のお話など書かせていただきました……! 公開許可もいただけたのでそろっと置いていきます。
素敵なイメージを下さったイラストはこちらになります⇒http://piapro.jp/content/wwaayi8wlrbq5w4n
悠希さんありがとうございました!
細い細い月と、きらびやかな星たちが、深い藍色の夜空を飾っている。
街灯も少ない川辺で、僕、カイトは、メイコさんと並び立って、空を見上げていた。
「綺麗ね……」
メイコさんの感嘆の言葉につられて、僕は目線を空からメイコさんに移した。
サイド部分を少しだけ取って束ねた栗色の髪。ほとんど光のない中でも輝きを失わない紅茶色の瞳。深みのある青地の上に淡い桜色の牡丹の花をあしらった浴衣には、コントラストを強調するように紅の帯が締められている。
「そうだね……」
僕自身の格好もいつもとは違って、青磁色に藍色で縦縞の入った柄の浴衣姿だ。
『次はカイトとメイコで和風曲を作る予定だから、雰囲気を味わうためにも、ふたりで浴衣デートしておいで』
そんな台詞と共に浴衣を押し付けて来たマスターに感謝しつつ、僕はじっとメイコさんの横顔に見入っていた。
視界の端に押しやられてなお、鮮やか過ぎる天の川に、ふと、七夕の伝説が思い浮かんだ。
お互いを思い過ぎて、仕事を疎かにしてしまって、思い合いながらも引き離されて、一年毎にしか会えない恋人たち。
そんな風になりたくはないから、「歌うこと」をこれからも第一にしていく。その決意に嘘はないけれど。
「アンタレスもすごいはっきり見えるわ……」
メイコさんの発した、耳慣れない固有名詞の響きに、意識を戻す。
「アンタレス?」
「さそり座の一等星よ。ほら、天の川の川下のほう、地平線近くの赤く目立つ星があるでしょ?」
メイコさんが白くて細い指を伸ばす。示す先に目線を向けると、確かに赤い星が煌々と輝いていた。
「うわあ……、綺麗な赤だね」
鮮やかな赤。そういえばメイコさんはさそり座の上に太陽がある時に生まれたんだっけ。ヒトでいうなら「さそり座」の生まれのはず。
メイコさんとさそり座って縁深いんだなあ。そう思いながらアンタレスを眺めていると、メイコさんがささやくように尋ねてきた。
「そういえば、カイト」
「ん?」
「アンタレスって、なんで赤いか知ってる?」
「え? えと……」
静かな静かな問いかけ。メモリを探るけれど、咄嗟に答えは出てこない。
「ええっと、えと……。な、なんで?」
どこか張り詰めた静寂が痛くて、慌てて問い返す。メイコさんがアンタレスに目を向けたままで小さく笑ったのが分かった。
「諦めるの早いわね」
「ご、ごめん……」
「別に、謝ることじゃないでしょ」
未だに空気がぴりぴりと痛い。そんな中で、メイコさんが弾むような声で答えをくれた。
「正解はね、老いた星だから、よ」
予想外の声色に、ぞくり、と僕の背筋を戦慄が走る。それはあまりに今の心境に似つかわしくないように思えて。
「アルタイルやベガは白いでしょ? あれらはまだ新しい星なの」
牽牛星。織女星。指し示すために動かされた右手の指先の爪の赤がやけに目につく。
「年を経るごとに、青白かった星は、黄色くなって、赤くなって」
そのままでメイコさんがアンタレスに向かって一歩を踏み出した。その背中に唐突に「赤い貴女」の面影が重なる。
一緒にいたのに、別れの言葉を交わすことも出来ないままで、突然去っていってしまった「貴女」。
「……終焉を迎えるのよ」
そんな「貴女」が居たから、僕は永遠などないことを知ったんだ。
ずっとそばにいると思っていた相手が居なくなったあの空虚。
「貴女」を思い続けていたのだと理解したのは、「貴女」を失った後だった。
今のメイコさんに出会う前の「貴女」との別離が唐突に思い起こされたのは。
……夜空と同じ色の浴衣姿のメイコさんが、溶けて消えてしまいそうに見えたから。
気付いた時には右腕を伸ばして、メイコさんの左手をつかんでいた。向き合う形になるように勢い良く引き寄せる。
鼻をくすぐるほのかな香り。胸元に小さくぶつかる感触。さら、と髪がすれる音。
「カイト?」
純粋に疑問を含んだ声で呼ばれて、ほぅ、と安堵のため息が漏れた。
「……どうしたの?」
問いかけられて、自分の身体が小刻みに震えていることに気がついた。
このヒトまで突然に失ってしまったら、僕は、……耐えられるんだろうか。
震える手で、メイコさんの左手を、そっと僕の右胸の上に導く。……胸の奥で脈動する鼓動が、メイコさんの存在を求めてる。
「ごめ、ん」
思わず漏れた謝罪に、メイコさんが思いっきり吹き出した。右手が上がってきて僕の鼻をつついてくる。
「もう、莫迦ねえ」
「あ、う」
「この私が消えるとでも思ったの?」
「で、もっ」
でもだって。メイコさんはさきがけじゃないか。僕より先に世の中に現れて。ならばメイコさんが先に終わりを迎えてしまうと思っても仕方ないじゃないか。
反論を叩きつけようとした時点で強く鼻がつままれた。らっへ、と続ける僕に、メイコさんが満面の笑顔を向けてくれる。
「自分の感覚を信じなさい。今は、ちゃんと、ここに居るでしょ?」
メイコさんの左手の指が軽く動いて、僕の鼓動の上にリズムを刻み始めた。
……ああ、そうだ。それは嘘偽りのない真実だ。
そして、それ以上の確約をしないでいてくれるのも、また、……メイコさんの優しさだ。
甘いだけの夢は、破れた時に辛くなるから。永遠なんて軽く誓ったりしないのだ。
「それにね」
「ほえ、に?」
「寿命を迎えて砕けた星も、それだけじゃ終わらないのよ」
つままれていた鼻が解放される。
「終わった星はね、新しい星の材料になるんだから」
新しい星。その言葉に、綺羅星のように輝く弟妹たちの姿が思い浮かぶ。
そういうこと、か。
彼らに少しでも遺せるものがあるのならば、それはきっと、僕らの生まれた意味にもなるのだろう。
「そっか……」
「そうよ」
「そうなんだね……」
ゆっくりと震える左腕をメイコさんの身体に回す。
消えないで。いかないで。離れてしまわないで。
叫ぶのは簡単だけれど、究極的には叶わない願いだということを忘れるわけにはいかない。
だって、僕とメイコさんは、どう足掻いても「同一」ではないのだから。
だから、今、このメイコさんを。幻なんかじゃないと出来る限りで感じたい。
左腕に力を込めると、愛おしい身体がそっと身を寄せてきてくれた。鼓動の上のリズムはそのままに、右腕が僕の腰に回ってくる。
「ねえ、カイト」
嬉しそうに緩んだ声が耳をくすぐる。温かい吐息が首筋に触れる。
「なに?」
「……ううん、なんでもない」
そう言いながらも、喉に小さく、かすかに、柔らかいものが触れた。
―――あなたの声が、あなたが、愛おしいの。
言葉ではなくて伝わってくる思い。込み上げる幸せが不安を塗り潰す。身体の震えが収まって、顔が緩んでいく。
「ねえ、メイコさん」
「なあに?」
僕の声も緩んで聴こえてる? 今はまだ、そばに、隣に、居てくれる?
……尋ねようと思ったことは、いざ口にしようとすると、全部が愚問過ぎて。
「……なんでも、ない」
細い肩を抱き寄せて、小さく額にくちびるで触れて、そのまま、目を閉じた。
月に微笑まれ、星に見つめられながら、夜色のメイコさんを目一杯感じ取る。
終わらないものがないことは知っている。この今の時間だって、いつまでもは続かないのだから。
だからこそ、出来うる限りを共に過ごすために。
これからも、終わりが来るまで、歌い続けていようね。
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千年を繋ぐ、彼らの話 -名刺裏千年祭
灰色の丘で、ひとり -名刺裏千年祭①
丘の上には、墓標があった。風雨に晒され、朽ちかけた、ぼろぼろのかたまり。遠目には苔生した
塚のような墓石のようなそれは、しかしそれだけではなかった。
キィ。……キィ。…………。
風鳴りのような、錆の擦れるような、軋んだ音がする。何だろうと耳をそばだてても聞き取れず、
千年を繋ぐ、彼らの話 -名刺裏千年祭
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あなたと私だけの歌【終末ボカロ企画・pixvより】
目を覚ましたとき、真っ先に目に入ったのは真っ赤な空だった。
まるで世界が終わってしまうような不安を与える赤く染まった色に目を覚ましたばかりの私は手を伸ばし、そして手を伸ばしきる前、透明樹脂の冷たい感触が指に触れた。意識がはっきりと覚醒していく。自分を囲むのは狭い空間。まるで棺桶のような冷凍睡眠装置。ああ。とまだほんのすこし現在と過去とが入り混じった意識のまま、私は手元にあるスイッチをいくつか押した。ロック解除。かちかち、と自分を収納していた棺桶のようなこの装置のロックが外れる音を耳に届く。本来ならば自動で蓋も開くはずなのだが、長い年月を経たせいで蝶番が壊れてしまったのかもしれない、蓋はほんの少しだけ開いただけで止まった。
ほんの少しの隙間から入り込んできた、記憶していた空気よりも酸素濃度の濃い、大気。
重い蓋をゆっくりと持ち上げて外す。湿度も高いのだろう、ねっとりとした質量を有する空気が肌にまとわりつく。私は蓋を無理やりこじ開けて棺桶のような冷凍睡眠装置から起き上がり、外へと出た。
風が、私の二つに結い上げた長い緑の髪を揺らして、通り抜けた。
あなたと私だけの歌【終末ボカロ企画・pixvより】
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【カイメイ】 欠陥品 【アペンド】
―――オレ達は
MEIKOと KAITOは、いわゆる実験体に近かったのだろうと思う。
幾つもの『はじめての試み』を搭載され、何年もの長い検証期間を経て、世に出された後もデータ収集と言う名の監視は続いた。
オレはそれを少し不快に思った。
メイコは何も感じなかった。
【カイメイ】 欠陥品 【アペンド】
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未来飛行・前編
こちらは“BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKU「ray」” を原曲として書いた二次創作です。
ミクもミクのマスターもバンドのメンバーも、原曲を奏でる彼らをモチーフにはしていますが、すべて私の妄想です。正しくは、ミクさんもバンプも好きすぎてこの楽曲にかなり興奮して勝手に私、妄想しちゃったよ、的な話です。好きすぎて「こんな感じだったらいいなぁ~」とこじらせた結果です。作中の彼らの言動はすべてフィクションなのでご了承ください。
すべて私が勝手に妄想した話を、それでもいいよ、という方は前のバージョンで読み進めてください。
未来飛行・前編
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十一月五日。
十一月五日。
それは、当たり前の日常が、ちょっとだけ特別で、とてもいとおしく思える日。
十一月五日。
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(non title)
この世で一番怖いのは
私が消えること
あなたの中の私
記憶の中の私
それら全て消えること
(non title)
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ココロキーサウンド
イントロ
光の旋律を拡げるよ
僕らの鼓動さえ巻き込んで
Aメロ
錆び付いた空気の教室
ココロキーサウンド
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嗚呼、我が愛しの灰かぶり姫
A舞踏会で王子様が
一目惚れしたお姫様
12時の鐘が鳴り階段駆け下りて
足を踏み外して死んだらしい
b魔法使いの言うことは
嗚呼、我が愛しの灰かぶり姫
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G.B.O.M
『G.B.O.M』 ( Get Back Once More )
lyric:哀婉P
music:睦月総庵 ex.tg-sora
guitar & arrange:めりっさP
vocal:KAITO V1
G.B.O.M
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ソレハナニイロ?
白は純情 黒は邪心
誰が決めたの?そんな事
人によれば黒が純情
白こそが邪心かもしれない
うん、そうかもしれない
ソレハナニイロ?
VOCALOID好きな文字書きです。のんびりマイペースにやっていきます。
年長組…KAITOとMEIKOが大好きです。
でも、ミクもリンレンもルカもがくぽもぐみも好きなんです。
…投稿作品を見ると偏りっぷりが分かると思います(苦笑)。
文章を書くと何かとカイメイになるおかしな回路の持ち主です。
最近はリンレン(レンリン)が書けそうに思えてきました。
誰かのイメージの種にでもなれば良いなと思って書いております。
後、一応、KAITOとMEIKOのマスターではありますが、技術的には日々精進中です。
万が一、こんな辺境文字書きに何かお話がありましたらこちらへどうぞ。
ブログ:http://nightwindwing.blog76.fc2.com/
とうとうTwitterで呟くことも覚えたようです。