謡い終わり、少女の人形は閉じていた目を開いた。子どもが涙を零している姿に苦笑する。
「マスター、泣かないでください」
「グズ…ッ、だ、だって…その剣士のお姉ちゃん、かわいそう……」
 ぼろぼろとなおも涙を零す子どもに、困ったような表情を浮かべて少女は腕を伸ばした。自らのストールで涙を拭いてやる。
「…汚れるよ?」
「構いません」
 少女が離れると、子どもはやっと落ち着いたようだった。毛布をしっかり握ったまま少女に訊ねる。
「女の子は、さいご笑ってたんだよね?」
「ええ」
「じゃあ幸せだったのかなあ?」
「どうでしょうね。人によって幸せの定義は違いますし。私達人形は、【幸せ】とはそもそもどういうことかも分かりませんから」
「そっかあ…」
 残念そうに子どもは視線を落とした。そして再び少女の方を向く。
「ねえ、その女の子の名前って?」
「それは―」
 少女が答えようとした時、部屋の扉が開いた。
「まあ。まだ起きていたの?早く寝なさい」
「……はーい」
 しぶしぶ子どもは頷いた。くすりと少女は笑う。
「続きはまた、いつか」
「うん。おやすみなさい」
 子どもも笑って目を閉じた。
                        #
 とある廃墟。
 元は牢獄だった場所に咲く、菫の花。
 葉に隠されるように、その文字は刻まれていた。

 マジョハマダシンデイナイ
                     或る詩謡い人形の記録『雪菫の少女』 END

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

或る詩謡い人形の記録『雪菫の少女』終章

終わりです。
つたない文章力で申し訳ありません。アドバイスなどいただければ幸いです。

ここまで読んでくださった方ありがとうございました。
そして青磁様に多大な感謝を。

7/2 こそこそ言霊執筆中。
  ミクの誕生日までには上げたい…!レポートと格闘してきますorz

閲覧数:562

投稿日:2009/03/04 16:08:30

文字数:630文字

カテゴリ:小説

  • コメント5

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  • shixi

    shixi

    ご意見・ご感想

    >ayuuさん

    初めまして!読んでいただいてありがとうございます。
    まあこれも一つの解釈ということで…ってだから泣かないでください!!つ「ハンカチ」
    私も文章力ほしいです。まだまだなのです。

    ブクマもありがとうございます!

    2009/11/07 23:19:47

  • ayuu

    ayuu

    ご意見・ご感想

    初めまして~ayuuといいます
    雪菫の少女シリーズ一気に読ませていただきました!!
    至上の歌姫に呪いがかかった訳とかがすごくよく分かりました。
    もう号泣です・・・TT雪菫の少女がかわいそう・・・・!!!
    私もshixiさんのような文章力がほしいです

    ユーザーブクマさせていただきました!!

    2009/11/07 16:58:58

  • shixi

    shixi

    ご意見・ご感想

    >桜路さん

    読んでいただいてありがとうございます…ってええ……?!は、ハンカチティッシュー!!(慌)
    こんな拙い文章なんかで泣かないでください…!

    と、とにかく読んでいただいてありがとうございました!!

    2009/04/18 22:49:29

  • 桜路

    桜路

    ご意見・ご感想

    やばいです。
    久々小説読んで泣きました。

    なんかもうかなり感情移入しちゃって………


    一応、それだけでもお伝えしようかと思いまして。
    素晴らしい小説、ありがとうございました。

    2009/04/15 14:35:45

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