【初音ミク】誰にも渡さない【オリジナル】
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剣と魔法のファンタジー世界。
王太子は、最前線で戦ううち、呪いを受けて思考能力を失った。
太陽が地球の反対側にある真夜中の1時間ほどだけ、正気を取り戻すが、それ以外はまるで木偶人形だ。
太子の直衛隊は、かろうじて敵の呪術師を倒し、呪いのクリスタルを奪った。
それを持つ者の言うことを聞いて動くので、命じれば、最低限身を守る程度のことはできる。
何とかして本国の解呪の神殿まで、太子を送り届けなければならない。
直衛隊士も次々と斃れ、日が落ちて一息ついたときは、若い女剣士と太子二人きりになっていた。
敵の目を逃れ、王家の者だけが知る龍脈の地で傷を癒しながら、真夜中、つかの間覚醒した太子と心を交わす女剣士。
呪いが解ければ手の届く人ではなくなると知りながら、太子に寄り添う。
再び日が昇り、追っ手がかかる。
何とか日没まで逃げ、隠れたが、もう疲れきって走れない、歩けないどころか、動けない。
まだどこから敵が現れるかわからないから、眠れない、休めない、寝られない。
敵の指揮官が呼ばわる声が聞こえる。
おとなしく太子の身柄をこちらに渡せば、剣士ともども丁重に扱う用意がある。
女剣士は、太子の安全のために出て行くべきか、一瞬悩む。
いや、太子はそんなこと望んでいない。
私は太子を絶対に見捨てない。
そばを離れない。
この手を放さない。
誰にも渡さない。