穂末(水鏡P)の投稿作品一覧
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「それで、なんでこんなことになったわけ?」
長い桃色の髪の女性が、呆れた口調で言った。申し訳ありません、とミクは素直に頭を下げる。
はぐれてから五日後、ルカはちゃんとミクを探し出した。
水が調達できない状況だったら貴女死んでたのよ、と散々怒鳴った後、ミクを助けたリンに礼を言う、そこまではまぁよ...【小説】サーチライト 5
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幼いころに親とも別れてしまったミクは、自分の正確な年齢を覚えていない。
魔女狩り直前の友人たちは十歳かそこらで――にも関わらず、ミクだけ外見年齢も精神年齢も四歳程度だったから、「魔族」だとバレたわけだ――、権力者に囚われていたのが十年間くらい。
集落に来たとき、ルカが四歳かそこらだから、集落で...【小説】サーチライト 4
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ミクの目の前にいるのは、十年以上も前、数日間しか思い出のない金髪の子ども。当時から、おそらく二、三歳しか年をとっていない。
「レン……?」
金髪の子どもは、ミクが呼んだ名前を、不思議そうに繰り返した。高い声。
ミクはようやく思い出した、彼は――レンは、こんな声ではなかった。どこか似てはいるけれ...【小説】サーチライト 3
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歌姫が集落から消えて数日が経った。
「まぁいいんじゃないの、ルカが一緒なんだったら」
確かに、ルカが一緒に姿を消していたことに気付いた時は、カイトも安心した。ルカがすべてを知っていながらカイトたちに何の相談もしなかったことは納得がいかないが、ミクの性格を考えれば、下手に引きとめるよりは黙ってつい...【小説】サーチライト 2
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「メイコ!」
名前を呼ばれた女性は、不服そうに目を開け、暗い部屋の中に浮かび上がる白い服を見つける。
息を切らしたその様子から、非常事態なのだと分かったが、しかし彼「ごとき」が自分を起こしたという事実にムカついた。別に身分差があるわけではないが。
「なによ、カイト」
まさか、この集落が人間に知...【小説】サーチライト 1
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歌声が響く。高く澄み渡る声は自由な小鳥のようで、しかしその声の主は狭く暗い部屋の中にいた。
扉には重い錠。窓には鉄格子。歌いつづけるのは、まだ十にも満たないような幼い少女。時折窓の外から差し込む月明かりに、翠の髪が淡く反射する。幼いが、「可愛らしい」という形容が似合わないほどの美貌であった。
...【小説】サーチライト 序
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