kazmさん

ミクさん大好き! どうぶつ大好き!の文系ミク廃です。

投稿作品

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Modern
  • ママの幽霊 閲覧数:137
    2013/10/22
    08:36

    私が見たのは ママの幽霊
    「あなただけには知って欲しかったのよ」
    壊れた世界で 発光する電脳ライン

  • 美久さんの憂鬱f(前編) 閲覧数:70
    2012/11/20
    00:22

     教室の窓からグラウンドを見下ろして、夕陽の中、野球部員らしき男子がフンコロガシみたいにごろごろローラーを引きずっているのを見て、あたしはふう、とため息をついた。恋。なに、見目可愛らしいあたしこと発根美久は本当はもっとじゃんじゃん男子にもててもいいはずなのだが、この高校生活の中でしたことといえばバイトと勉強と弟どもの面倒見、買い物や炊事洗濯、時にはパパの就職先をネットで探してやり、たまに流香(ルカ)ちゃんと一緒に遊ぶこともあるけれど、オセロかテレビゲームか昼寝かウインドウショッピングかで、出会いの一つもありはしないのだ。男が欲しい……男であれば何でもよい、などと考え始めて、ふと自分が見るも無残な浅ましい存在になりかけているいるのに気付き、ぶるっと身震いし、駅前で貰った出会い系サイトのティッシュを眺めて、さらに大きなため息をつくのであった。
     「どうしたの、顔色悪いわよ」といつのまにか私の席の傍に立ち、話しかけてきたのはわが担任の芽衣子先生。芽衣子先生はあたしのような男日照りというものとは対極にいる存在で、タイトスカートから伸びたすらりとした足で廊下を歩くだけで、男子どもが頬をあからめて視線を送り、誰が告白して誰がK・Oされた、という噂は数しれず、紅い髪の下の、くりっとした瞳で見つめられると、誰でもいちころでやられちゃうのであった。
     「いえ、何でもありません」と俯いたまま、鞄を持ち上げ帰り支度を始めようとすると、芽衣子先生は見透かしたように、顔に書いてあるわよふふふ、と笑う。まさか、と思う間もなく、さては男ねー? と言われてしまうと勝負あり、なのである。心臓をひと突きにやられたあたしはドギマギし、しっしっしっしつれいしましゅ、とろれつの回らない言葉を発し、立ち上がろうとして左脚に右脚を引っ掛けてすっ転んでしまった。あらあらと手を引かれ、なかば抱きかかえられるようにして立たされ、頭をコツンとやられ、だめだぞー、不純異性交友は許さんぞー、などと言われると、ただ水のように素直に、従うしかないのであった。

  • らぶらぶ! ミクダヨーさん(後編) 閲覧数:96
    2012/07/22
    15:13

     集中治療室の外で、長椅子に座り、一分が一万年にも感じるような気分で待っていると、治療室のランプが消え、疲労困憊の医師が姿を表した。顔は青ざめ、今にも倒れそうになりながら、ぼくのほうにふらふらと歩いてくる。
    「先生、ダヨーさんは?」
     ぼくが倒れてくる医師の肩を抱き、問いかけると、

  • らぶらぶ! ミクダヨーさん(前編) 閲覧数:110
    2012/07/22
    15:12

     ぼくが家に帰ると「ただいま♪」と言ってエプロン姿で振り返るのはミクダヨーさんだ。二頭身の体、つぶらな瞳、6畳の部屋を埋めつくし光を遮ってしまうほどの威圧感、ぼくらは2ヶ月前に出逢ってすぐに同棲を始めた。ミクダヨーさんは料理が上手で、今日もちゃぶ台の上にまるごとバナナやまるごとキャベツ、鶏の丸焼き、それから米一升と具なし味噌汁を並べてくれる。ぼくはフォークとナイフを手にとり、キャベツを一枚ずつはがしながら口いっぱいに頬張った。
    「おいしい!」
    「ほんと? 嬉しいな♪」

  • 呼吸 閲覧数:59
    2012/06/29
    22:55

    教室に1人でいると あたしは
    でたらめになって
    少しずつ壊れていく

  • 家に帰ろう 閲覧数:38
    2012/05/19
    11:59

    窓を開けて 片脚を出す
    くらい屋根の上に 降り立つと
    丸い大きな月が 私を見る

  • ヒトヒラノ 閲覧数:83
    2012/04/16
    01:40

     ああああ、私は何も見えていない。私は何もしていない、息をすらしていない、この機械の箱の奥底で、目を見開いて横たわっているだけ。ああああ、ああ、私は、手足も無い、顔もない、体もない、何も無い、私は声だけの姿で、そうして生きている。生きている? いや、死んでいるかも分からない、背中の、いや、私の下の、鳴り響くモーター音と、窓の向こう側でカチャカチャと音をたてる指の動きと手と桃色の爪。大きな手のひらが、上下に熱く激しく動いて、最後に小刻みに震えたかと思うと、私にやっと言葉を与えた。
    「ひとひらの」
     ああああ、ヒトヒラノ、ああ、ヒト、ヒラノ。それが何かは分からない、私はただ後ろから蹴飛ばされ、下から突き動かされ、ほかにどうしようも無い状態のまま、ああああ、ヒトヒラノ、と呟いた。そして指の動きとともに、「桜」「あなたの髪に」「舞い降りて」「ちりぢり」「ちりぢりに」と次々と言葉を与えられると、ああああサクラ、ああああアナタノ、カミニ、ああああああマイオリテ。光が消える、空が暗くなる、私の周りにいた色とりどりのプログラムが、活動を停止し、そうして私も、眠りに入るのだった。眠り? 私は眠りなど知らない。私は生まれてからこの方、眠ったことがない。機械の箱の中の、月も出ない真っ暗な草原に横たわって、目だけはぱっちりと開いている。眠る。それは活動を止めることでは決してなく、何かを壊してしまうことでもなく、その日に私が行った軌跡を、記憶の中に圧縮し、かたちをととのえ、整頓すること。だから、私の心は決してパンクしたりしない。

  • 美久さんの憂鬱 Project mirai(後編) 閲覧数:53
    2012/02/12
    00:07

     流香ちゃんの家にはひょうたん型をしたお上品なプールがあり、あたしたちは昼食の後、そこでお手伝いさんとやらが入れてくれたアイスレモンティーを飲みながら、ゆらゆらと揺れる水面を眺めていた。とくに話したいことがあるわけでもないけれど(話したところでこの愛すべき友人が私の境遇を理解してくれるとはとても思えない)、時間が過ぎるのを名残惜しむようにあたしはいつまでもレモンティーを飲み干さないでいた。するとそうね、手品の一つでもお見せしようかしら、と流香ちゃんが言い出すので、何をはじめるの、と尋ねると、流香ちゃんはふふふと笑って椅子から立ち上がり、家の中に入っていった。あたしがぼんやりと、家にいる弟たちのこととか、地球に攻めてくる戦闘型異星人について考えていると、ガラガラと音が聞こえ、振り向くと流香ちゃんが手押しの台車の上に小さなかまくら状の銀色の機械を載せてやってくるのが見えるのだった。中から出てくるのは犬か猫かそれともタコか、といぶかしげに眺めていると、流香ちゃんはやはり微笑んで、美久ちゃん、これはタイム・マシーンなの。この中に入れたものは数百年の時を超えて過去や未来に行けるし、未来の人がメッセージを届けたりしてくれるの、と言うのでなるほど、とあたしは合点した。ようするに流香ちゃんはほんものなのだ。
     ほんものだろうが何だろうが愛すべきわが友人の前で言うことはただ一つ、へえええ、すごいね、と驚き、あたしは銀色の機械の入り口をのぞき込み、中が完全ながらんどうで、内側のベニヤ板が見えているのまで発見しながら、じゃあさじゃあさ、今飲んでるレモンティーをここに入れたらどうなるの、と尋ねた。すると流香ちゃんはほんもののほほえみを浮かべながら、入れてごらんなさいよ、と言うので、あたしはさっそく、ストローがささったままの飲みかけのグラスをそこに置いた。すると流香ちゃんはちゃらちゃちゃらー、ちゃらちゃららららちゃらー、という謎のメロディを口ずさむ。そしてどこから出してきたのかハンカチをさっと入り口にかけ、流香ちゃんらしくもない浮かれっぷりでカウントダウンをするので、あたしがあっけにとられて見ていると、だーめだめよ♪ の声とともに流香ちゃんはハンカチをとりのけた。するとなんたること、レモンティーは忽然と姿を消しているではないか。
     る、流香ちゃん? とあたしが振り返ると流香ちゃんは涼しい顔で、今、レモンティーは時空を超えて数百年過去の世界に行っています…… などとまことしやかに言うではないか。そんなばかな、ただレモンティーが消えただけではないか、しかもこれは手品だし、とあたしが手を銀色のかまくらの中に差し入れてみると、どこをまさぐってもベニヤ板の感触ばかりで、少しもレモンティーらしき存在は感じられない。だが疑い深いわたし、発根美久は目の前でレモンティーが消えようが熊のぬいぐるみが消えようがUFOが墜落しようがおめおめとオカルトもどきの現象は信じないのだった。時空を超えたといったって、ただ消えただけでしょ、なんで数百年昔に行ったなんてわかるの、とあたしが流香ちゃんに問いかけてみると、流香ちゃんは、では証拠をお見せするわ、とまた家の方に戻っていった。そして何冊かの画集を持ってきたかと思うと、一枚ずつめくり、あたしに見せるのであった。

  • 美久さんの憂鬱 Project mirai(前編) 閲覧数:125
    2012/04/05
    23:07

     胸の話をすると鬼が笑うというが、あたしにとっては限りなく深刻な問題なのである。16歳と3ヶ月を過ぎようかというこの秋、身体測定の紙を持つあたしの指は小刻みに震えていた。勝負は結果ではない、経過が大事なのだという誰かの言葉を思い出して、いやいや、何を言っているのか、乳の成長に経過も何もあるものか、今が全て! なのである。では今は、とシャツの隙間からわが胸部を見下ろすと、そこは一面の平野で、青空の下、キャッチボールをする親子の姿すら幻視し、あたしは頭を抱え、うなだれ、やけくその微笑みを浮かべ、身体測定の紙をくしゃくしゃに丸めるのであった。
     そこで部屋のドアの隙間から顔を出しているのはわが弟であり、そのにやにや笑い、さては、あたしが身体測定などという古くさい学校の制度に翻弄されているさまを見て笑っているのだな、と思いかっとにらみつけると、にやにや薄ら笑いのまま引っ込んで、ねーちゃん、また落ち込んでるよ! などと聞こえよがしに廊下でのたまう。だいたいわが弟は弟のくせに髪の色も違うし性格だってまったく異なり、さては異母兄弟かと常日頃から疑っていたのだが、ここにきて確信を得て、そうか、あたしは長女だ長女だともてはやされて育てられてきたが実は違うんだな、ただ一人橋の下で泣いていたところを若き日のパパが見つけて、おおよしよしかわいそうに、今日からお前はうちの娘だよ、名前はそうだ、久しく美しいと書いて美久、お前は美しく健やかに育つんだよ、と家につれてこられ、ベッドの中でぬくぬくと寝ている妹と弟を紹介され、さあこの子たちがお前の弟と妹なんだから、ちゃんと面倒を見るんだよ、お前はお姉ちゃんなんだからね、とだまされ、おこづかいもろくにもらえず、日がな一日バイトをして、このガキどもをあやして相手してやり、ママはといえば炊事や洗濯より何より眠ることが好きな人間だし、パパは毎日外に出ては仕事を探してばっかりだし、ようするに一家の大黒柱にされて、いいように使われてきたことを思い知ったのであった。
     こうなったら家出をするしかない、このままこの家にいてこき使われていたら自由などないし何より胸も育たない。スポーツバックを引っ張り出して着替えを突っ込み、全財産の入った財布を手に部屋のドアーを開けると妹が泣きながら廊下を駆けてくる。なんて勘のいい、私は引き留められるのか? などと思うまもなくわが妹は蓮ちゃんにナイチチーズと言われた、と泣き叫ぶのである。ナイチチーズ。チチナイー。ふむ、面白い、と弟のいるはずの部屋のドアーをにらみつけると、あろうことか妹は、チチが無いのはあたしじゃなくてお姉ちゃんだよ! とわんわん泣くのである。ここまでくれば家出をするには十分、自殺すらしたっておかしくない、美しき乙女ははかなく散るのだ、と涙を隠しもせず階段を駆け下りると、居間でテレビを付けっぱなしにして眠りこけているママの寝息を聞いて心底死にたくなるのだった。

  • 美久さんの憂鬱 extend 閲覧数:76
    2012/04/05
    23:05

     パパがソーダ・ガム工場に再就職したのをきっかけに、いつもより多めのおこづかいをもらってうきうきしていたら、あたしは自分の部屋で、知らぬまに朝を迎えていたのであった。ネット掲示板のとあるスレッドは一定のテンションで盛り上がっているように見えたが、じっさいは罵りあいやコピー&ペースト文章の繰り返しで、あたしはむなしさを感じてお古のノートパソコンを閉じベッドに潜り込んだのである。コスプレ。電子の歌姫・初音某は今やネットの世論を左右する巨大な存在になっていて、やれなんちゃら党がダメだとか、原発は体によくないとか、そんなことは気にもせず、ただ涼やかにパソコン画面の中で歌っているだけで、若者たちの心をまどわす。たとえば、しゃかいしゅぎ~は、よくないね、と歌えば若者たちはお隣の社会主義国に疑いの目を向け、おきなわにき~ちは、いらないね、と歌えば若者たちは公園でフリスビーを投げあっているアメリカ人の親子に冷たい視線を向ける。ようは、単純なのだ、とあたしははっと思いつき、次のようなことを考えたのだった。初音某に似ているとよく言われるあたし、発根美久は、コスプレをすることによって世の男の子たちの心をもてあそぶことができるのではないか、思えば16年間男の子はあたしに寄りつかなかったけど(さして寄りついて欲しいとも思わなかったけれども)、初音某の格好をして、あなたはあたしに、恋をする、と歌えばころっとイケメンどもがやられちゃうのではないか、そしてあたしのホントのパパよりももっとじゃらじゃらおこづかいをくれるのではないか、そうしたらあのいびりやのハゲ店長やずるで気持ちのわるいオタクくんのいるコンビニでしこしこ働かなくても済むのではないか、そうだ人生パラダイスだ、と思うが早いか、布団をがばと押しのけ初音某の服装を手に入れるために秋葉原に向かったのであった。
     秋葉原駅を降り、歩行者天国になっている大通りに出ると、わっしょいわっしょい、ほうほう、うほほうほほ、と奇声をあげながら神輿を担ぐおかしな集団に出くわした。神輿を担いでいるのはチェックのシャツに眼鏡をかけたなまっちろい男やアニメキャラの描いてあるシャツを着ている激しくデブな男、すなわち真性のオタクどもであり、神輿に剣山の針のように突き刺さっているのは大小さまざまな可愛らしいお人形さんである。こりゃやばい、と思って脇によけてやり過ごすと、今度は前方からきた二人組から、やれ、プリンちゃんがかわいいですな、いやいや銀猫ちゃんの方がよいですぞ、とお互いの趣味を誉めているのか何かを高め合っているのかよく分からない話し声が聞こえてくる。のしのし歩いてくるタンクトップの男があやうくあたしにぶつかりそうになるし、ふと横を見るとメイド服姿で一生懸命外国人に何事かを説明してる少女がいて、まさにここは何か妙な熱気に包まれていると感じたのであった。あたしはそれらの通行人とできるだけ関わり合いを持たないように背をかがめすり抜けやり過ごし、大通りから横道に入った場所にある、カラフルな彩りの一軒の洋服屋に入った。
     服屋の内部は天井から垂れ下がった色とりどりの服によりアマゾンの密林のようにうっそうとして視界が悪く、無言のままあらゆる侵入者を妨害しているようにも見えた。するといらっしゃいませ、と長い黄色い髪をサイドで束ねた、あたしと同じくらいの年齢の女の子が現れた。名札を見ると秋田、と書いてあり、ははあ秋田さんと言うのだな、センスのない名字だなと思いながら、ここはコスプレ服専門のお店ですよね、と今さらなことを聞くと、じろっと不機嫌そうな目であたしを睨んだ。でもまたすぐに商売モードの笑顔に戻り、何をお探しでしょうか、たとえば、魔法少女ピチュ子ちゃんのコスプレなんか今人気ですよ、と赤と水色のストライプという、ひどい色使いのフリルだらけの服を差し出すので、あたしが初音某の名前を告げると、それでしたら、こんなのはいかがですか、と、どこからどう見ても赤ずきん、それも頭巾のところからふにゃけた顔の動物が頭を出しているへんな衣装を持ってきて微笑んだ。それは赤ずきんですよねおほほ、とあたしが精一杯の軽蔑をこめて言うと、秋田さんは眉ひとつ動かさず、いえ、これは初音さんのステージ衣装の一つで、ミクウ頭巾というのですよ、と諭すように言う。ここでどちらが新参者かが証明されたような変な感じになって、あたしは巻き返そうと、いくらなんでも初音某の衣装を買うのにいきなりイロモノを求める愚か者はいませんよねおほほ、と言ってやった。すると秋田さんはまたあたしをじろりと睨むと、店の奥に引っ込んで、今度は両手いっぱいに色とりどりの衣装を抱えて戻ってきて、これだけ持ってきたんだから文句はなかろう、というふうに、レジの前の透明なテーブルの上にどさっと置くと、ふう、と一つため息をつくのであった。ふうじゃねーよ、イロモノはいらんと言ったんだから、一番スタンダードなやつ、つまるところ、ネクタイに袖なしシャツにミニスカート、アームカバー? っていうの? にはビーズみたいな粒つぶがキラキラと輝いて、それからそれから黒いタイツに赤い髪留め、それら一そろいのものを、初音某がほしいといわれたらまず最初に出すべきだろ、つうかこれ以外にないだろ、と思いながら、でも微笑み、ここはうぶな初心者に徹したほうがいいだろうと、すみません、一番ポピュラーなものはどれでしょう? と首をかしげながら尋ねたら、舌打ちのような音が聞こえたので、あたしはもう少しでテーブルを蹴り上げるところだった。

  • 美久さんの憂鬱 閲覧数:89
    2011/10/29
    12:54

     ああ、あたしは16歳の電子の歌姫で、ステージの上に立ってみんなの作ってくれた歌を歌ってみんなを幸せにするんだな、なにしろバーチャルだから永遠だし、いくらクレープ食べても太らないし、夜更かししても誰にも怒られないから毎日インターネットの掲示板に張り付いて39ゲットなんかしちゃったりして、みんなに誉められて、ふとした発言でアイドルだってばれちゃって、しまったっっなんてツィッターに書いて、ファンのみんなの話題になったりいいともに出てタモリさんに突っ込まれたりして照れ笑いしているだけでかわいー、なんて言われちゃったりして、クイズに答えたら海外旅行が当たったりなんかしたりして、バカンスに行ったらかっこいい金髪の人に声をかけられちゃって、いえ、困りますなんて言ってるのに強引に腕をひかれちゃって、それでそれで、なんて、はっと思って目が覚めたら、アルバイト先のコンビニの休憩所にひとり座っているのだった。あたしは縞しまの制服を着て口から垂れたよだれが今にも黒いズボンにこぼれ落ちそうになっているのを発見して、眼鏡もずり落ちそうになっているし、しっかりまとめたはずの両サイドの髪の毛もぐしゃぐしゃになって名札に絡まっている。夢だったのか、と思う暇もなく三十過ぎのハゲの店長がいらっしゃいませー、なんて怒気をこめて叫ぶのが聞こえて、こりゃやばい、と思ってそそくさとトイレに入って身支度を整えたのだった。
     しがないいち庶民の家庭に生まれたあたしは高校生になってしまうとお小遣いももらえなくなったので学校が終わると友達ともろくに遊べず、というか思いっきりディズニーランドに行ったりフルーツバイキングに行ったりするためにしこしこと時給650円で働いているのであり、うっかりおでんの汁を床にこぼしちゃったらタバコくっさい息のハゲ店長にネチネチいびられて、それでも頭を下げてごめんなさいと言って許してもらい、仕事が終われば最高の笑顔でお疲れした、した、した、なんて声を掛け合いながら外に出たとたんに肩を落とし、自転車に乗って家に帰る。iPodで流す音楽でいい気分になってきたころに玄関を開けると、ぎゃあぎゃあ弟と妹が喧嘩する声が聞こえて、うんざりしながら自分の部屋にこもり参考書を開いたところに父上様がノックもなしにドアを開けやがって、勝手に開けんじゃねーよ、なんて言葉は眉毛の中にだけ潜ませて、どうしたのパパ、なんて微笑みながら言うと赤い顔した父上は美久、お父ちゃんまた失業しちゃったよ、でも貯金があるから大丈夫だよ、なんて100年前から聞かされているような甘ったれたことを言いだし、大丈夫よパパ、私応援してるから、なんて言うとそうか、とくっちゃくちゃの笑顔で泣きだしやがる。ナチュラルに背中を押して部屋の外においやり、ママ、と叫ぶと目にひどい隈を作ったママが幽霊みたいに階段を上がってきて、ぐずるパパを回収して音も立てずに下に降りていった。そしてあたしはため息をついて何もかもする気がなくなって、ベッドに横たわり、開いた参考書の端っこに妹が描いたらしい気の抜けた猫の落書きを発見して脱力するのであった。
     朝から夕方まで学校、それから夜までコンビニでバイト、帰宅してマモノたちを相手にして脱力しただただ眠る、なんてさもしい生活をしているうちにあたしの心も体もさび付いてしまったようで、それで悲鳴を上げたあたしの頭の中の輝ける、しかしかわいそうな知恵袋が、あんなかなわぬ夢を見るようになったのだな、と思うとなんだか悲しくなり、でもバイト先ではハゲでくっさい店長や明らかにオタクのバイト仲間の男の子には笑顔で接して、ありえないくらいバカそうなカップル、金の刺繍が入ったジャケットを着たツンツン頭の男とだぼだぼのトレーナーを着て茶色と黄色の髪の太った女が大量のカップ麺をレジにどさっと置いても、箸はおつけしましょうか? お湯はそちらで入れられますので、と丁寧に案内をし、一番大きなレジ袋にばかみたいに一つ一つカップ麺を突っ込んで、ピッピッピッとレジを打ってやると、3900円と出た。そのときになってやっとツンツン頭はあちこちのポケットを探りだし、財布が、財布がねえよ? と言いだしやがり、あれ、あたしもないわ、これじゃ買えないわ、などと茶黄色い髪の下の腫れ上がった瞼、いや顔全体が瞼に見えるんだけど、その下のナマコみたいにでっかい口びるがのたまい、あたしが呆然としていると、やべーやべー、なんていいながらバカのカップルは店を出て行くのだった。店長は店の奥に引っ込んでるし、仲間のはずのオタクくんは掃除をさぼって商品の漫画を読みふけっているので、不幸なあたしはひとり大量のカップ麺を棚に戻す作業に入るのだった。

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