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  • 迷い路 閲覧数:137
    2011/10/23
    23:04

     開いた玄関の扉から、おずおずと少女が顔を出す。隙間を縫って屋内に入り込む風は強く、高く結われた緑のツインテールを揺らした。少女の瞳が門扉の左を、次いで右を確かめ、ようやく外へと一歩を踏み出した。
     硬い紺色のブレザーに包まれた腕はぎこちなく前後し、これもまたやはり硬い革靴は歩むアスファルトの上で軋みを上げる。その音は大きく響くようで少女は小さな体を更に縮めたが、道行く人影も見当たらない早朝では聞く耳も見る目もない。狭い歩幅の忙しい足取りが繰り返し繰り返し立ち止まり、誰もいない後ろを振り返っては風に揺れるスカートの裾を何度も直す間を置いて再開した。
     いつもなら曲がる道を真っ直ぐ、そこからは少女にとって迷路のような未知の世界が広がっている。道路を囲う塀の苔、屋根を飾り立てる色、果ては電線の通う道筋。次々移り変わる視界の中で知らない物が知る物へと変化していく事に少女は夢中になっていた。それこそ、昨日必死に覚えた迷路の攻略法を忘れてしまう程に。

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