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教会の鐘の音と、皆の撒く花吹雪と、それからいっぱいの笑顔。やっぱり憧れるなぁ、結婚式って…。
――Piririririri…Piririririri…Piririririri…
「もしもし…あ、密さん!」
「今大丈夫か?式が終わった辺りかと思って。」
「はい、あ、ブーケトスの前ですね。」
「ん?誰か...DollsGame-最終話.君という花-
安酉鵺
服はパーティードレス、普段はあまりしないけどアクセサリとバッチリメイク、そしてデジカメ…準備万端!
「ネムリー?入るよー?」
「りんご?うん、良いよぉ~支度出来た所だし。」
「お邪魔しまーす…おおぉ――――…!」
真っ白ふわふわのウエディングドレスにバラのブーケ…首には初デートで貰ったって言うミルキ...DollsGame-138.レインリリー-
安酉鵺
カーテン越しに日が差して、眩しさでぼんやりと目が覚める。まどろみの中ついつい二度寝を…。
「めーと、おっきろぉー!」
「おっきろー!」
「ぐぇぇっ!!」
「わわっ?!詩亜様!月寧ちゃん!鳴兎潰しちゃダメ!」
「りおんねぇた!めーと、ねぼうなの!」
「ねぼうなの!」
「と、とにかく降りて降りて!鳴兎も...DollsGame-137.パピルス-
安酉鵺
見事なまでに散りばめられたイルミネーションの中、観客は大いに沸き立っていた。スタッフすら祭りの様にはしゃいでる。
「お前等ー羽目外し過ぎるなよー?」
「社長!お疲れ様です!」
人混みの中展望台へと昇る、と、階段の所でプレイヤーとNPCの溜まりがあった。
「何してんだ?お前等、こんな所で。」
「入るに...DollsGame-136.浜梨-
安酉鵺
スコープはある一点を差していた。入口には警備スタッフの姿が見える。
「お、来た来た。久し振りだね。」
「白兎さん!」
「上で待ってる、行ってやって。」
「はい…。」
入口で止められていて展望台の中は人気が無かった。非常灯を頼りに階段を昇る。冷たい風がさあっと吹いて、月を覆った雲が流れた。青白い月明か...DollsGame-135.チューリップ-
安酉鵺
何だろう、この嫌な予感…と言うかどいつもこいつも全国配信で大変な事になってる様な…?俺大丈夫だろうか…。
「カカカカカ!最初の課題で痴漢行為を働いたにも関わらず何故か安定した人気を
誇るTHEチャラ男ことクラム様、メッセージが届いております。」
『見てるから頑張れー。』
『アハハハハ!全国配信で痴...DollsGame-134.バーベナ-
安酉鵺
マントを着たまま歩いていたせいか、人がすっごく遠巻き。歩き易いったらありゃしない!
「さてさて、グリフォンに化けると言う反則技を披露したシャルロット様、文句と
メッセージがガンガン届いております。」
『ガンガレヲタの星☆<( ̄^ ̄)』
『グリフォンびっくりしました!』
『貴様さては意外とやるな?!...DollsGame-133.ハナトラノオ-
安酉鵺
スコープはホテルの入口を示している。一体此処に何があるんだろうか?行ってみれば判るか。
「お次はラビット様にメッセージと質問です。ハイ現場のスタッフへチェーンジ。」
む?私にメッセージ?と、スタッフが私に小さなマイクを差し出した。まるでインタビューみたいだ。
「ラビット様に質問です!いっつもウサギの...DollsGame-132.木瓜-
安酉鵺
アナウンスが終わるのと、客の歓声と、ほぼ同時に施設の照明が落ちて辺りが闇に包まれた。一瞬のざわ付きの後、非常灯がポツポツと点ったと思うと。能天気なチャイム音が鳴った。
「カーカカカカカ!ご来場の皆様、そして視聴者様!これは事故ではありませんので
ご安心を!只今より【DollsGame】最終課題をス...DollsGame-131.一人静-
安酉鵺
流石にマントが熱く、重くなって来た。あの二人一体何時まで逃げるつもりなんだろう…?走り疲れてベンチで休んでいると、数人の子供がこちらを遠巻きに見つつ何やらコソコソ話してる。
「せーの…!それー!」
「飛んでけー!」
子供が持っていた風船を手放し空へ放った。蓄光塗料で絵が描かれた風船は暗闇にぼんやりと...DollsGame-130.シュロ-
安酉鵺
暗くなった施設内を歩いていると、ラビットとスナイパーを見付けた。
「チコリ!」
「二人共大丈夫だった?殴られたりしてない?」
「それは平気、ビニールシートとバスタオル降って来ただけだし。」
「今残ってるのはクラムとハレルヤとグリフォンか。」
三人で話しているとそこに何やら言い争う声が近付いて来た。
...DollsGame-129.蛇結茨-
安酉鵺
人に見られるのも、暑苦しい喧嘩も、何かに執着するのも、実はそんなに好きじゃない。かわそうと思えば幾らだってかわせるし、回避出来る物は出来るだけ回避したい。だけど…。
「お前が倒れるか、俺が膝を付いたら終了だ。」
「な…?!」
「お前は俺に勝てない。今迄も勝った事無いだろう?」
「…なめるな!」
心の...DollsGame-128.夕霧草-
安酉鵺
すっかり日が落ちて辺りは暗がりになって来た。ブレイクコールが何人も出て、今残っているのは数人…。一般客を掻き分けながら浬音を探していた。
「花壇…良かった、無事で…。」
「鳴…ウサギさん…。」
「あれ?ウサギ?何で?花壇って帽子屋じゃねぇの?」
「え?二股?」
まずいな…しかし客に説明するのも面倒だ...DollsGame-127.紅花-
安酉鵺
ブレイクのコールが響いた。辺りは大分暗くなって来た。皆とはぐれてしまったし何より疲れたな。体力勝負では敵わないだろうし、ゲルニカや皆も怪我をしたら大変だな。
「ゲルニカ、どうしようか?」
「ラビット!」
「わぁっ?!…クラム…それにハレルヤ?」
「丁度良かった、貴女にこのプレートを預けようと思ってた...DollsGame-126.グミ-
安酉鵺
もうもうもーう!走りっ放しで疲れた疲れた疲れた―――!!汗は掻くし髪だってグシャグシャだし、プレートは勝手に奪われてるし…!ナス君お間抜け過ぎ!期待してた昼ドラも見れないし…。
「もーう!」
「はいはい、イライラは良くないよ。」
「ジャックさんは花壇ちゃんに預けてるんでしょ?なら自分は安全圏じゃない...DollsGame-125.野萱草-
安酉鵺
『好きなんだろ?』
クラムにそう言われて正直驚いてた。他人に自分の気持ちを察される事等これまで無かった。どうも私は感情と言う物がよく解らない、本や映画を見て涙を流したり、悲惨な事件のニュースを見て怒ったりしている友人と見ても理解出来なかった。頭ではどう言う物か判るが感覚としてそれが何なのか思いも寄ら...DollsGame-124.ハシバミ-
安酉鵺
走り疲れて考え疲れてその上暑くてバテて来た。いっそシャルロットみたいにさっさと捕まるのもアリかも知れないな。またあの鳥に囲まれたり帽子屋に見付かったりしても面倒だし…。溜息を吐いて顔を上げると目の前を銀色の髪が歩いていた。一般客がさわさわと遠巻きに写メ撮ったりしてる。
「あれ?ハレルヤ?何してんだ?...DollsGame-123.カポック-
安酉鵺
放送にあたし達四人は固まっていた。冗談じゃないわ、帽子屋さん相手に戦うとか絶対無事じゃ済まなさそう。
「これ私達に不利過ぎじゃない?!花壇ちゃんとかどうなのよ?!」
「この際花壇と手を組めば安全ではないのか?」
「でもそれだと勝負にならないし…ゲームとして成立しなくなっちゃうんじゃない?」
「うーん...DollsGame-122.エレムルス-
安酉鵺
響き渡った『ブレイク』のコールに『リトルフラワー』ががっくりと肩を落とした。
「ええええええ?!あいつ何やってんのよぉ~~!!まだ死なせてないのに!!」
「シャルロットも?一体誰だ?帽子屋か?」
「私のプレート鳳仙花お姉様に取られてるし…訳判んない!」
興が削がれたな、ここで俺達が戦った所で得られる...DollsGame-121.アキノキリンソウ-
安酉鵺
課題開始から1時間以上、少し日が落ちて来たがこれと言った問題も無く、『ブレイク』のコールも無い。忙しなく動くスタッフと書類と確認に追われて課題の現状は把握出来なかった。
「トカゲさん。」
「あれ?一人か?『アリエッタ』あいつはどうした?」
「もう…皆が『アリエッタ』って呼ぶ様になっちゃったんですけど...DollsGame-120.ジギタリス-
安酉鵺
一般客に紛れてても全く気付かれない。流石にあのジャージは印象が強かったんだろうか。楽が出来て良いけどこれでは課題にならないな…。そろそろアリエッタと合流でもしようかと携帯を出した所へさわさわと人の声が聞こえた。
「うぉ!あれ動画の花壇じゃね?!」
「お!マジだ!ちっちゃ!」
「ちょっと待って待って、...DollsGame-119.ジャーマンダー-
安酉鵺
暫く鬼ごっこ状態だったけどバタフライと一緒にハレルヤと花壇の二人を追い詰めた。
「あれぇ?ナス君とクラムさんはぁ?」
「その内来るんじゃない?それより…。」
目が合うとハレルヤは背中に花壇を庇って私とバタフライを交互に見遣っていた。見た感じでもこの二人は戦った事なんて無さそうだし、楽勝所かただのイジ...DollsGame-118.花韮-
安酉鵺
優花と適当なターゲットを探していた所でバタフライの声が聞こえて来てみたが…。ハレルヤと花壇か…確かにそんなに強く無さそうな上に帽子屋とウサギのプレートはデカいな。
「んっふっふー私知ってますよー?花壇さんがプレートいっぱい持ってるって事~。」
「まぁ、目の前で渡してたしねぇ。」
「ターゲット決定ー!...DollsGame-117.李-
安酉鵺
元々非常識なゲームだと思ってはいたが、戦って奪い合うだと?全く何を考えているんだ、冗談じゃない。これではプレートを大量に持っている浬音さんが格好の的にされてしまう!毎度毎度まとわり付いてる三月ウサギはこんな時に限って姿が見えないし…。
「ハレルヤさん!痛…待って下さい!痛いです!」
「失礼…。」
「...DollsGame-116.林檎-
安酉鵺
嫌味な程に良い天気!と言うかぶっちゃけ炎天下?うーん、まぁ夏だから良いか。
「バタフライさん!写真撮って良いですか?!」
「はいはーい♪」
「あ、私達もお願いします~!」
えへへへへへ~ちょっと芸能人みたいな気分♪それにしても、プレート何に使うんだろう?宝物って言うからにはどこかに隠したりとかするの...DollsGame-115.ルリジサ-
安酉鵺
一般客を避ける様に私達は最上階に呼ばれた。スペシャルスイートらしく広々として静かだった。部屋に入るとプレイヤー以外にNPCの人達も集められていた。
「全員揃ったみたいだね。」
「社長、今回の課題私達も内容聞いてないんですけど。」
「それを今から説明する所。はい、じゃあ皆さんに先ずこのプレートを持って...DollsGame-114.山桑-
安酉鵺
『次の課題は招待客でこの施設いっぱいにするから。』
その言葉通り、翌日の朝からわらわらと人が港に着いた。スタッフに聞いた話では、動画の視聴者の中から抽選で選ばれたらしい…つまり…。
「すっげ~!あのホテルまんまじゃん!」
「きゃ~!見て~!あの塔動画と一緒だ!ほらほら、クラムが登った奴!」
「あ!ね...DollsGame-113.パセリ-
安酉鵺
昼過ぎにあたし達プレイヤーはラウンジに呼ばれた。途中で会ったハレルさんと一緒にラウンジへ降りると浬音ちゃんが居た。相変わらずの護衛付きにハレルさんが少し眉をひそめる。
「お帰りなさい、浬音さん。」
「お帰り~。」
「ただいま…で良いんですかね?」
「あはは、それもそうね。でも良いんじゃない?」
「じ...DollsGame-112.黄花コスモス-
安酉鵺
凪いだ海と、抜ける様な青空、デッキの手すりにもたれ掛かると風が髪をサアッと舞い上げた。
「下向いてると誰かさんみたいに船酔いするぞ?」
「大丈夫ですよ、私船には強いみたいです。」
「そっか…。」
トカゲさん…ううん、啓輔さんは、そう言うと、静かに、そして少し悲しそうな目で私を見た。
「鳴兎から…聞き...DollsGame-111.モナルダ-
安酉鵺
漫画に時々あるシチュエーション。兄弟が家に彼女を連れて来ると家中が大騒ぎに囃し立てる。あれって冗談だと思いますよね?だけどウチって冗談みたいな家だったりするんですよ。
「…鳴兎の実家って大きい…。」
「密さん家の方が大きいよ、ウチと惑音家は代々執事でね。親父は引退してるけど
兄さんも執事で、弟は養...DollsGame-110.ミセバヤ-
安酉鵺
久し振りだからだろうか、ずっと育って来た筈の家なのにまるで赤の他人の家に入るみたいだった。
「浬音ちゃん、貴女の部屋、見せて貰っても良いかしら?見るのは私だけよ。」
「あ、はい…。」
居間にいる3人とは玄関で挨拶したきり顔も見ていない。それでもどこかに小さな期待を残していた。2階の自分の部屋のドアを...DollsGame-109.鷺草-
安酉鵺
「密さん、大丈夫ですか?」
「多分…うぉぇっ…。」
「ほんっとお前船弱いな、車内で吐くなよ?」
「ヤなら来なきゃ良いのに…。」
「そう言う訳にも行くか、バカウサ…うぶっ…!」
真っ青になっている密には悪いが二人の存在は正直ありがたいと思った。酷いとは言え16年も一緒に居た家族を摘発するかも知れない、...DollsGame-108.彼岸桜-
安酉鵺
朝食前の早い時間、まどろみの中、携帯で起こされて呼び出された。指定された部屋に行くと香玖夜さんが待っていた。この前とは違って、数人の恐そうなスーツ姿の人も居る。
「ごめんなさいね、浬音ちゃん。朝から呼び出したりして。」
「いえ…。」
「…では、私は失礼します。」
「待ちなさい、鳴兎。」
「はっ…!」...DollsGame-107.縷紅草-
安酉鵺
人生が順風満帆に行く物だとは思ってない、かと言って波乱万丈な展開も望まない。普通に平凡にそこそこ平和に暮らして行ければ理想的だと思ってた。
「髪は短いままなんですね、クリスさん。」
「イベント後仕様って事で。」
パーティーホールから賑やかな声が聞こえて来る。テラスは昼間の暑さを忘れた様に時折抜ける乾...DollsGame-106.ポピー-
安酉鵺
ドアを開けて、目に飛び込んだ光景を見て、脚が無意識に密を蹴り飛ばしていた。礼儀?常識?知るか!そんな物!それから目の前の状況を飲み込んで頭の中で整理するのが精一杯だった。悔しさと怒りと驚きと愛しさと、感情がいっぺんに噴き出して頭がパンク寸前だった。だから考える前に蹴ったんだろうけど。
「…何してんだ...DollsGame-105.クリムゾンローズ-
安酉鵺
正直自分が酔ってる自覚はあった。少し熱いのと頭が良く働いてないであろう事は鏡を見ずとも判る。目の前の浬音は俯いたまま言葉を詰まらせていた。浬音は浬音で、鳴兎は鳴兎でしらばっくれていたがこの一週間だけでも二人が近付いてるのは雰囲気で丸判りだった。出会った頃に比べれば見違える程元気に、そして綺麗になった...
DollsGame-104.スカビオサ-
安酉鵺
パーティーは随分遅くまで続いてて、半分位の人は酔っていた。未成年だしお酒は飲んだ事が無いので料理を突きながらひたすらソフトドリンクだったけど、色んな人と話してみて楽しかった。少し疲れて壁際の椅子で休んでいるとメールが来た。
『少し抜け出せる?衣装部屋で待ってる。 鳴兎』
衣装部屋?頭に『???』がい...DollsGame-103.花海棠-
安酉鵺
パーティーホールは綺麗に飾り付けられて、プレイヤーだけじゃなくてスタッフも集まって凄く賑やかになっていた。プレイヤーが入って来ると煩い位のアナウンスが響いた。
「カカカカカカ!さーて、一週間お待たせ致しました!待ってない奴は10秒で一週間分
待て!そんじゃ!課題『愛される人形を作り上げろ』の投票開...DollsGame-102.アイリス-
安酉鵺
一週間があっという間に過ぎてとうとう課題当日になった。それぞれ別室でドレスに着替えて、今はメイクやアクセサリを整えている。
「ラビット様?どうしました?」
「や…やっぱり私…こんな可愛いの似合わなくないか?!」
「またそう言う後ろ向きな事を…。」
「わ、私は魔女って呼ばれてたんだぞ?!魔女がこんな可...DollsGame-101.山茶花-
安酉鵺
最上階、スペシャルスイート。広々とした部屋に、テラスからは海が見える。
「最高の贅沢だよな。」
「まぁ、スイートだしな。」
「一泊って幾らだっけ?」
「50万。」
「うっひゃあ…。」
―――コンコンコン。
「入れ。」
「連れて来たよ~。」
「いらっしゃい。」...DollsGame-100.風船唐綿-
安酉鵺