変わりゆくもの
　目の前の敵兵が傾いで視界が開ける。手近の一群をかろうじて斬り捨てたトニオは、がっくりと膝を付いて項垂れた。息は上がり、鼓動が耳を打つ。双剣の一本は半ばで折れ、もう一本には亀裂が走っていた。
　ここまでか……と自身の限界を悟り、重い頭を持ち上げる。周囲は血の海だ。王宮兵士と革命軍兵士、そして赤い鎧の兵士が倒れている。未だ庭園のどこかで戦いの音が聞こえるが、決着が付くのも時間の問題だろう。

　王子の守護者
「来たか……」
　反乱軍の先鋒が到達するまで間も無く。見張りからの報告を受け、アルは武器を握る手に力を込める。斧と槍が複合された長柄武器が僅かに揺れ動き、石突きが地面を撫でた。

救う者　救われた者
後は自分達に任せて欲しい。二人からそう言われて、レンは後ろ髪を引かれる思いをしながら、その意見を聞き入れる事にした。
　本音を言うなら、救助隊に加わってリンを捜したい。しかし、先程トニオが指摘した通り、もうそんな事をする体力は残されていない。行った所で周りに迷惑をかけるだけだ。

　変わるもの、変わらないもの
　リンがリンベルとして王宮に仕えるようになり三ヶ月。
　先輩のリリィから指導を受けつつ、リンは王子直属のメイドとして働いていた。最初の頃は激変した王宮に戸惑ったものの、玉座の間や王子の私室までは派手になってはおらず、おそらく上層部の貴族がやったのだろうと判断が出来、レンの趣味ではないのに安心した。

～五番目～
　ピンクの髪の女はスッと目をひらいた。彼女の目の前には小さな女の子と髪の黄色い女の人が立っています。
「……今までのアリスっていうのを見せてもらったけど、どの人もあれね、急に我を失っているわ。」

　断ち切りし因縁
「何事ですかな。王子殿下」
　白々しい挨拶を述べるスティーブに舌打ちを堪え、レンは玉座から宰相を見やる。慇懃無礼の態度が酷く癪に障るのは、故意に火災を発生させておきながら王宮で安穏な生活を貪っていた事実を知ったからか。

　命の重さ
　騎乗したレンは王都の中心部を駆け抜け、貧民街に一番近い地区を突き進んでいた。風を切りつつ街を見てみると、どうやらここまでには火の手が回っていないらしい。その事に安堵を覚えたが、レンは不安と恐怖を抱えたままイノベータを走らせる。
「何で……。何で！」

　内なる敵
　騎士団が出立した黄の国の王宮。剣の稽古帰りにリリィを見かけ、レンは通りがけに尋ねた。
昨日からリンベルの姿が見えないが、何か聞いたりしていないか。

　各々の悩み
「ふあ……」
　黄の国王宮。日の光がさんさんと降り注ぐ中庭で、リリィは口を押さえて大きく欠伸をする。庭園を抜けるそよ風が、腰近くまで伸びた金髪を揺らした。

　変化の一石
　ドアを激しく叩く音。声がかき消されそうな中、レンは顔を上げて少女に簡潔に伝えた。
「ごめん。多分騒がしくなる。君は傷つく事を言われるかもしれない」

　偽りの忠誠
　黄の国騎士団が青の国へ出立して一カ月。
　落ちぶれたとはいえ、一級品の装備に身を包んだ多勢の騎士団は瞬く間に海向こうの国を侵攻した。第三王子カイトが暗殺された事件によって混乱する青の国は勃発した戦争への対応が遅れ、各地を占領される事になった。

　外の世界から守られた鉄壁の箱庭、天高くそびえたつ鉄塔、
風はなく人工の空が輝く。
何百年も続いた戦争により、太陽は遮られ、森は燃え、

●アース祭りのドナドナ号
「ぴよぴよぴよ、ぴーよぴよ」
野外ステージの上では、人気者のタレントで“学者”の、「ことりクン」が、さわがしく話している。

「リンダ、リンダ～」
ギターを抱えた、リンちゃんが、マイクに向かってシャウトする。
横にいる、リードギターのサナギちゃんが、弦を弾いてのけぞる。

「え、ミクドールって、私、よく見たことなかったけど」
モモちゃんは、そう言って、店のチラシを、机の上でトントンとそろえた。
「そんなに、ここに展示してる、“アマガエルのフォギー”に似てるの？」

A
私は馬鹿だよ　みんなは雑草だよ
泳いだって酸素はくれない

「このオモチャ、面白いですねえ！」
レンくんは、売り場の汽車の玩具を手にとって、ながめる。
「ドイツ製ですよ。ペン立てになってるんです」