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鏡の悪魔Ⅲ 20

                -炎上-
 リングノートを閉じた。
 日は既に暮れかけ、電気をつけていない部屋の中はキレイな茜色の太陽と同じ色に染まっていた。
 気分もだいぶよくなってきて、部屋の中を動き回るくらいなら造作も無いことになり、その辺をとことこ歩き回っては何か無いかと探しているのだが、何も見つかる気配はない。
 日記があったということは、ここは母の寝室だとおもってレンは行動しているのだが、それらしいものは無い。それどころか、日記を書いた机や筆記用具すらも見当たらない。
 不信感は募っていくばかりだ。
 そのとき、ドアが開いたかと思うと、向こうから今一番見たくない相手の顔が―――。

「ゆ、夢か…っ」
 一瞬、命拾いした、と思ったレンは既にレオンのことを変態としか認識していないのだろう、明らかに怯えた表情でいた。どうやら、いつの間にか眠ってしまったらしい。手にはリングノートが開きっぱなしの状態で置かれ、窓からは月明かりが差し込んでいる。そしてレンの体には毛布がかけられていて、誰かがこの部屋に入ってきたことがわかる。カイトだろうか。まさかレオンではあるまい。
 ノートの中身は確かに日記だった。それを見ている間に眠ってしまったのだろう。
 ふと、窓から明るい光がちょろりと顔を出して消えた。気になって窓から身を乗り出して下を見てみると、館の下の辺りが赤々と燃えているのだ。そして、その近くには怪しく笑うレオンの姿があった。
 
 そろそろ寝ようかとメイコが文庫本を本棚に戻し、赤いメガネをケースに入れようとしたときだった。チャイムの可愛らしい音が鳴って、誰かが尋ねてきたのだ。
 急いでメガネをしまって来客を確認した。すると、来客はなんとミリアムであった。
 そのミリアムは何故か随分と焦っているようで、落ち着きが無いばかりかこのまま放置しておいたらこの家を壊そうとするのではないかというほどに、呼吸が荒い。パジャマに軽くカーディガンを羽織って玄関を開けると、ミリアムはすがるようにメイコに飛びついてきて、焦りのままに言葉を発した。
「た、大変なんです。どうにかしてください!レオンがいなくなって…」
「ちょっとまって。ルカを起こすわ。――ルカ、ルカ!!」
 しばらくして少し眠そうなルカが階段から転げ落ちそうになりながら降りてきて、眠気眼をこすりならミリアムがいることに気がついた。驚いて眠気も一気に覚めたらしく、どうしたのかとしきりに聞いてくる。
「レオンが、少し目を話した隙にいなくなってしまったんです。それで、どこに行ったのか、大体はわかるのですが…。きっと、あの少年の家だと思うんです。でも私はそれがどこか知らないので…」
 少し待たされて気が落ち着いたミリアムは口調もしっかりとしていて、荒くなっていた息も整っていた。
 それをきいたルカは息をのんで焦りからか少し汗をかいているように見えた。
「ルカ、彼女をカイトたちの家へ案内して。私はリンについているわ。――嫌な予感がするの」
 予感が、ただの思い違いならいいのだけれど…メイコはそう思いながら、口には出さなかった。まるで、その予想は当たっているという確信があるような、そんな気がしたからだ。

 赤々と燃え盛る炎は次第に燃え広がっていくのだから、それをとめるしかない。
 その前に、カイトとランを起こして避難を――。
 部屋を飛び出して片っ端から部屋の扉を開いていく。内の一つにランが眠っていて、事情を話して起こすと、カイトの寝ている部屋を探すことになった。寝ていたランはカイトが寝ている部屋の場所を知らないというが、大体の見当はつくというので、その辺りを重点的に探した。しかし、見つかる気配は無い。こうしている間にも火の手は迫っているのだろう。
「いいか、今から外へ出ろ。もしかしたらカイト兄が避難しているかもしれない」
「レンは?」
「いいから行け。―――早く。レオンのヤツがいるかもしれないが、関わるな。いいな?」
「う、うんっ」
 少しレンを心配しながらもランは言われたとおりに玄関まで走り、そのまま外へと飛び出すように出た。その瞬間といえるだろうか、館は炎に包まれていった。

 二人はしばらくしてレンたちの家に着いた。ミリアムの予想通り、館はいつもとは明らかに違い、強く燃える炎に包み込まれていた。それを見たルカは、ミリアムに指示を出した。
「ミリアムはレオンを探して。どうにか炎を鎮めるように説得するのよ。私は中に人がいないか確認するわ」
「わかった。ルカ、気をつけてね!」
 そう言ってルカの前を去り、館の裏手へ走るミリアムを見送ると、自分も走り出そうとして、館の手前で炎を見上げるランの姿が目に止まった。近寄って声をかけると、中にレンがいるという。その言葉を聞き終わる前にルカは館の中へと飛び込んで行った。

 どの部屋にもカイトはいない。ほぼ全ての部屋は確認した。後はトイレとキッチンと地下室だけだが、どれもこの時間に行くとは思えない。ましてやトイレなんか子供じゃあるまいし、と思う。
 じゃあ、どこにいるというんだ?この館の中にいないというのだろうか、ならばどこにいるのだろうか。出てくるならランにいって出て行きそうなものだが。
 一応、と思ってキッチンと地下室も一通り見て回ったがカイトどころかねずみの一匹すらも見当たらず、残すはトイレだけだ。トイレの鍵は開いていて、中はもぬけの殻だった。
 どこかで入れ違いになったのだろうか、いや、階段は一つだけだから入れ違いになることはないはず――。そう思って、一応館をもう一周してみたが、誰もいなかった。炎が広がり始め、煙が酷く視界も狭まってきて、人探しをする環境ではない。
 と、そこにルカが駆けつけ、レンに外に出るよう催促をする。
「レン、外に避難したほうがいいですわ。危なすぎますッ」
「けど…カイト兄がまだ見つからない…。どの部屋を見てもいないんだ…ッ」
「ならば、どこかに出かけているとか、既に避難しているのでしょう。レン、早くしなさい!!」
 問答無用でレンの手を引っつかむと、そのまま外まで引っ張っていってしまった。
「ちょ…何すんだよ!まだカイト兄が…ッ」
「貴方はまだ体調も万全ではないのでしょう!後は私に任せなさい」
 そう言って外にレンを放り出し、また館の中へ戻ろうとして――。その瞬間、ルカを拒むように館の柱の一本が炎を帯びて倒れ、玄関をふさいでしまった。
 少し後ずさってからルカは呪文を唱え始め、炎を消そうと水属性系魔法を使おうとしているらしい。しかし、周りに水がないからか、水魔法を使うのは少し苦しそうだ。
「――何をしているの?」
 後ろから飛んできた声は、のほほんとして和やかな、不思議な声だった。その声に振り返ると、そこにいたのは青い髪と青い瞳の青年、その手には薬局の袋とパンやら果物やら野菜やらが入った茶色い紙袋が、沢山積み上げられるようだった。
「か…カイト兄…」
 そういってなきそうなランと、呆然としているルカ、それに脱力してその場に座り込んでしまったレンの三人がカイトを見ていた。
「あれ、何で家、やけてんの?まあいいや。ちょっと待ってね、すぐ消すから」
 そういうと紙袋をルカに持たせ、呪文を唱えて水を出すのかと思えば、そうではなく炎が段々小さくなっていき、そのうちに燃え始めた部分からすっと消えた。これが無属性系魔法、物体の周辺だけの時間を巻き戻す魔法だ。
「よかった!カイト兄が外に出てて!!」
「言っていけばすぐだったのに、何で何も言わずにでていく?あー焦ったぁ」
 そう言ってカイトを睨みつけてレンは目をそらした。
 けれど、カイトは少し申し訳なさそうにいった。
「皆、喜んでいるところ悪いんだけど、ちょっと聞いてくれる?今、病院に行ってきたんだ。レンが眠っている間に診察してもらってね、その結果を聞いてきたところだったんだ」
「…それで?どれくらいでリンのところに帰っていいって?」
 日記に書かれていたことは見なかったことにして、レンはカイトの言葉を催促するようにいった。
「それが…。既に五年前に移植手術がしてあって、殆ど再発することは無いらしいんだけど、稀に再発することがあって、レンは再発してしまったらしくてね。それで――このままだと、長くは持たないって。また、移植をしなければ、一年も持たないって」
「うそ…だろ?」
 その場にいた全員の視線がレンに向けられていた。

こんばんは!
今回で投稿八十回目です。
今日の要約です!!
「メイコは赤眼鏡」
でしょう!!
眼鏡はロマンですよね。
ちなみに次回作ではカイトが黒縁眼鏡をかけていたらいいかな?とか、かんがえてます。
あ、どうでもよかったですね。
あーと…。なんか話すこと無いですかね…。
あ!!今日、今日ね、部活で木の板みたいなのを倒そうとして、木のトゲが指にグサッ★
あかーくラインが。多分血。
こんな話しかない…。ダメじゃん自分!!
それでは、また明日っ!!

投稿日時 : 2009/08/25 23:03    投稿者 :リオン

ヘルプブクマでつながった作品とは?

鏡の悪魔Ⅲ 23

                 -過去-
 その声の震えは次第に大きくなり、最後には泣き出してしまうのではないかと思わせるほどになって行った。けれど、ルカは話すのをやめようとはしなかった。
「次の日、私の靴箱に彼からの手紙が入っていました。答えは、ふられました。でも、その文面からは、彼の誠意が垣間見られたような気がしました。便箋は何度も消した跡がありました。いつもは汚い字も、綺麗でした。言葉も選んで居てくれたようでした。綺麗に返そうと思ったのだと、私は解釈したのです。それから、私は少し落胆して教室へと向かいました。今すぐにでも大声を出してないてしまいたい気持ちでしたよ。けれど、スラスの空気は異様でした。私を見た瞬間に女子たちの目つきが変わったのです。放課後、私は大勢に女子に呼び出しを受けました。内容は、私が彼に告白した件についてでした。何故知っているのかと聞いてみると、女子のリーダー格だった一人が言いました。あの手紙を書いたのは私よ、と。彼は、私からの告白を受けた後、彼女にその話しをしたのだそうです。どう断ればいいのか、と。自分が何度も書き直した手紙を渡して、どうしたらいいのか相談していたそうです。そうして彼女はキレイな字で私への手紙を書きました。彼を装って。彼と彼女は付き合っていたようでした。それを知らないで、私は大変な間違いをしてしまったと思いました。女子たちからは無視されるようになりました。男子と話そうとすると、放課後呼び出されました。先生に話しても、保護者とのトラブルを避けようとしてカ、聞く耳を持とうとはしてくれませんでした。話を聞いてくれる人なんて、どこにもいませんでした。私はいつしか、人との係わり合いを避けるようになりました。それは進学しても同じでした。ずっと、ずっと一人ぼっちのような、深い孤独が、酷く怖かった」
 そこで、レンはドアからはなれ、もう一度ベッドの上に座ってリングノートを手に持った。それ以上はルカの震えた声を聞いてはいられなかった。声を振るわせるルカは、今にも泣き出してしまいそうなのだろうと考えると、レンにはそれを背中合わせに聞くことはできなかったのだ。
ベッドの上で開くリングノートに書かれた言葉と、ルカの少し低いキレイな声が、レンの脳内で交差した。

リオンさん

リオンさん

2009/08/28 23:55

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