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鏡の悪魔Ⅱ 5

              -ESCAPE-
 二人が目覚めた部屋は最初にリンが通された部屋を同じような造りになっていた。所々違うが、その辺はいちいち上げていられない。まあ、一つくらいはあげておこうか、窓の横辺りにこげ茶の木目が美しい、大きな本棚が置かれていた。
 二人――リンとランはまず、部屋の中を見てみることにして本棚の本の一冊一冊に軽く目を通す。途中の二冊が気になった。片方は物語、片方はよく分からないが言い伝えでも書いてあるのだろうか。
 二人でその本を開いた。
 まずは物語のほう。物語の題名は、鏡の悪魔。

 昔あるところに、小さな少女が居ました。
 少女はある日、小さな使い魔を召喚しました。
 その使い魔はまるで鏡に映したように少女に似た容姿をしていて、かわいらしい少年の悪魔でした。
 二人はそれはそれは仲のよい姉弟(きょうだい)のようでした。
 けれどそんなある日、人間を喰らうという魔王が村中の娘を、少女を連れ去ってしまいました。
 使い魔の少年は少女を助けに、魔王の城へ乗り込みました。
 下っ端の兵士たちなど敵ではありませんでした。
魔王の魔へと辿り着いた少年は少女と再会を果たします。しかし、魔王はそう簡単に二人を村へと帰してはくれそうにありません。少年は魔王と戦うことにしました。
そこらへんの魔物たちとは比べ物にならないほど、魔王は強く、少年は苦戦を強いられました。
少年が危うく負けそうになったとき、少女が少年に駆け寄り、手をとりました。二人の手と手の間がふんわりと暖かくなり、その辺りにやわらかい光の玉が現れました。
するとどうでしょう。少年の傷が治り、見る間に力がわいてきます。
その力は魔王を倒すのに十分なだけあり、少年は魔王を倒しました。
二人はずっとともに、幸せに暮らしたそうです。ああ、それと、光の玉は神様の使いにだけ与えられた力がものになって現れた姿だそうです。
今でも、真に心が通った主と使い魔にはこのような奇跡が起こるといわれています。

そういう話だった。
本当にただの御伽(おとぎ)噺(ばなし)といった感じの本で、文字と同じかそれよりも多いくらいの挿絵が入っているので、絵本なのかもしれない。
次はなんだか分からない本。これはアニメや漫画でよくある魔方陣が描かれた分厚い、あんな感じの本を思い浮かべてくれればほぼ間違いはないだろう。
その本を開くと中は魔法書、つまり魔法の使い方や魔方陣が書かれた本だったらしく、なんだか難しそうなことばかりが書かれていた。殆どは分からなかったが、収穫はあった。その中の一つに誰かを操る魔法、というのがあったのだ。その魔法を受けている相手に出る紋章というのが、カイトの手の甲にあったあの紋章とまったく同じだったのだ。
 これでだんだんとこの館に住むメグという少女の意図が見えてきたような、見えてこないような、そんな状態になった。
 ドアノブをまわしたが、開く気配はなくがちゃがちゃと音だけが空しく響いた。
「リンさん、魔法でドアをぶっ壊します。出たら私は皆さんに知らせにいきますから、リンさんはレンを探してください。いいですね?」
「うん」
 ちゃんと相手に同意を求めてから、頷くと呪文を唱え始めた。
 呪文を唱えているうち、ドアに赤い魔方陣が浮かび上がり、ランが最後に大きな声で最後の文字を言い終わったとき、魔方陣がドアもろとも破壊された。
「…すごい」
「リンさん、感心していないで!私も急ぎますから、リンさんもできるだけ早くレンを!」
「分かったわ。ラン、気をつけてね!」
 お互いの無事を祈りながら、二人は別々の方向へ足を向けた。

 どこまでも続く廊下、長い真っ赤なカーペット、きれいに光るシャンデリアもすべて今は、胡散臭く見えてくる。そんな長い廊下を走っているのは、リンのほうだった。ランは既に館を出ただろうか。
 まったく、この家の主は何を考えているのか。先ほどのメグの言っていたことからして、この家の主はメグ以外のものだろうことはわかっていたが、その主との関係、メグの言っていた計画の内容、それからこの屋敷の構造も殆ど何も分かっていないことに近い。
「―――…あっ…あれは…」
 走っていた足を止め、リンは角になった壁に背中をぴったりと付けて四角になるように陰に隠れ、こっそりと顔を出した。その視線の先にはメグが扉を開くところで、後姿でよく分からないが腕に抱かれているものはやわらかそうなぬいぐるみだろうか。
 そうこう考えている間に、メグは扉を開いて中へと入っていってしまった。追いかけたほうがいいのだろうか、少々考えた。彼女らは後にして、レンを探すのが先決だろうか、しかしメグはきっとこの館の主と会っているのに違いない。ならばその主に問い詰めたほうが早いかもしれない。――この間約十二分。
 覚悟を決め、リンは飛び出した。
 半開きの扉を押し開け、中へと入っていった。
 中ではメグが扉に背を向け、ソファに座ったままの青年に何かを話しているところらしく、先にリンに気がついたのは扉に近いメグではなく、扉のほうを向いていた青年のほうだった。
 切れ長の目を開き、リンを睨みつけた。しかし、リンの注意は青年のひざの上に行っていた。
「…レン!!」
 青年のひざの上で横たわっていたのは、確かに変化をした子狐のレンであったが、そのレンには炎が灯っておらず、ぐったりと苦しそうな顔をしていた。
「…何者だ、貴様…」
「えっ?貴方、なんで…。確かに閉じ込めたはず…もう一人は?」
 三人ともまったくといっていいほど会話が噛み合っていない。
「私は、鏡音リン!そこにいる、レンの主人。貴方たちこそ、何?何が目的?」
「…主人?」
「お兄ちゃん、あの子、さっきいってた子。それと一緒に来たこ」
 やっとリンが何なのかを理解したらしく、青年はにやりと笑ってその計画を話し出した。
「…いいだろう、話してやる。…まず、純血の悪魔には他にないエネルギーがある。その力は天使や死神よりも強い、エネルギーだ。魔界ではそのエネルギーを生まれてすぐに測り、力によってランクをつけている。この少年はそのエネルギーが最高ランクに位置していた。しかしその力は本人だけでは引き出すことが出来ない。私はその力を引き出してやるだけの技術と設備がある」
「…何のために?」
「私が世界を統一するためだ。魔界とお前たちの居る、『裏世界』とその裏にあるという『現実世界』。それらをすべて我が手中へ収めるため。――お前、これの主といったな」
「ええ、そうよ。だからこそ、レンを返してもらうんだもの」
「…ならば、お前の大切な使い魔の手で葬ってやろう」
 横たわるレンの上に手をかざすと、青年が怪しげな呪文を唱え始めた。その呪文はあの、魔法書に書かれていた呪文で、青年の手に黒に近い紫色の光が集まったか思うと、レンの背中に怪しげな魔方陣が現れ、それは次第に見覚えのある黒いあざへと形を変えた。
「…ダイスキな使い魔に殺されるのなら、本望というものだ。――そうだろう?」
「え…」
 青年の不敵な笑みにリンは悪寒がして、一歩だけ後ずさりをした。
 かざしていた手を青年がどけた途端、レンが目を開いてリンと青年を交互に見つめていた。しかしその尾や耳、足に炎が灯ることはなかった。そうして青年のひざから身軽に飛び降りると、いつものレンの姿に戻ってリンの元へとゆっくり歩いてきた。
 しかしその瞳には光がなく、キレイなエメラルドグリーンだった瞳が今は暗い緑で、その表情はまさに無表情、感情があるようには見えなかった。
「レ…ン?」
 そうレンに呼びかけるが、リンの呼びかけに応えずにレンは一歩一歩、リンに近づいていた。

こんばんは!
前回の投稿で『鏡の悪魔』シリーズが初回から十五回目の投稿でした。
え、何報告してるんだって…。キリがいいから…。あ、世間的には十五はキリがよくない?そうですか…。残念、ハイ。
まあ、それはおいといて…。
もうすぐ終わりですよ。その次は、この次こそはルカを主人公に!!
何か書いて欲しい小説があれば、大まかなストーリーとキャラ設定を教えていただければ、書きますんで!!どぞ!!

投稿日時 : 2009/07/18 22:32    投稿者 :リオン

ヘルプブクマでつながった作品とは?

鏡の悪魔Ⅲ 23

                 -過去-
 その声の震えは次第に大きくなり、最後には泣き出してしまうのではないかと思わせるほどになって行った。けれど、ルカは話すのをやめようとはしなかった。
「次の日、私の靴箱に彼からの手紙が入っていました。答えは、ふられました。でも、その文面からは、彼の誠意が垣間見られたような気がしました。便箋は何度も消した跡がありました。いつもは汚い字も、綺麗でした。言葉も選んで居てくれたようでした。綺麗に返そうと思ったのだと、私は解釈したのです。それから、私は少し落胆して教室へと向かいました。今すぐにでも大声を出してないてしまいたい気持ちでしたよ。けれど、スラスの空気は異様でした。私を見た瞬間に女子たちの目つきが変わったのです。放課後、私は大勢に女子に呼び出しを受けました。内容は、私が彼に告白した件についてでした。何故知っているのかと聞いてみると、女子のリーダー格だった一人が言いました。あの手紙を書いたのは私よ、と。彼は、私からの告白を受けた後、彼女にその話しをしたのだそうです。どう断ればいいのか、と。自分が何度も書き直した手紙を渡して、どうしたらいいのか相談していたそうです。そうして彼女はキレイな字で私への手紙を書きました。彼を装って。彼と彼女は付き合っていたようでした。それを知らないで、私は大変な間違いをしてしまったと思いました。女子たちからは無視されるようになりました。男子と話そうとすると、放課後呼び出されました。先生に話しても、保護者とのトラブルを避けようとしてカ、聞く耳を持とうとはしてくれませんでした。話を聞いてくれる人なんて、どこにもいませんでした。私はいつしか、人との係わり合いを避けるようになりました。それは進学しても同じでした。ずっと、ずっと一人ぼっちのような、深い孤独が、酷く怖かった」
 そこで、レンはドアからはなれ、もう一度ベッドの上に座ってリングノートを手に持った。それ以上はルカの震えた声を聞いてはいられなかった。声を振るわせるルカは、今にも泣き出してしまいそうなのだろうと考えると、レンにはそれを背中合わせに聞くことはできなかったのだ。
ベッドの上で開くリングノートに書かれた言葉と、ルカの少し低いキレイな声が、レンの脳内で交差した。

リオンさん

リオンさん

2009/08/28 23:55

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