鏡の悪魔Ⅳ 1 > ブクマでつながった作品

鏡の悪魔Ⅳ 1

              鏡の悪魔Ⅳ
             -紅いもの同士-
「ちょっと疲れた…。少しゆっくり帰っても大丈夫よね」
 そう独り言をいい、メイコは公園のベンチに座って買い物帰りのエコバッグから『鮭とば』と缶ビールを取り出し、まっていましたと言うように嬉しそうに鮭とばの袋を開き、缶ビールを開けた。「プシュッ」気持ちのいい音が鳴って、少しの泡が溢れるようだった。
 冷えたビールがしゅわしゅわと弾けながら喉を通っていく感覚は、何度味わっても他に変えられない気持ちよさだ。
 ふと、公園の入り口のほうで小さな何かが動いているのが見えた。どうやら少年らしい。
 その少年に向けて、メイコが声をかけた。
「おーい、どうしたの、君!」
 少年はこちらに気がつき、少しおろおろしながらどうしたらいいのかわからないというように、道の向こうとメイコの方を交互に見ていた。
「兎に角、こっち来なさいよ。…ほら、こっち、こっち」
 手招きをすると、少年は少しずつこちらへと歩いてきて、ベンチに座ると、一気に大きなため息をついた。
 そのため息のつき方は少年というよりか疲れた大人という風にみえてしまい、メイコは少し悪いかな、と思ってしまう。
「君、家は?」
「…鮭とば、もらうから」
「え?あ、ええ…。て、そうじゃなくて。…もしかして、一人でこの辺に来たの?」
「…まあ、そうだけど」
 随分口の悪い子供だと思いながらメイコは少年を見ていたが、その風貌にはどことなく見覚えがあった。黒いタンクトップのような少し短めの服の上にきる赤い上着と、ほぼ同色の長めのズボン。それと男にしては少し長めの髪を止める三本の細いヘアピン。
 茶色の長い前髪に隠れてしまいそうな赤茶の瞳は大きく、それを隠すようにするシャープな目はまつげが長い。その割女性っぽさが見られないのは、鍛えられたか身体の所為だろうか。
「うちに来る?」
 ぽつりとメイコが言ったのを、少年は聞き逃さなかった。いきなり大きな身振りで首を横に振ると、
「いい、いいっ!」
「…ねえ、君、メイトの弟かにか?」
「えっ…弟って言うか…。本人」
「…兎に角、ウチにきなさい」
「…すまん」

「――で、あの男の子は誰なんです?」
 ソファでうつらうつらしているメイトを見て、キッチンで洗い物をしながらルカがメイコにそっと聞く。
 リンとレンは既に部屋に戻って、二人でゲームをしている。そのうち、勝手に寝るだろう。
「それが…メイトって言うのが幼馴染なんだけど…。『あれ』がそのメイトらしくて。同い年のはずなんだけど」
「何かの病気ですか?」
「そんなはずはないんだけど…。どうしちゃったのかしら?」
「そんなこと、私に聞かれても困りますよ、主」
「そうよね」
 そういいながら、メイコは洗物に専念しようと下を向いた。すると、またルカがメイコに囁く。
「あの、寝ちゃいましたけど」
「誰が?」
「あの少年です。ほら、ソファで眠ってしまいましたよ?」
「あら、ルカ、客人用のの部屋があいてたわよね?あのベッドに寝かせてきてあげて」
「わかりました」
 いうと、ルカはメイトを軽々と抱え上げ、スタスタとリビングを出て行く。
 テレビではニュースがながれていて、とある教会が爆破されたという臨時ニュースを、ニュースキャスターが淡々と読み上げている。教会は、『リビア教』という宗教の教会だった。
 そんなニュースを聞きながら洗い物をしつつ、メイコは脳内でリビア教に関する情報を引き出していた。たしか、リビア教は少数の信者がいる、過激派宗教。自分たちの宗教の教えと相性がよいものは脅してでも自分たちの宗教の信者にし、教えに反する建物、宗教は勿論、人間や動物ですら殺してしまうという。最近も、リビア教の信者が器物損壊と殺人未遂で、無期懲役になったことがあったはずだ。
 そんなリビア教の教会が爆破されるとは、随分と物好きなやからがやったのだろうな、などと思いながら、メイコは洗い物をさっさと終わらせるべく、手に持ったスポンジを動かすスピードを1.5倍にした。

 結局、ゲームをクリアするために真夜中まで起きていたレンは、まだ開ききらない目をこすりながら、階段を落ちないように慎重に下りると、リビングにいるメイコとルカに何気なく挨拶をした。
「…メイコさん、ルカ、おはよう…」
「え、あ、レン。起きたの?ごめんなさい、今、朝ごはん作るからね」
「大丈夫、作れます…って、それはいいんですけど。それ、誰ですか?」
「それ扱いしなくたっていいでしょう」
「うるさい。…ハムないじゃん」
 ソファに座っているメイトを『それ』扱いすると、レンは冷蔵庫を開いてハムがないことに気がつくと少し不機嫌になって卵と納豆を取り出し、フライパンを慣れた手つきで動かしながら、オムレツを二つ作り始めた。
 フライパンから目を離さず、レンは聞く。
「それで、その子供は、誰なんですか?」
「私の幼馴染。…それで、メイト。何があったのよ?」
 話を振られたメイトは少し恥ずかしそうに、そして申し訳なさそうに話し出す。
「…それが、この間、新しい魔法を覚えようと…。自分の見た目をかえる魔法を見よう見真似でやってみたんだが、何かを間違えたらしくて、この状態だ。魔法の効果が続く限界の時間はゆうに越えているはずなんだが、治らない。今はその魔法を使えるようになったから、何かあるときは元の姿になっているんだけどな」
 そういってメイトが小さく呪文を唱えると、レンが狐の姿に変わるのと同じようにふわりと光を帯び、しばらくして光が消えると、確かにそこには青年が座っていた。
 華奢にも見えるが、よく見るとちゃんと筋肉もついていて、やせすぎてもいない肉付きのいい体格で、少し目つきが悪いように思えるが、よく見るとまつげが長いのがよくわかる。
「…あら、まあ」
「主、毎回、『あら、まあ』で片付けないでください」
「ごめんね。…まあ、それはわかったわ。でも、どうしてこの町へ?たしか、今は隣町の教会にすんでるんじゃ?」
「ああ、勿論。メイコに会いに来たんだ。丁度、明日から連休だし、招待でもしようかと思って」
「…そう。じゃあ、明日からでも行きましょうか。レン、リンに伝えておいてね。ルカは、全員の荷物の準備を手伝って」
 テキパキと指示を出し、メイコはキッチンに立つ。
 それから全員分の朝食と、リンとレンの弁当を作るのだ。しかも、今日は体育があってリンに分は特に量を多く作らないと帰ってからのリンの機嫌が悪くなるので、冷凍食品でもつめておく。
 その間にルカが洗濯物をたたみ、レンがまだ部屋で寝ているリンを起こしに行き、身支度を手伝ってから朝食である。そんなことも当たり前になっているのだが、始めてみるメイトは忙しく動き回っている三人をみて、呆れるやら感心するやら、ただぼうっとしているだけだった。ぼけっとしてソファで固まっている客人をリンが見逃すわけもなく、リンは興味津々でメイトに近づく。しかし、すぐにレンに洗面所に連れて行かれ、髪を整えられる。
「あの人、誰?」
「…さぁ?」

こんばんは、リオンです。
書くこともなくなってきたので、こんなときは例によって皆さんに雑談してもらいましょう。
メ「俺、なんでしょっぱなからドジしちゃったキャラなの?」
レ「まあ、一度ついたダメイトキャラはそう簡単に変えられないってこと」
リ「気を落とさなくても大丈夫だよ。小さいメイトさん可愛かったよ♪」
レ「…お前、小さいものスキだよな。俺の狐状態のときもそんなんだったろ」
リ「まあね」
レ「褒めてないから得意げになるな」
…まあ、こんな感じですが。
それでは、また明日!

投稿日時 : 2009/11/02 21:40    投稿者 :リオン

ヘルプブクマでつながった作品とは?

鏡の悪魔Ⅲ 23

                 -過去-
 その声の震えは次第に大きくなり、最後には泣き出してしまうのではないかと思わせるほどになって行った。けれど、ルカは話すのをやめようとはしなかった。
「次の日、私の靴箱に彼からの手紙が入っていました。答えは、ふられました。でも、その文面からは、彼の誠意が垣間見られたような気がしました。便箋は何度も消した跡がありました。いつもは汚い字も、綺麗でした。言葉も選んで居てくれたようでした。綺麗に返そうと思ったのだと、私は解釈したのです。それから、私は少し落胆して教室へと向かいました。今すぐにでも大声を出してないてしまいたい気持ちでしたよ。けれど、スラスの空気は異様でした。私を見た瞬間に女子たちの目つきが変わったのです。放課後、私は大勢に女子に呼び出しを受けました。内容は、私が彼に告白した件についてでした。何故知っているのかと聞いてみると、女子のリーダー格だった一人が言いました。あの手紙を書いたのは私よ、と。彼は、私からの告白を受けた後、彼女にその話しをしたのだそうです。どう断ればいいのか、と。自分が何度も書き直した手紙を渡して、どうしたらいいのか相談していたそうです。そうして彼女はキレイな字で私への手紙を書きました。彼を装って。彼と彼女は付き合っていたようでした。それを知らないで、私は大変な間違いをしてしまったと思いました。女子たちからは無視されるようになりました。男子と話そうとすると、放課後呼び出されました。先生に話しても、保護者とのトラブルを避けようとしてカ、聞く耳を持とうとはしてくれませんでした。話を聞いてくれる人なんて、どこにもいませんでした。私はいつしか、人との係わり合いを避けるようになりました。それは進学しても同じでした。ずっと、ずっと一人ぼっちのような、深い孤独が、酷く怖かった」
 そこで、レンはドアからはなれ、もう一度ベッドの上に座ってリングノートを手に持った。それ以上はルカの震えた声を聞いてはいられなかった。声を振るわせるルカは、今にも泣き出してしまいそうなのだろうと考えると、レンにはそれを背中合わせに聞くことはできなかったのだ。
ベッドの上で開くリングノートに書かれた言葉と、ルカの少し低いキレイな声が、レンの脳内で交差した。

リオンさん

リオンさん

2009/08/28 23:55

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