桜宮 小春さん

KAITOに続いてMEIKOもお迎えしたようです。やはりもっぱら喋ってます。

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【オリジナルマスター】 ―Grasp― 第十六話 【悠編】

オリジナルのマスターに力を入れすぎた結果、なんとコラボ(2人)でお互いのマスターのお話を書けることになりました!
コラボ相手は、カッコいい素敵なお姉さんの生みの親、つんばるさんです!
上記の通り、私とつんばるさんのオリジナルキャラ(マスター)が登場します……というか、マスター(♂)×マスター(♀)です。
そして、ところによりカイメイ風味ですので、苦手な方は注意してください。

おk! という方は……。

(つ´ω`)<ゆっくりしていってね!>(・ω・春)




*****



約束の日……聞き慣れていたはずのインターフォンの音に、過剰に反応してしまう。
あれほど待ち望んでいた音だというのに、体が強ばってしまって、来客を出迎えられそうにない。


「……私が行ってきますね」


どこか呆れたように、ミクが笑って立ち上がる。
頼む、と言おうとしたのだが、口の中がからからに乾いて、声が出なかった。


「マスター、肩に力入ってますよ」


もうちょっとリラックスして、と、めーちゃんが苦笑する。
わかってるさ。自分がやたら緊張してる事くらいわかってる。
けれど、意識してみたところで、それがそう簡単に解けてくれるはずもなかった。




―Grasp―
悠編 第十六話




待っていたのは、ほんの短い時間だったのだと思う。
けれど俺には、しばらくしてドアが向こうから開くまで、とんでもない時が流れたように感じた。


「……よう」

「……よろしくお願いします」


自分が挨拶する声も硬い事に気付いて、内心苦笑すると同時に、そっけなくても、普通に挨拶できた事に何故か安堵した。
アキラも俺に言葉を返すと、さっさとノートパソコンを開いて起動させる。
俺は俺で機材の準備に入ったが、何があったわけでもないのに、なんだか空気が重量を持っているというか、硬質というか……落ち着かない。


「なんか、緊張するな……」

「そうかい?」


沈黙に耐えきれずにそう呟くと、さらりと言われた。
俺がアキラのアパートに押しかけたのは、まだ記憶に新しい。なんだかんだで、あれから会うのは今日が初めてだ。
あの時は、勢いで「付き合ってくれ」なんて言ってしまったが、改めて会ってみると、まともに目を合わせられない。
今までやってきた作業と何ら変わらないとわかってはいるが……なんだか照れ臭い。そう思っているのは、俺だけなのだろうか。


「メイコさんとおとうとくんと合わせてみて、微調整というかたちでいいんだよね?」

「ああ、それでいい……なんだ、なにかあるのか?」


悶々と考えていると、確認の言葉が耳に届く。
つい素で返して、ふと浮かんだ疑問を投げかけた。
互いに、自分でできる範囲の調声は済んでいる。残っている作業は、アキラが口にした、合わせと微調整くらいだ。
わざわざそれを確認する必要があるのだろうか。


「いつもの声とは、少しパラメータの振り方を変えたんだ。とくにかいとくん……いつもの声とはかなり違う調声にしてある。歌い方も、すこしクセをつけた」


合わなかったら変えるけど、できればこのままがいい。そう言うアキラに、俺は引っかかりを感じながらも、ひとまず納得はした。
普段と違う事をしたのだから、了承しておいてほしい、そういう事だろうか。


「まあ、とりあえず歌わせてみてからだな。そのへんの調整は、こっちもまだ甘いし」


何にせよ、合わせてみなければ何もわからない。めーちゃんとカイトの調声だって、今のパラメータのまま完成、とはいかないだろうし。
そうこうしているうちにエディターも立ち上がって、2人が歌う準備ができた。


「じゃあ、早速だけど、歌わせてみるか?」

「あ、先にかいとくんとめーこさんに歌ってもらっていい?」

「ああ、べつにいいぞ」


パラメータを変えたとは言うが、それほどまで不安なのだろうか。そう思いながらも、俺は頷いた。
アキラの調声が気になるのは、こちらも同じだから。
再生されるMIDIデータに合わせて、まず東雲めーちゃんが口を開く。
掠れた、しかし弱々しさは感じられない声。確かに、以前に聴いた彼女の歌声とは少し違うが、違和感はないと思う。
さて、特に声をいじったと言うが、東雲カイトの方はどうなのだろう。
そういう軽い気持ち(と言うと語弊があるかもしれないが、その時は軽いと思った)でいた俺は、その歌声を聴いて、妙な感覚を覚えた。
声質も歌のクセも、どこかで聞いたような……まさか。


「これっ……」

「しっ」


思わず声を上げた俺に、アキラは自分の唇に指をあて、「静かに」と声を出さずに告げる。
その表情はなんだか楽しそうで、俺はたまらずに視線を彼女からパソコンの画面に戻す。
最初は気のせいだと思った。考えすぎだと。
しかし、聴けば聴くほど、東雲カイトの歌声は……俺のものに似ていて。
何故。どうして。そんな中身のない疑問がひたすら脳内を駆け巡る。
曲が終わって、めーちゃんとカイトが歌い終えた2人何やら話しかけているが、何も頭に入ってこない。


「なんとか言ったらどうだい」

「……なんのつもりだよ、アキラ……」


アキラに小突かれてやっと、声を発することに成功した。
しかしその声は羞恥からか、みっともなく震えていて、アキラはどこか楽しそうに言葉を紡ぐ。


「なんのつもりとはご挨拶な。私は『参考音源どおりに』調声してみただけなんだけど?」

「さ、参考音源?」


何のことだ。参考音源なんてもの、渡した覚えも、作成した覚えもない。
その思って復唱すると、アキラはきょとんとして俺を見返してくる。


「え? あれを参考にしろってことじゃなかったのかい? この前初音さんが持ってきたUSBに入ってたろ、悠サンが歌ったやつ」

「あ……!」


一瞬、アキラが何を言っているのかわからなかったが、すぐに思い当たる。
確かに、少し前に自分で歌った音声を録音したし、調声の参考にしようと思っていた。
だが、その直後のごたごたですっかり忘れていた。歌った音源を他のデータと一緒にUSBに保存していた事も、ミクがそのUSBをアキラに叩き付けてきた事も。


「いや、違、あれ、そういう意味じゃなくて……!」

「……マスター、歌ったんですか、これを?」


自分でも何を言いたいのかわからないまま、支離滅裂な言葉を口走ったが、めーちゃんの声に遮られる。
純粋な興味が含まれた声にも、俺の焦りが増していく。


「あ、いや、歌ったは歌ったが……!」

「へえ、俺も聴きたいです、マスターの歌ったやつ」

「音源ありますよ、出します?」

「わー! わざわざ出さなくていい、東雲カイト!」


本気で音源を探しに行きそうな東雲カイトを、慌てて止める。
元々、自分しか聴かない前提で歌ったんだ、アキラに聴かれただけでもかなり恥ずかしいのに、これ以上晒されてたまるか!
MEIKO2人はそうでもないが、KAITO2人の言動は、俺の反応を楽しんでいるようにも見えて……ムキになっている俺が馬鹿みたいに思えてくる。


「……アキラ」


いい加減アホらしくなってきて、何も言わずに傍らで静観していたアキラに声をかける。


「なに」

「お前の調声技術の高さはよくわかった。だが、東雲カイトの声は元に戻せ」

「なんで? いいじゃない」

「歌い癖まではさすがによしとしよう、東雲めーちゃんのかすれ声も認める。しかし、この声はだめだ」


東雲めーちゃんの声は歌とも合っているように思えたし、歌い癖も……まぁ、特別変わった癖をつけているわけでもないし、まだいい。
しかし。


「だから、なんでだめなのさ」

「声まで俺に似せようとすんな!」


流石にこの声は無理だ。俺の精神がもたない。
その思いからの言葉にも、アキラはさらりと切り返す。


「だいじょうぶ、似てないよ」


似てなければいいと言うのか、そうかそうか。
……そんなわけあるか。似てないと言うが、それでも俺の声に似せている、という事がわかる程度には近いものがあるのだ。
むしろこれ以上似せられでもしたら、俺は羞恥で死ねる自信がある。


「結果の問題じゃねえ! こんなことされたら恥ずかしいに決まってるだろ!」

「あー、はいはい。悠サンが恥ずかしいから、調声変えますね、かっこわらい」

「笑い事じゃねえ! わざわざかっこわらいって言わなくてもいい!」


言い返しながらも、自分の口元が綻んでいるのがわかって、それが少し悔しくて、少し嬉しかった。


俺が昔に体験した事を、いつか彼女に話す時が来るだろう。
しかし、それはまだ先の話だ。昔の事を盾にして、無駄に彼女に甘えない自信はない。俺は、悲劇のヒーローになりたいわけじゃないんだ。
俺も彼女も、ちゃんと互いを受け入れる覚悟ができてから、話そうと思う。それまでに幾月、幾年かかるかはわからないが。

……他人は自分の鏡なのだという話を、誰かから聞いた事がある。
もちろん、それを言っていた誰かが、個人的に持っている意見だったのだろうが、俺にはなんとなく、それがわかる気がした。
彼女が微笑んで、それを映して微笑んでいる俺がいる、少し変わった合わせ鏡のような、そんな未来がある事を、そっと祈った。

わっふー! どうも、桜宮です。

悠さん、いろいろ恥ずかしがる、の巻。
恥かしがりつつアキラさんとのこれからのことは真剣に考えてますが……こいつ誰状態(汗
他人は自分の感情を映す鏡のようなものだ、という話を聞いたことがあるような……ないような気がするので←
でも実際そうだと思うんですよね。


今回でこの『Grasp』は最終話となります。
こちらでやっていいものかまよいましたけれど……タイトル解説をば。

今回のタイトルは私の方のABC順の流れに合わせていただいてしまいました^^;
で、意味ですが、『grasp』の本来の意味は『掴む』といったものです。
転じて、『理解する』という意味も含まれており、この2つが悠編でのテーマでした。
アキラさんの存在を掴んで理解して……っていう。

ちなみに。
2人がコラボした曲のコンセプトとなった曲と、その原曲はこちらです。

本当の自分(そっとうPによるカイメイカバー)
http://www.smilevideo.jp/view/5005331/3326931

本当の自分(アカサニコフさんによる原曲)
http://www.smilevideo.jp/view/4327767/3326931

こちらを聴いて下されば、作中で何があったのか、よりわかりやすくなるかと思います。
つんばるさんから教えて頂いて知ったのですが、自分たちの2人のイメージに合っていて驚くと同時に、素直に感動したのを覚えています。

さて……最後に。
急な申し出に快く乗っかって下さったつんばるさんには感謝してもしきれません。
つんばるさんの他にも、悠さんやアキラさん、それにゲスト出演して下さったマスターと、+KKさん、それにここまで読んでくださった皆様。
本当にありがとうございました。

アキラ編では、後輩さんが先輩にちょっとちょっかい出してるみたいです、そちらもぜひ!

東雲晶さんの生みの親で、アキラ編を担当しているつんばるさんのページはこちらです。
http://piapro.jp/thmbal

作中にてカクテルバーとマスターの設定をお借りしました、+KKさんのページはこちらです。
http://piapro.jp/slow_story

投稿日時 : 2010/03/26 11:38    投稿者 :桜宮 小春

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